入湯求湯巡礼行記

これまでに訪れた温泉を紹介します。
時代に逆行し、写真は基本的に載せません。
変換できない残念な名称のブログです…

嬉野温泉 嬉泉館 (佐賀県嬉野市) ★★★★

2020-08-25 | 九州・沖縄の温泉

嬉野温泉は、佐賀県の代表的な温泉地で、開湯は神話の時代まで遡るという。奈良時代には風土記などにその名が記される古湯である。


わざわざ九州、それも佐賀にまで行って (←失礼) 残念な思いはしたくないので、入念な下調べをし、ここ「嬉泉館」を選んだ。湯使いが良いと、温泉狢の評判は上々であった。明るい浴室には 3:7 ほどで仕切られた湯舟があり、それぞれトロットロの源泉が源泉が注がれ、かけ流されていた。大きな信楽の狸が置かれているが、湯口は普通の蛇口である。よくツルスベ感と表現するがここのはヌルヌルとでも表現したい。

正直に言うと、今回、佐賀県を訪れたのも「まだ佐賀に行ったことないから行ってみるか」くらいのつもりであって、絶対外せない観光の目玉があったわけではなかったのだ。だからこそ、わざわざ佐賀に来た甲斐があった」と思えるような温泉を探していた。ここ「嬉泉館」は、まさしくわざわざ佐賀に来た甲斐があった素晴らしい一湯であった。


(2015 年 4 月)


◆源泉情報◆
源泉名:嬉野温泉白川源泉
泉質:ナトリウム-炭酸水素・塩化物泉
泉温:84.0℃
成分:pH8.4、溶存物質 1399.6 mg/kg、主要な成分は以下の通り(いずれも mg)。


勝浦温泉 ホテル&レンタカー 660 (和歌山県那智勝浦町) ★★

2020-08-24 | 近畿・中国・四国の温泉

勝浦温泉は、紀伊半島の先端にも近い那智勝浦町の沿岸部に展開する温泉で、千葉県の勝浦と区別するためか南紀勝浦温泉とも呼ばれる。江戸時代後期にはすでに温泉が利用されていたそうで、熊野古道や那智の滝などの観光地にも近いことから、現在は近畿圏や中京圏からの観光客でにぎわう。

ホテル&レンタカー 660 は、JR 紀伊勝浦駅のすぐ近くにあり、レンタカー、宿泊、立寄り湯などのサービスを提供している。浴室には 6 人ほどが入れる湯舟が 1 つあり、おそらく自家源泉であろう玉乃湯が加水、加温で使用されている。オーバーフローはあり、表示でもかけ流しとのことであったが、吸い込み口もあった。これは加温のためだろうか。無色透明で、塩味のある湯であった。


(2016 年 9 月)


◆源泉情報◆
源泉名:玉乃湯
泉質:ナトリウム・カルシウム-硫酸塩泉
湧出量:142 l/min
泉温:30.5℃
成分:pH7.3、溶存物質 5584 mg/kg、主要な成分は以下の通り(いずれも mg、カッコ内はミリバル %)。

ナトリウムイオン 1429 (65.48) 塩化物イオン 3066 (90.36)
カルシウムイオン 468.3 (24.62) 硫酸イオン 408.0 (8.88)
マグネシウムイオン 109.6 (9.50) メタケイ酸 43.6

分析日:2009 年 11 月 10 日


十津川温泉 庵の湯 (奈良県十津川村) ★★★

2020-08-23 | 近畿・中国・四国の温泉

十津川村は広大な面積を有する村だが、居住可能面積は小さく、紀伊山地を流れる熊野川に沿って複数の集落が点在している。辺鄙な村ではあるが、古くから高野山と熊野を結ぶ熊野古道小辺路が通い、江戸時代までには湯泉寺温泉、十津川温泉、上湯温泉が開湯している。

庵の湯は、十津川 (熊野川の同村内流域の呼称) を臨むように立地する公衆浴場で、橋のたもとから階段を使ってやや下って入る。浴室には浴槽が 1 つあるのみで、露天はないが、窓が大きくとられ、まだ夏の気配が残る十津川の景を見ながら入浴することができた。湯は、金気臭、タマゴ味、金気味、泡付き、ツルスベ感があり、泡が舞っているので微懸濁し、うっすら白くみえた。加水や循環はなく、かけ流しで気持ちの良い湯であった。


(2016 年 9 月)


◆源泉情報◆
源泉名:十津川温泉 2 号・7 号混合源泉
泉質:ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉
湧出量:867 l/min
泉温:60.2℃
成分:pH7.5、溶存物質 1756 mg/kg、主要な成分は以下の通り(いずれも mg、カッコ内はミリバル %)。

ナトリウムイオン 435.0 (91.24) 炭酸水素イオン 971 (66.13)
遊離二酸化炭素 26.0 塩化物イオン 259 (30.4)

分析日:2014 年 3 月 15 日


小浜温泉 才一の湯 (島根県大田市) ★★★

2020-08-22 | 近畿・中国・四国の温泉

JR 温泉津駅の近くに位置する共同浴場。有名な温泉津温泉はやや離れた位置にあり、小浜温泉の方が温泉津駅に近い。“才一”とは、当地出身の浅原才一 (さいち) から採ったもの。浅原は浄土真宗の信者で、口あいとよばれる信仰の心を読んだ多くの詩を残した人物で、後に日本的霊性として評価され、鈴木大拙の著書で紹介されたことで有名になった。

浴室は 2 面に窓が広くとられ、女湯と仕切りをはさむようにして半円形の湯舟がひとつ。湯は炭酸味、甘味、鉄味のある濁り湯で、透明度は 30 cm ほど。加水と加温ありとのことだが、湯の個性は十分であった。

受付のおばさんはとても話好きな方で、いろいろと身の上話や町のことをお聞きした。観光客を呼び込める温泉津温泉のすぐ近くでありながら地元住民向けの浴場で、湯温も低く、ボイラーで沸かさなければならないなど、厳しいところだと思う。願わくはこのような温泉が今後もずっと続いてくれるよう…そう感じずにいられない一湯であった。


(2016 年 5 月)


◆源泉情報◆
源泉名:小浜温泉
泉質:ナトリウム・カルシウム-塩化物泉
泉温:25.2℃
成分:溶存物質 7130 mg/kg、主要な成分は以下の通り(いずれも mg)。

ナトリウムイオン 1780 塩化物イオン 2650
カルシウムイオン 448 硫酸イオン 974
マグネシウムイオン 87.1 炭酸水素イオン 946
ストロンチウムイオン 12.9 臭素イオン 8.5
メタケイ酸 104 遊離二酸化炭素 299

分析日:2015 年 4 月 21 日


三蔵温泉 名古屋クラウンホテル (名古屋市中区) ★★

2020-08-16 | 中部の温泉

名駅から徒歩圏内にあるビジネスホテル。立ち寄り入浴もできるが、紀伊半島遠征の起点にと宿泊で利用した。

浴室には 20 人くらいは入れそうな大きな浴槽が 1 。露天はないが、窓が広くとられていて、内湯も閉塞的には感じない。湯は笹濁りで、臭素臭がした。加温、循環だが、非加温源泉と思しき投入もあり、浴槽の縁から静かにかけ流されていた。

大都市のど真ん中にあるビジネスホテルとしては、十分なレベルだろう。


(2016 年 9 月)
※お気に入り度は湯使いや浴室の設えによるもので、客室や食事は評価対象外としています。


◆源泉情報◆
源泉名:三ツ蔵温泉
泉質:単純温泉
泉温:28.7℃
成分:pH8.1、溶存物質 174.1 mg/kg、主要な成分は以下の通り(いずれも mg)。

ナトリウムイオン 23.0 炭酸水素イオン 72.0
メタケイ酸 61.2 遊離二酸化炭素 11.1

分析日:2007 年 6 月 4 日


湯の山温泉 グリーンホテル (三重県菰野町) ★★★

2020-08-15 | 中部の温泉

湯の山温泉は、鈴鹿山脈のふもとに立地する温泉で、奈良時代に開湯されたと伝わる古湯である。源泉が枯れたり、他の温泉地に客を奪われ衰退したりと幾度もの危機を乗り越え、現在は四日市市の奥座敷として機能している。

グリーンホテルは、テニスコート 14 面を有すなど、レジャー機能を備えた宿泊施設である。ホテルを冠しているが、部屋は和室なので正確には旅館であろう。浴室には、内湯に 2 つと露天にも 2 つの浴槽があり、2 種類の源泉を引いてかけ流しにしている。内湯の小さい方の浴槽には 3 号源泉が引かれており、オーバーフローが多く、大変気持ち良い。やや黄色に色付いた湯で、ツルスベ感があった。露天にも同じ源泉が引かれており、こちらでは光の関係かうっすら緑色に見えた。眺望があるわけではないが、露天風呂自体が広く、さながら日本庭園のようで解放感は十分に演出されている。こちらもかけ流し量が多く、とてもよかった。一方、内湯の大浴槽には 4 号源泉が引かれており、循環併用で使用されている。源泉の湯温は 30℃ 程度だが、熱めに加温されていた。


(2016 年 9 月)


◆源泉情報◆
源泉名:新湯の山温泉 3 号源泉
泉質:アルカリ性単純温泉
湧出量:500 l/min
泉温:45.9℃
成分:pH8.6、溶存物質 530 mg/kg、主要な成分は以下の通り(いずれも mg、カッコ内はミリバル %)。

ナトリウムイオン 155.7 (96.16) 炭酸水素イオン 208.7 (50.07)
メタケイ酸 34.3 塩化物イオン 104.9 (43.34)

分析日:2007 年 3 月 20 日


源泉名:新湯の山温泉 4 号源泉
泉質:アルカリ性単純温泉
湧出量:140 l/min
泉温:39.1℃
成分:pH8.5、溶存物質 690 mg/kg、主要な成分は以下の通り(いずれも mg、カッコ内はミリバル %)。

ナトリウムイオン 183.7 (96.50) 炭酸水素イオン 427.6 (86.97)
メタケイ酸 31.1 炭酸イオン 12.9 (5.33)

分析日:2007 年 7 月 30 日


瓦町ぎおん温泉 ゴールデンタイム高松 (香川県高松市) ★

2020-08-14 | 近畿・中国・四国の温泉

高松の繁華街に立地するカプセルホテルの温泉である。町名の瓦町は、瓦焼職人が多くいたことによるそうで、江戸時代の高松は火事が多く、常に需要があったそうだ (風が吹くと桶屋が儲かるならいいが、これは付け火では?)。今ではその名残は見られない。

浴室には茶色く濁った温泉と白湯浴槽やサウナ、水風呂が設けられている。温泉は、加温、消毒の含放射能・鉄 (II)-単純冷鉱泉とのことだが、鉄っぽさのみ感じた。湯口付近には泥状の沈殿が厚く堆積していた。温泉ではないが、不感温帯の白湯ジャグジーが気持ちよかった。


(2019 年 1 月)


◆源泉情報◆
源泉名:瓦町ぎおん温泉
泉質:含放射能・鉄 (II)-単純冷鉱泉
泉温:19.3℃
成分:pH7.0、溶存物質 370 mg/kg、主要な成分は以下の通り(ラドン以外は mg、カッコ内はミリバル %)。

ナトリウムイオン 38.4 (40.93) 炭酸水素イオン 156.0 (60.52)
鉄 II イオン 21.8 (19.12) 塩化物イオン 43.4 (28.84)
メタケイ酸 57.2 硫酸イオン 21.4 (16.64)
遊離二酸化炭素 41.6 ラドン 39.4 nCi

分析日:2014 年 5 月 1 日


戎湯 (兵庫県尼崎市) ★★★

2020-08-14 | 近畿・中国・四国の温泉

えびす信仰は関西圏で盛んで、総本社の西宮神社で 1 月 10 日に行われる福男選びは、冬の風物詩としてテレビでも中継される。えびす神として、イザナギ神とイザナミ神の長子で海に流された蛭子神を祀る神社 (西宮神社、堀川戎神社など) と大国主命の子である事代主命を祀る神社 (今宮戎神社、尼崎戎神社など) があるが、いずれも元々は海に関係する神で、のちに商売繁盛の神とされたものである。

尼崎戎神社の門前にでもあるのかと思っていたが、戎湯は、阪神尼崎駅をはさんで全く別方向に立地していた。街中の温泉銭湯であるが、2002 年にリニューアルオープンしたそうで、建屋の雰囲気は郊外型の温泉施設のよう。内湯と露天があり、黄色透明で、モール臭、弱金気臭のある湯が張られていた。露天はしっかりとオーバーフローしており、また、内湯では湯口付近で泡付きが確認できた。

神戸の灘温泉や西宮の双葉温泉など、このあたりには同系統の湯脈があるようだ。東京や関東平野部に展開する黒湯系のモール泉より、戎温泉のような淡く色付くライトでフレッシュなモール泉の方が好みであり、銭湯は東より西と考えている。至極個人的な意見であるが。


(2019 年 1 月)


◆源泉情報◆
源泉名:戎の湯
泉質:単純温泉
湧出量:430 l/min
泉温:42.6℃
成分:pH8.1、溶存物質 442 mg/kg、主要な成分は以下の通り(いずれも mg、カッコ内はミリバル %)。

ナトリウムイオン 98.2 (93.23) 炭酸水素イオン 262.4 (92.27)
メタケイ酸 59.0 遊離二酸化炭素 4.4

分析日:2001 年 8 月 17 日


安代温泉 安代大湯 (長野県山ノ内町) ★★★

2020-08-13 | 中部の温泉

安代温泉は、夜間瀬川沿いに展開する湯田中・渋温泉郷のちょうど湯田中温泉と渋温泉の境に位置している。数件の旅館と共同浴場からなる温泉で、渋温泉とは地続きになっている。

大湯は、ジモ専の共同浴場であるが、安代温泉の旅館に宿泊すると鍵を貸してもらうことができる。緩やかな坂道に面しており、上手にも下手にも入り口と脱衣場がある立派な造りである。タイル張りの浴室には湯舟が 1 つ。パイプを伝い、注がれる源泉のほとんどを湯舟から逃がしているが、それでも 45-46℃ はあった。かけ流しで、加水もできるがしばらく誰も入浴していなかったのだろう。ビリビリ感、微石膏臭のある高温の湯で、湯底の一部には灰黒色の沈殿もみられた。湯上りにはさっと渇き、サラサラとした感覚が心地よい良質な芒硝泉であった


(2019 年 11 月)


◆源泉情報◆
源泉名:共益会 11 号ボーリング
泉質:ナトリウム-塩化物・硫酸塩泉
湧出量:75 l/min
泉温:91.3℃
成分:pH8.2、溶存物質 1623 mg/kg、主要な成分は以下の通り(いずれも mg、カッコ内はミリバル %)。

ナトリウムイオン 362.1 (76.17) 塩化物イオン 533.8 (70.25)
カルシウムイオン 64.6 (15.59) 硫酸イオン 257.0 (24.95)
メタケイ酸 202.3 チオ硫酸イオン 1.4 (0.12)
メタホウ酸 89.5 炭酸水素イオン 38.2 (2.92)

分析日:2012 年 5 月 2 日


鰻温泉 うなぎ湖畔 (鹿児島県指宿市) ★★★

2020-08-11 | 九州・沖縄の温泉

薩摩半島の先端付近を地図で見ると、池田湖、鰻池、山川湾とぽっかり陸地に穴が開いているように見える (山川湾は少しわかりずらいが、砂洲だろう)。いずれもカルデラによるもので、活火山に指定されている。こと鰻池に関しては今でも熱源が近くにあるようで、あちこちに湯気が立ち上っているが、これは水蒸気を利用して蒸し焼きにするスメというものである。

うなぎ湖畔は、やや高台ににあがったところにある。内湯と混浴の露天があるが、離れているので一度服を着て移動することになる。内湯は武骨なコンクリ造りのもので、さながら共同浴場のようである。一方、露天は鰻池を一望する開放的なものである。湯はいずれもうっすら硫化水素集を感じるものだったが、気候の影響か露天は内湯よりぬるめ。鰻池を見下ろしながら湯浴みしていると、細雪が降り出した。


(2018 年 2 月)


◆源泉情報◆
源泉名:鰻 7 号
泉質:単純温泉
泉温:81.6℃
成分:pH5.9、溶存物質 121 mg/kg、主要な成分は以下の通り(いずれも mg、カッコ内はミリバル %)。

カルシウムイオン 8.8 (34.92) 炭酸水素イオン 33.6 (45.08)
ナトリウムイオン 9.4 (32.54) 塩化物イオン 13.2 (30.33)
メタケイ酸 35.1 遊離硫化水素 1.7

分析日:2011 年 8 月 18 日