リバーリバイバル研究所

川と生き物、そして人間生活との折り合いを研究しています。サツキマス研究会・リュウキュウアユ研究会

第45回 河口堰が変えたアユ  観察する力(下)

2016-12-18 10:27:52 | ”川に生きる”中日/東京新聞掲載

長良川河口堰は長良川のアユの生活史を変えていた。遡上が遅れることによってアユが小型化したのだ。その原因は降下にあるのだが、それはまた次回。ボクの偏愛する長良川河口堰の映像をご覧下さい。

 

 アユを変えた長良川河口堰  観察する力 ( 下 )

アユが産卵するのは、あたりが暗くなってからだ。ところが産卵するアユが多い場合、明るいうちからでも産卵するアユがいる。太陽が沈み、暗くなるまでのわずかな時間、マジックアワーといわれる限られた時間帯にアユの産卵を水中カメラで観察する。それが私たちの始めた「アユの産卵をみる会」だった

観察会を始めて5年目の1995年7月。長良川河口堰のゲートが下ろされて本格運用が開始された。

河口堰が出来てアユはどうなったか。日が落ちてから暗くなるまでという、限られた条件で観察会を行っていたことから、川の変化がよくわかった。始めたころは10月の最初の土曜日に行っていた観察会だったが、ゲートが下ろされて、二年、三年と経つとその時期に産卵場所にアユが集まらなくなった。長良川にアユがいなくなったわけではない、アユが産卵する時期が三週間ほど遅くなったのだ。そして、産卵場を訪れるアユの大きさも小さくなっていた。

産卵期が遅くなる。産卵するアユが小型になる。その理由は建設省(当時)の「長良川河口堰モニタリング委員会」の公開資料にあった。委員会の調査では、河口堰の魚道で採補したアユを分析して、そのアユがいつ卵から孵ったかを調べた。調査は三年間行われたが、河口堰が閉められた二年後1997年には11月初旬にふ化したアユが多かったが、98年には11月中旬、そして99年には11月下旬にふ化したアユが多くなり、11月以前にふ化したアユはごくわずかになった。河口堰が閉まった五年後、アユの産卵とふ化は、三週間ほど遅くなっていた。

長良川のアユが小さくなったことも、アユのふ化する時期が遅くなったことが関係している。遅くふ化したアユは海に下る時期が遅く、成長も遅れる。そして、川への遡上も産卵も遅くなり、大きさも小さくなった。アユを変えたのは長良川河口堰だった。

(魚類生態写真家)

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