入湯求湯巡礼行記

これまでに訪れた温泉を紹介します。
時代に逆行し、写真は基本的に載せません。
変換できない残念な名称のブログです…

東鳴子温泉 馬場温泉共同浴場 (宮城県大崎市) ★★★★★

2020-09-22 | 南東北の温泉

東鳴子温泉の開湯は鎌倉時代とも奈良時代以前ともいわれており、非常に歴史ある温泉だ。江戸時代 (恐らく後期) になると伊達家の御殿湯も置かれ、江戸時代最後の仙台藩藩主慶邦が訪れた記録が残る。馬場温泉はほかの東鳴子温泉の宿とは離れており、隣の川渡温泉との移行部に立地している。

馬場温泉共同浴場は旅館の敷地内にある共同浴場で、一見するとただの小屋である。浴室は 1 つだけなので、「入浴中」の札を下げて入る。無骨なコンクリの湯舟に注がれる湯は真っ黒に見えるが、実際には黄茶色透明。杉の葉臭のする心地よい湯だ。熱い湯だが、泡付きが強く、あっという間に体中が泡に包まれた。灰色の浮遊物もみられた。


(2015 年 11 月)
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<再訪>
4年ぶりの再訪。モール臭の中に、わずかに薄荷のような清涼感のある香りが感じられた。熱めの湯だが、以前ほどではないような気がした。


(2019 年 4 月)


◆源泉情報◆
源泉名:馬場の湯 1 号泉
泉質:ナトリウム-炭酸水素塩泉
泉温:47.2℃
成分:pH6.8、溶存物質 1809 mg/kg、主要な成分は以下の通り(いずれも mg、カッコ内はミリバル %)。

ナトリウムイオン 420.0 (93.36) 炭酸水素イオン 1121.5 (92.78)
メタケイ酸 190.0 遊離二酸化炭素 283.5

分析日:2011 年 4 月 27 日


広河原温泉 湯の華 (山形県飯豊町) ★★★

2020-09-21 | 南東北の温泉

※2019 年 7 月より休業しているとの情報があります。


米沢の市街から50分、田舎道を抜け、更に、山之神神社の辺りから沢沿いのオフロードを 20 分。山深い秘境にある温泉だ。かつては間欠泉の周りに造られた野湯だったそうだが、今では立派な宿泊施設となっている。下手は捨てられた湯の成分が堆積し、地面が金茶色に染まっている。

愛想のない亭主に料金を払い、浴室へ。源泉はぬるめとのことで、内湯はやや熱めに加温された湯が注がれていた (間欠泉とは別に常時湧出する別源泉がある?)。炭酸味、金気味のある湯で、赤茶色の細かい湯の花が舞い、懸濁しているが、湯底までみえる透明度はあった。

一方、露天は内湯と異なり黄金色に濁っている。湯舟の中の岩から間欠泉が噴出すようで、その間隔はまちまちとのこと。湯に浸かりしばし待つこと 40 分。なんの前触れもなく間欠泉が噴き出した。高温で圧がかかって噴き出してくるわけではなく、炭酸ガスによる圧のようだ。出てきたばかりの源泉は、透明で、シュワシュワしており、1 分ほど噴き出し続けた。お湯が出なくなってもしばらくはガスだけが出てきており、鼻を近づけると強烈な炭酸を感知した。恐らく、深く吸い込んだら失神するであろう。この後も、25 分後、更に、その 5 分後に噴出がみられた。露天の湯は、間欠泉の湯だけでなく、加温源泉も投入されているが、ぬるめでいつまでも入っていられる温度。黄土色の藻屑のような浮遊物がたくさんみられた。

空の青、木々の緑、黄金の湯と、まるでゴッホの絵のような色彩豊かな温泉であった。余談になるが、女将さんはとても気さくで感じよい人だった。


(2015 年 9 月)


◆源泉情報◆
源泉名:広河原源泉
泉質:ナトリウム・カルシウム-炭酸水素・塩化物泉
泉温:33.1℃
成分:pH6.8、溶存物質 3064 mg/kg、主要な成分は以下の通り(いずれも mg、カッコ内はミリバル %)。

ナトリウムイオン 454.0 (48.98) 炭酸水素イオン 1562 (63.68)
カルシウムイオン 295.4 (36.56) 塩化物イオン 508.9 (35.70)
マグネシウムイオン 48.1 (9.82) 臭素イオン 2.0 (0.12)
総鉄イオン 6.1 (0.55) メタケイ酸 120.4
マンガンイオン 4.1 (0.37) 遊離二酸化炭素 636.6

分析日:2009 年 12 月 25 日


大塩裏磐梯温泉 旅館米澤屋 (福島県北塩原村) ★★★★

2020-09-20 | 南東北の温泉

大塩温泉は、喜多方の街と檜原湖の間に立地する温泉で、濃い食塩泉を煮詰めて作る山塩が名物になっている。物流の発達していない時代、山間の村落にとって塩は貴重なものだったのだろう。現在は山塩羊羹などとして、土産物にも活かされており、米澤屋でも山塩ラーメンが供されていた。

浴室は板張りで、角に合わせた三角湯舟の内湯のみ。湯は透明で、海水のように塩辛く、ややぬるめ。成分表をみると、銅イオンを 1 mg/kg 以上含んでいることがわかった。これが銅!といった浴感はわからなかったが、大変珍しい泉質である。注がれた源泉がサーサーと惜しみなくフローしており、大変気持ちのよい一湯であった。

余談であるが、かつて知られた含銅泉のほとんどはすでに廃業しているか、成分が変化して銅イオンが検出されなくなっている。知る限り、現在でも 1 mg/kg 以上含んでいるのは、大塩裏磐梯温泉のほか、徳島県のふいご温泉 (5.5 mg/kg。2009 年)、島根県の大谷温泉 (1.2 mg/kg。1980 年) であるが、いずれも未湯である。温泉法の改定により、泉質名として「含銅」は認められなくなってしまったが、悔しいので下記“源泉情報”には「含銅」と記しておく。


(2019 年 9 月)


◆源泉情報◆
源泉名:大塩裏磐梯温泉旅館組合
泉質:含銅-ナトリウム・カルシウム-塩化物泉
泉温:45.8℃
成分:pH7.2、溶存物質 18835 mg/kg、主要な成分は以下の通り(いずれも mg、カッコ内はミリバル %)。

ナトリウムイオン 4651.4 (70.27) 塩化物イオン 11088.9 (92.17)
カルシウムイオン 1212.8 (21.01) 硫酸イオン 662.6 (4.07)
マグネシウムイオン 207.1 (5.92) 炭酸水素イオン 454.7 (2.20)
カリウムイオン 197.2 (1.75) 炭酸イオン 145.5 (1.43)
リチウムイオン 19.9 (1.00) 臭素イオン 25.7 (0.09)
銅イオン 1.2 (0.01) メタホウ酸 100.8
メタケイ酸 57.7 遊離二酸化炭素 145.5

分析日:2013 年 10 月 4 日


豊富温泉 川島旅館 (北海道豊富町) ★★★

2020-09-19 | 北海道の温泉

豊富温泉は大正期に石油試掘の際に湧き出た温泉で、川島旅館はもっとも早く当地にできた温泉旅館である。その後、他の旅館や町営の日帰り温泉施設ができ、日本最北の温泉街として週末には賑わいを見せる。また、油分を含んだ泉質がアトピーに効くとのことで、近年は全国から湯治に訪れる人がいる。

現代受けしそうな外観、真新しい印象を受ける明るい館内は、2016 年に改装したものだそう。浴室には内湯と露天があり、内湯は非加温と加温浴槽に分かれている。露天も加温であったので、滞在時間のほとんどを非加温浴槽に浸かって過ごした。十二分のアブラ臭と塩味の感じられる温泉であったが、直前に「ふれあいセンター」の湯治用浴槽に浸かってきたためか、ややいインパクトに欠ける気もした。しかし、途中から湯口から懸濁した原油が吐き出されてき、浴感が一気に強化された。原油臭、泡付き、ツルツルオイリーな湯であった。

居合わせた男性は、アトピーがひどく、身動きが取れないこともあったというが、学生時代に豊富温泉に湯治に訪れたら劇的な改善がみられため、就職を機に移住してきたのだという。私は、温泉ヲタクでありながら温泉の効能にはやや懐疑的なのだが、これはモノホンの薬効であろう。


(2019 年 6 月)


◆源泉情報◆
源泉名:R-1A 号井、R-4 号井、R-10 号井混合
泉質:含ヨウ素-ナトリウム-塩化物泉
湧出量:151 l/min
泉温:35.0℃
成分:pH7.8、溶存物質 13190 mg/kg、主要な成分は以下の通り(いずれも mg、カッコ内はミリバル %)。

ナトリウムイオン 4389 (96.31) 塩化物イオン 5734 (80.83)
カルシウムイオン 54.0 (1.36) 炭酸水素イオン 2302 (18.86)
アンモニウムイオン 36.6 (1.02) 臭素イオン 13.9 (0.08)
メタホウ酸 550.0 ヨウ素イオン 13.0 (0.05)
メタケイ酸 35.2 遊離二酸化炭素 28.4

分析日:2015 年 10 月 16 日  ※ガスセパレーター通過後の温泉水タンクにて採水


山口温泉 (山梨県甲斐市) ★★★★★

2020-09-13 | 中部の温泉

1986 年、ブドウ畑を掘削して湧出した温泉。山口温泉のある旧竜王町域は、70 年に人口が 1 万人を突破すると、86 年まで毎年 1000 人を超える増加を見せ、約 3 倍の人口に到達している。急激に農地が住宅地へと変貌して行く中で、誕生した温泉である。

住宅地の中にある普通の家のようで、外観からは温泉らしさは感じられない。内湯、露天とも石造りの浴槽で、かけ流し量が多い。特に内湯は竜頭の湯口からドバドバと注がれ、すべてかけ流されている。黄褐色透明の泡々の湯で、8 人サイズの浴槽の 1/3 程度は泡で白濁して見えた。露天は石の湯口が 2 つあり、こちらも十分なかけ流しである。露天ではモール臭も感知された。

好みの黄色く澄んだモール泉で、ドバドバのかけ流し。モール系の良泉が多い山梨県内でも屈指の名湯と認識しているが、北海道の「民宿つるい」が廃業し、大分の「北之園温泉」が休業状態の今、全国でも最高のモール泉かもしれない。


(2017 年 4 月)


◆源泉情報◆
源泉名:-
泉質:ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉
湧出量:686 l/min
泉温:41.6℃
成分:pH7.56、溶存物質 1341 mg/kg、主要な成分は以下の通り(いずれも mg、カッコ内はミリバル %)。

ナトリウムイオン 327.9 (81.35) 炭酸水素イオン 532.3 (50.69)
マグネシウムイオン 16.9 (7.93) 塩化物イオン 295.7 (48.4)
メタケイ酸 109.8 遊離二酸化炭素 48.8

分析日:1986 年 8 月 18 日


清正の湯 竹庭清正乃湯 (愛媛県今治市) ★★★

2020-09-13 | 近畿・中国・四国の温泉

温泉名は、加藤清正を祀った祠のそばから湧出したため。プールなどを併設する「清正乃湯」もあるが、「竹庭清正乃湯」は“大人の名湯”がコンセプトで、15 歳以下は入浴できない。

内湯は赤御影石の浴槽で、一部が寝湯スペースになっている。亀の湯口からは、ツルスベ感、塩味、金気味のある湯が注がれていた。露天にも浴槽が 2 つあり、内 1 つは浴槽内で加温があるものの、湯口からは非加温源泉が注がれ、かけ流されておりとても気持ちの良いものであった。


(2011 年 7 月)


◆源泉情報◆
源泉名:清正の湯
泉質:ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉
泉温:28.4℃
成分:pH8.8、溶存物質 1534 mg/kg、主要な成分は以下の通り(いずれも mg)。

ナトリウムイオン 523.1 塩化物イオン 511.8
メタホウ酸 49.6 炭酸水素イオン 379.5
メタケイ酸 19.3 フッ素イオン 20.6

分析日:2002 年 11 月 5 日 (平成 14 年度温泉分析成績、愛媛県薬品化学科、2002)


阿武川温泉 萩阿武川温泉ふれあい会館 (山口県萩市) ★★

2020-09-12 | 近畿・中国・四国の温泉

萩の市街から山間に入ったところにある日帰り温泉施設。近くには阿武川を堰き止めたダムがあるが、このダムを造る際に発見された温泉らしい。農産物直売所やキャンプ場も併設されている。

内湯と石組みの露天がある。源泉は 32℃ の単純温泉で、浴槽内で加温され、オーバーフローしていた。湯口では硫黄臭が感じられたが、浴槽では感じられなかった。


(2020 年 3 月)


◆源泉情報◆
源泉名:阿武川温泉
泉質:アルカリ性単純温泉
泉温:32.3℃
成分:pH9.4、溶存物質 600.4 mg/kg、主要な成分は以下の通り(いずれも mg)。

ナトリウムイオン 208.4 塩化物イオン 296.1
メタケイ酸 40.4 炭酸イオン 12.1

分析日:2014 年 9 月 29 日


きぬの湯温泉 きぬの湯 (茨城県常総市) ★★

2020-09-05 | 関東の温泉

旧水海道市の市街に立地する日帰り温泉施設で、湯使いにはかなりの自信があるよう。ただし、ネット検索するとメタデータとして“茨城県唯一の源泉かけ流し”と表示されるが、これは事実ではないので、かなり悪質である。

関東・東北豪雨で被災された方のお手伝いをした帰りに寄ったのだが、被災された方や私のようなボランティアで大変混み合っていた。
浴室に入るといくつもの浴槽があり、広々とした露天やサウナもある。源泉掛け流しの樽風呂は、ぬるめで長湯に向く温度。澄んだ茶色の湯で、塩味があった。塩素臭もあるが、極僅かにヨウ素臭が感知できた。他にも源泉掛け流しの茶碗風呂などに入湯したがどれも同じ感じ。循環の露天大浴槽は、澄んだ茶色の湯で、まろやかな塩味があり、きつくはないが塩素臭がした。混み合っているので、消毒はしかるべきことであろう。

非常事態もあって混み合っているからなのか、公式サイトで謳われていた「鮮度が違う」「生きたお湯」を堪能することは適わなかった。湯使いはともかく料金は茨城でトップクラスであろう。混み合っているのに隅々まで清潔に保たれ、温泉らしさを感じる湯で寛げるのだから、優良な施設であることは間違いないと一応のフォローを入れておく。


(2015 年 9 月)
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<再訪>
久々に再訪してみた。各浴槽の前に石碑を出し、いやというほど“源泉かけ流し”を強調しており、サラサラとオーバーフローしていた。源泉が薄くなったのか、成分が変化したのか、加水しだしたのかわからないが、塩味はどの浴槽でも感じられなくなっていた。淡く茶色に色付いた湯であるのは変わらなかったが、甘味、消毒臭のある湯になっていた。人出は結構あったが、前回のような非常事態のイモ洗い状態ではなかったので、ゆっくりとくつろぐことができた。


(2020 年 9 月)


◆源泉情報◆
源泉名:きぬの湯、きぬの湯 2 号源泉
泉質:ナトリウム-塩化物泉
湧出量:349 l/min
泉温:40.5℃
成分:pH7.9、溶存物質 3755.5 mg/kg、主要な成分は以下の通り(いずれも mg、カッコ内はミリバル %)。

ナトリウムイオン 1122 (81.37) 塩化物イオン 1876 (88.38)
カルシウムイオン 164.0 (13.64) 炭酸水素イオン 387.9 (10.62)
メタケイ酸 75.1 メタホウ酸 36.4

分析日:不明 (2020 年 9 月、ホームページにて確認)


明礬温泉 湯元屋旅館 (大分県別府市) ★★★

2020-09-03 | 九州・沖縄の温泉

別府八湯のひとつで、他の七湯よりも高台に位置する。江戸時代には、噴出する硫化水素ガスや水蒸気を粘土中の鉄やアルミニウムに反応させることで明礬を得る方法が確立し、幕府の専売品となっていたそうだ。明礬は、薬、火薬、染め物、虫よけなどに使われていたそうで、現在でも入浴剤用として明礬を採取する湯の花小屋が点在している。

湯元屋は 2 本の源泉を有する温泉民宿で、浴室も 3 つあり、どれかを貸しきりで利用するスタイル。私が通された浴室は、3 人程が入れる湯舟に、ツンとくる酸っぱい硫黄臭と酸味のある湯が満たされていた。あとで知ったが、他の浴室は別源泉だったそう。


(2017 年 12 月)


二日市温泉 扇屋旅館 (福岡県筑紫野市) ★★★

2020-09-01 | 九州・沖縄の温泉

二日市温泉の歴史は古く、開湯は奈良時代までさかのぼる。江戸時代には、この地を領した黒田氏により御前湯が設けられ、温泉奉行が置かれた。

扇屋旅館は、公衆浴場の博多湯や御前湯もある二日市温泉のメインストリートに位置する老舗で、夜まで立ち寄り入浴も受け付けてくれる。浴室には湯舟が 2 つあり、広い方があつ湯、小さな方がぬる湯となっている。湯は、ツルスベ感のある MTMM で、掛け流しされていた。あつ湯は 45℃ くらいで、源泉は 43℃ なので沸かしているようだ。


(2016 年 4 月)


◆源泉情報◆
源泉名:二日市温泉配湯基地
泉質:アルカリ性単純放射能泉
湧出量:500 l/min
泉温:43.0℃
成分:pH8.6、溶存物質 621.9 mg/kg、主要な成分は以下の通り(いずれも mg、カッコ内はミリバル %)。

ナトリウムイオン 187.5 (95.51) 塩化物イオン 195.7 (62.25)
メタケイ酸 55.7 炭酸水素イオン 97.7 (18.05)
ラドン 36.8 nCl 炭酸イオン 21.0 (7.89)

分析日:2015 年 3 月 31 日