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1月31日松下幸之助一日一話(松下幸之助.COM)
千の悩みも
経営者には、一度にいくつもの問題に直面して、あれこれ思い悩むという場合が少なくありません。しかし私はいままでの経験で、人間というものはそういくつもの悩みを同時に悩めるものではないということに気づきました。結局、一番大きな悩みに取り組むことによって、他の悩みは第二、第三のものになってしまうのです。だから、百の悩み、千の悩みがあっても、結局は一つだけ悩めばよい。一つだけはどうしても払うことができないが、それと取り組んでいくところに、人生の生きがいがあるのではないか。そう考えて勇気を持って取り組めば、そこに生きる道が洋々と開けてくると思うのです。
【コラム】筆洗
2014年1月30日東京新聞TOKYOWeb
▼英語のSHALL(シャル)とWILL(ウィル)。同じ未来形に使用する助動詞だが、どんな差があるのか
▼いずれも未来に向けた「意志」を示すが、シャルには「そうすべきだ」というニュアンスがより強い
▼例示としてよく引用されるのが、マッカーサー元帥の「アイ・シャル・リターン」と、歌の「ウィ・シャル・オーバーカム」。その曲を歌った米フォーク歌手ピート・シーガーさんが二十七日、九十四歳で死去した
▼きっと、「オーバーカム」(勝利)するという強い決意。だからシャル。打ち勝たなければならない相手は黒人差別だった。曲は一九五〇、六〇年代の米公民権運動の一種のテーマソングになった。その立役者がシーガーさんだった
▼興味深いことにもともとはシャルではなかった。米公共ラジオNPRの記事に教わった。原曲は黒人のチャールズ・アルバート・ティンドリー牧師が〇一(明治三十四)年に発表した霊歌で当時の曲名は「アイル・オーバーカム・サムデー」。助動詞は「ウィル」だった。しかも主語は複数形の「ウィ(私たち)」ではなく「アイ(私)」だった
▼シャルで歌ったのはシーガーさんだが、ある黒人女性の「こっちの方が好き」と言ったのがきっかけになった。一人の気持ちがやがては人々の決意に変化する。「ウィ」と「シャル」の力。遠い昔の話になってしまったが。
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1月30日松下幸之助一日一話(松下幸之助.COM)
自分を飾らず
私は、毎日の生活を営んでゆく上において、自分をよく見せようとお上手を言ってみたり、言動にいろいろと粉飾することは大いに慎みたいと思います。これは一見、簡単なことのようですが、口で言うほどたやすいことではありません。ことに出世欲にかられる人は、自分を他人以上に見せようとする傾向が強いようです。
しかし、人はおのおのその素質が違うのですから、いくら智恵をしぼって自分を粉飾してみたところで、自分の生地はごまかすことはできず、必ずはげてきます。そして、そうすれば、そのときには一ぺんに信用を落とすことになってしまうのです。私は、正直にすることが処世の一番安全な道だと思います。
【コラム】筆洗
2014年1月29日東京新聞TOKYOWeb
▼父親を失った。そんな気さえする。磯野波平さん、星一徹さん。「サザエさん」で波平の声優永井一郎さんが二十七日、八十二歳で亡くなった。十七日には「巨人の星」の一徹の加藤精三さんが八十六歳で亡くなっている
▼今も続く「サザエさん」の放映スタートは一九六九(昭和四十四)年十月だ。「巨人の星」は六八(昭和四十三)年。テレビ画面の下端に「カラー」という表示が出ていた。働いて稼いで生活を向上させる。迷いのない時代だったといえる
▼戦前の家父長制の雰囲気が残る二人はわが子を実によく叱る。二人には子の考え違いを容赦なく叱る強い自信があった。迷いはない
▼何が正しくて何が正しくないか。どうも大人が自信を持ち切れない。経済成長、技術革新でさえ、絶対に正しいとは言い切れない。ましてや生き方。大人が悩んでいる
▼道路に四、五歳の男の子が寝転んで「こっちの道へ行きたい」と叫んでいる。若い父親も叫び返している。「オレだっておまえの言っている方へは行かないからな」。何かおかしい。二人でだだをこねている。子をひきずっていく自信はない
▼波平は五十四歳。<生きてゆくのであろうけど 遠く経て来た日や夜の あんまりこんなにこいしゅては なんだか自信が持てないよ>。中原中也。波平の年齢が迫るわが身を含め大人がカツオのままでいたがっている。
【社説】東京新聞TOKYOWeb
代表質問 「民意」をぶつけてこそ
2014年1月29日
安倍晋三首相の施政方針演説に対する各党代表質問が始まった。政府の進める政策が、国民の思いや願いと懸け離れてはいないか。国会は政権監視の責務を自覚し、執拗(しつよう)に問いたださねばならない。
安倍内閣は昨年夏の参院選後、衆参多数の自民党の「数の力」を背景に、強引ともいえる国会、政権運営を進めてきた。特定秘密保護法の成立強行や、集団的自衛権の行使容認に向けた前のめりの姿勢である。
自民党の「一強」支配に、どうやって歯止めをかけるのか。野党はもちろん、与党の公明党にとっても正念場だろう。
民主党の海江田万里代表は、安倍内閣には「経済」「外交」「国のあり方」という三つのリスク(危険)があると指摘し、「平和と民主主義を脅かす動きに対しては断固として戦うと宣言」した。
首相が施政方針演説で「政策の実現を目指す『責任野党』とは、柔軟かつ真摯(しんし)に政策協議を行う」と秋波を送ったことに対する民主党の回答なのだろう。野党の姿勢としては当然である。
世論調査結果を見ると、安倍内閣の支持率は50%台でも、個別の政策では全面的に賛同しているわけではないことがうかがえる。
例えば集団的自衛権の行使容認だ。首相は答弁で「わが国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中、安全保障の法的基盤を再構築する必要がある」と積極姿勢を示したが、最新の共同通信世論調査では半数以上が反対している。
また、首相が「効果的な運用が図られるよう施行準備を進める」と答弁した特定秘密保護法も、世論調査ではこのまま施行すべきとの回答は20%に満たない。
選挙結果は最も重要ではあることに異論はないが、世論調査に表れた「民意」と大きく懸け離れた政治もまた、あってはならない。
政治に携わる者は民意に敏感であるべきだ。特に野党は、国民の思いや願いを政権側にぶつけ、暮らしをよくする政策の実現に尽力することが責務である。
安倍内閣は「政権暴走」批判を気にしてか、野党の取り込みに懸命だ。施政方針で「責任野党」とは政策協議を行う姿勢を表明し、実際、みんなの党に対して協議を呼び掛けたことも、その一環なのだろう。
法律をつくり、政策を実現するのは国会の仕事だが、それが政権に都合のいいものであってはならない。政権にすり寄る政党には、未来はないと心得るべきである。
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1月29日松下幸之助一日一話(松下幸之助.COM)
先憂後楽
「先憂後楽」ということは、天下の人びとに先んじて憂い、天下の人びとに後れて楽しむという、為政者の心構えを言った昔の中国の人の言葉だそうである。しかし私は、この先憂後楽ということは、単に為政者だけでなく、お互い企業の経営者としても、ぜひとも心がけなくてはならない大切なことだと考えている。
もちろん経営者とて、ときに休養し、遊ぶこともあるが、そのようなときでも全く遊びに心を許してしまわず、心は常に先憂ということでなくてはならない。それは言いかえれば、人よりも先に考え、発意、発想することだとも言える。経営者というものはたえず何かを発想していなくてはいけないと思うのである。
【コラム】筆洗
2014年1月28日東京新聞TOKYOWeb
▼危機、困難、窮地。人間は二通りに分かれると将棋の羽生善治さんが『決断力』の中で書いている。「ピンチに陥って奮い立ち、知恵を出せる人」と「ひるんでしまう人」
▼米音楽のグラミー賞でバイオリニスト五嶋みどりさんがソリストとして参加したアルバムが最優秀クラシック・コンペンディアム賞を受賞した。五嶋さんも間違いなく窮地にひるまない人だろう
▼一九八六年七月、米東部、タングルウッド音楽祭でボストン交響楽団と共演した。曲は作曲者でもあるレナード・バーンスタインさんが指揮する「セレナード」。演奏中、五嶋さんのバイオリンのE弦がぷつんと切れた。どうするか。五嶋さんは平然とコンサートマスターにバイオリンを借り、弾き続けた
▼他人の楽器。五嶋さんには大きい。それでも弾くが、試練は続く。その弦もまた切れてしまう。別の演奏者にもう一丁借りてなお続ける。演奏を終える。待っていたのは何があろうと演奏を止めなかった勇気に対する拍手と大歓声だった
▼ニューヨーク・タイムズの見出しは「十四歳の少女が三丁のバイオリンで征服」。逃げ出したい。誰かのせいだと言い訳したいが、それではやはり前には進めぬ
▼グラミーのベストロックアルバム賞はレッド・ツェッペリンが受賞。六八年結成の大物だが部門賞受賞は初めて。これも再結成にひるまなかった結果である。
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1月28日松下幸之助一日一話(松下幸之助.COM)
衣食足りて礼節を知る
「衣食足りて礼節を知る」という言葉がある。これは今から二千年以上も昔の中国で言われたものだというが、今日なお広く使われているということは、そこに人間としての一つの真理があるからのように思える。
ところが、今日のわが国については、「衣食足りて礼節を知る」どころか「衣食足りて礼節ますます乱る」と言わざるをえないことが多い。これはまさに異常な姿である。われわれはいま、この世の中を正常な姿に戻して社会の繁栄、人びとの幸福を生みだしていく必要がある。そのためには、まず自己中心のものの考え方、行動をみずから反省し、戒めあっていくことが肝要だと思う。
【コラム】筆洗
2014年1月27日東京新聞TOKYOWeb
▼電車の中で読まなければよかった。はなをすする。前席の小さな女の子がこっちを見る。それでまた悲しくなる。高階杞一さんの詩集、「早く家(うち)へ帰りたい」(夏葉社)を読む
▼重病で四歳を前に亡くなったわが子への思いが、痛い。「早く家へ帰りたい」はサイモンとガーファンクルの曲である
▼亡くなった後、一枚のCDがデッキに挿入されていたのに気がついた。あの子が遊んでいて偶然入れたのだろう。曲をかけたら「早く家へ帰りたい」だった。あの子からの最後のメッセージのように思えた。<死の淵(ふち)から家に帰りたいという意味なのか 天国の安らげる場所へ早く帰りたいという意味なのか それともぼくに早く帰ってきてという意味だったのか>
▼子を亡くした自分も「家」へ、子が生きていた平穏な時間へ帰りたいと願っている。そんなことはできないのに。<ぼくは早く家へ帰りたい 時間の川をさかのぼって あの日よりもっと前までさかのぼって もう一度 扉をあけるところから やりなおしたい>
▼人はどこかへ帰るために生きているのではないか。その男は夜の町を自転車でさまよっていたという。妻も子もいる。家がある。でも帰れない。農薬を冷凍食品に混入した容疑で逮捕された
▼事実だとすれば一時の黒い感情によって大切なものを失ったのか。家へ帰れない。愚かである。哀れでもある。
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1月27日松下幸之助一日一話(松下幸之助.COM)
過当競争は罪悪
お互いに適正な競争はやりつつも、過当競争はいわば罪悪として、これを排除しなくてはなりません。特に資本力の大きな大企業、業界のリーダー的な企業ほど、そのことを自戒しなくてはいけない。小さな企業が少々過当競争的なことをしても、リーダー的な企業が毅然として正しい競争に徹したならば、業界はそう混乱しないでしょう。しかし、もしリーダー的な企業が率先して過当競争を始めたのでは、あたかも世界大戦のごとき大混乱をもたらして業界をいちじるしく疲弊させ、その信用を大きく失墜させることにもなります。企業が大きければ大きいほど、業界の健全な発展に対する責任もまた大きいと言えましょう。
【コラム】筆洗
2014年1月26日 東京新聞TOKYOWeb
▼百六十一億円。驚くより先に怖くなる。田中将大投手が米大リーグのヤンキースと結んだ契約総額である
▼これだけ巨額になるとうらやましいとさえ思わない。想像もつかぬ数字で実感できないのである。むしろ米紙が報じている契約の一部の「引っ越し費用は約三百万円」「住宅手当は年間約一千万円」の方に驚いたりするものだ
▼「二十四勝無敗」。米国報道を見ると、これが田中投手の枕詞(まくらことば)になっている。「二十四勝無敗の田中」「直球はまあまあだが二十四勝無敗で…」
▼どんな小説や劇画にも「二十四勝無敗」の投手はまず登場しない。非現実的だし、面白くないからだ。『巨人の星』の星飛雄馬でさえ、公式戦通算成績は「四十七勝五敗三セーブ」という。漫画データ研究の豊福きこうさんの本にある
▼「夢の数字」と巨額投資への期待はそのまま田中投手には重圧になる。「本拠地でビジターを応援すれば言葉の暴力を受ける。ヤンキースタジアムなら本物の暴力を受ける」。こんな言い方があるそうだ。それほど熱狂的な声援の一方、期待外れだと容赦ないファンを思えば尻込みしたくもなるが、田中投手は逃げなかった
▼「(契約した田中投手の)覚悟と自信に敬意が払われるべきだ」。こう言ったのはイチロー外野手。ヤンキースの怖さと「神の子」の心の強さを「天才」はさすがに分かっているようだ。
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