キョン「もうすぐ冬休みかー」
みくる「ですね」
長門「皆、24日は空けておいて」
キョン「俺と朝比奈さんはその日予定が入ってるぞ」
長門「二人の予定?」
ハルヒ「!?」
長門「あ、涼宮ハルヒが……」
ハルヒ(へにゃり……)
キョン「どうしたハルヒ?」
ハルヒ「……ずるい」
キョン「?」
長門「彼はまったく理解していない……」
◇ ◇ ◇
ハルヒ「バイトの話?」
キョン「ああ、俺と朝比奈さん、それに古泉もシフト入ってる」
みくる「です」
長門「なぜその日にバイトを……」
キョン「別にその日用事ないし」
みくる「私もです」
長門「せっかくのクリスマスなのだから、他にするべきことがあると思う」
キョン「……たとえば?」
長門「恋人とおはようからおやすみまで――暮らしを見つめるとか」
キョン「クリスマスに何やってるんだそのカップルは!?」
◇ ◇ ◇
キョン「それでその日に何かあるのか?」
長門「皆でクリスマスパーティーをしたいと思って」
「でもいいDEATH。予定があるなら仕方ないDEATH」
みくる「長門さんがすごく落ち込んでますっ!」
ハルヒ「言葉遣いも変ね」
長門「そして彼と朝比奈みくるは一緒にクリスマスを過ごすのね……」
みくる「バ、バイトですよっ」
ハルヒ(ガーン)
長門「メリー」
ハルヒ「メリー」
みくる「涼宮さんまでー!」
キョン「ちなみにバイトは夕方までだぞ」
◇ ◇ ◇
キョン宅
長門「おじゃまします」
ハルヒ「ま」
古泉「します」
みくる「でもいいんですか、キョンくんの家で騒いでしまって」
キョン「ええ、うちの親出張で週明けまでいないんで」
長門「涼宮ハルヒ……」
ハルヒ「ん?」
長門「お泊まりセットは持ってき(ドゴン)」
古泉「長門さーん!!」
◇ ◇ ◇
キョン「ところで長門のその格好は……」
長門「せっかくだからサンタクロースの衣装を用意した」
みくる「かわいいですね」
古泉「クリスマスっぽくていいですね」
長門「みんなの分もある。着てみたかったら着て」
キョン「俺は遠慮しておく、料理するし」
みくる「私もちょっと恥ずかしいので」
長門「残念」
古泉(トナカイの着ぐるみを着て)「さて、準備しますか」
キョン「ノリノリだ!!」
◇ ◇ ◇
古泉「エプロンは二着ですし、今日は僕と彼で料理を作りましょう」
みくる「え……でもそんな」
キョン「いいですよ、女の子は服が汚れたら大変でしょう?」
みくる「男の子だけに料理してもらうのは、何だか不思議な感じがしますね」
長門「料理が苦手とはいえ、女の沽券に関わる事態」
ハルヒ「私はよく料理するわよ」
みくる「えと、私も家でたまにします」
長門「……」
ハルヒ「女の沽券……」
長門「ボロボロ……」
◇ ◇ ◇
長門「じ~」
みくる「どうしました長門さん? キッチンに何か?」
長門「上手く言語化できない……。エプロンを着て料理をする男性の姿が――」
みくる「姿がどうしたんですか?」
長門「色っぽい」
みくる「何言ってるんですかっ!?」
ハルヒ(ちょっとそう思ってしまった)
◇ ◇ ◇
キョン「いったい何の話をしてるんだ?」
みくる「あ、いえっ、あのそのっ」
ハルヒ「……」
長門「でも……もう一押し足りないような」
キョン「何がだ」
古泉「それはつまり、サナギから蝶になるようにエプロン以外の衣服を脱げということでしょうか」
キョン「変態だっ!?」
古泉「ええ、蝶が成体になることを変態と……」
キョン「そっちの変態じゃねえよ!! なんで真顔なんだ!」
◇ ◇ ◇
キョン「できた料理運んでくれ」
長門「了解」
みくる「はい」
長門「今度料理を教えてもらうべきかもしれない……」
キョン「教えるほど上手くないって」
ハルヒ「……あたしも、いろいろ教えてほしい」
古泉「今のは問題発言ですね」
長門「何を教わる気なのか……」
キョン「料理だろ、何言ってんだ」
ハルヒ(怒)
◇ ◇ ◇
キョン「長門、シャンパン開けちゃって」
長門「了解」
古泉「こっちに銃口を向けないでください」
長門「お約束はやらないと」
古泉「お約束で眉間を撃ち抜かれたくないです!」
長門「残念」
(プシュ)
栓の行方:天井→古泉→長門
2HIT
◇ ◇ ◇
全員「メリークリスマース」
(乾杯)
みくる「おいしいれふ」
キョン「……れふ?」
ハルヒ「?」
みくる「キョンくんも飲んでみるれふ」
キョン「ひょっとして朝比奈さん酔ってます?」
長門「間違ってジュースの中に一本だけ――大当たりのチューハイが。朝比奈みくるはこれを飲んでしまったらしい」
古泉「当たりが出たらもう一本」
キョン「変にお得感を出すな」
◇ ◇ ◇
みくる「キョンくんっていい匂いがしますよね」
キョン「酔ってますね朝比奈さん……」
ハルヒ「むー」
「私も酔うもん」(微炭酸で酔う体質)
長門「それ炭酸……」
ハルヒ「……」(ぎゅ)
古泉「おお」
長門「涼宮ハルヒが酔った勢いで大胆に」
(がぶ)
キョン「痛ぁっ!?」
長門「大胆に噛んだ」
◇ ◇ ◇
キョン「古泉、お前が持ってきたこれ『激辛テリブルジンジャー』とか書いてるんだが……」
みくる「テリブル!?」
古泉「炭酸が口の中でバルスしますよ、あなたもどうですか?」
キョン「いや、遠慮しとく」
古泉「背中で語る男の味なんですが、ね――へっくしょん!」
(シュワー)
キョン「あ」
古泉「目があああああああ、目がああああああ!!」
キョン「背中の味が眼球に……」
みくる「背中の味ってなんですか!?」
長門「二人とも、心配が先じゃあ……」
◇ ◇ ◇
キョン「あ、忘れてた。これみんなに」
長門「もしかしてプレゼント?」
古泉「僕の分もですか!? 嬉しいですね」
みくる「手編みのマフラーですっ!」
長門「手編みの手袋」
古泉「おや、クッションカバーですか」
キョン「ハルヒにはこれな」
ハルヒ(ドキドキ)
キョン「にゃーん」
【毛糸玉】
ハルヒ「……」
長門「にゃーん……!?」
◇ ◇ ◇
ハルヒ(ガブー!!)
長門「マジ噛み」
みくる「はわわ」
キョン「すまん。……こ、こっちが本当のプレゼントだ」
【手編みの帽子】
ハルヒ「あったか
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」
キョン「あと、余った毛糸で編みぐるみ作ったから、欲しい人どうぞ」
古泉「編みぐるみ?」
みくる「ものすごくかわいいですっ!!」
長門「確かに……。涼宮ハルヒもそう思――」
ハルヒ(ほおずり
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)
(ハッ!)
「……何か言い残すことは?」
長門「え?」
キョン「何事!?」