Still Alice
Still とは、静止した、とか、動かない、という意味をもった単語です。
Stand still と言えば 動かすにじっとしている、という意味です。
+ + +
Lisa Genova 原作のこの小説はアメリカで大ベストセラーになりました。
ハーバード大学で認知心理学の教鞭をとっている主人公アリス・ハウランド
(Alice Howland) は同じハーバードで働く夫と息子ひとりに娘ふたりの
いる、幸せで社会的に成功した典型的なアメリカ人家庭の主婦でした。
子供たちも独立し夫婦共に職業を持ち、夫ジョンも出張で飛び歩いたり
自分自身も朝から晩まで多忙で出張や学界発表に明け暮れる生活の
毎日でした。
そんなアリスに異変が訪れます。講演中に急に言葉が出なくなったり、
ジョギングをしている最中に家に帰る方向が分からなくなったりします。
ボストンに行くはずなのにすっかり忘れてジョギングをして家に戻って
来る有様で生活に影響が出始めるのでした。
突然言葉が出ない、帰り道が分らない、記憶が抜け始めた自分の異常に
気が付き何かがおかしいと感じ始めます。それは50才という若さに突然
襲って来た若年性アルツハイマーでした。 どんどんと自分が認識でき
なくなっていくアリス。主治医に相談すると頭のMRIを撮りましょう、と
言われ余計に落ち込みます。閉経期だから? 頭の腫瘍? 一体何が
起きているのだろうか。このまま変になってしまうのだろうかという
不安感に襲われ始めます。そしてついに主治医から若年性アルツハイ
マーに侵されていることを聞かされるのでした。
苦悩するアリス。知識として頼りにしている携帯端末も紛失して
しまいます。自分と家族への重荷へとなっていく病気の進行。
だんだんと打ちのめされていくアリス。
大学の新学期の始まる前に学生からの評価表が低下しているのを大学
側から知らされ、大学にもアルツハイマーであることを告白します。
ウェブ上で自分と同じアルツハイマーで悩んでいるひとたちに声を
かけて自宅に招きお互いに相談したり彼女なりの努力をしてみます。
またアルツハイマーの患者の介護施設を見学に行き、こんなふうになるの
なる死んだほうがまし、と病気進行後にそなえ自分に指示を残したりします。
アリスは自分に向かって語り始めます。そこには正常な自分に向かって
語り始めることにより何とか元の自分を取り戻そうとする必死なアリス
の姿があったのでした。夫や子供たちも協力し共に病気と対峙します。
作者はアリスを通じてこういうときに家族はどうあるべきか、を問い
かけてきます。
誰にでも襲って来るであろうアルツハイマー。もしそれがまだ若い
うちに発症したら? もし自分の連れ合いや家族にも発症したら?
アリスの口から語られる三人称の語り口で物語が進みます。
プロットが良く練られていてこれが作者のデビュー作とは思えない
ほどの出来栄えです。作者自身ハーバードで脳と心の研究を重ねた認
知症の専門家でもあり、自身の研究である神経科学で博士号を取得する
キャリアを持っていて、おそらく相当の取材を重ねたものと思われますが
まことに見事な第一作です。
アルツハイマーの数々の症例を研究したものでないと書けないリアル
なフィクションです。日にちや時間が言えない、約束事を忘れていく、
など日常の初期症状を見事に表現し、いわば患者の方から語られる
アルツハイマーの進行の恐怖がよく描かれています。
アメリカではアルツハイマーはわりと身近な病気です。その意味では
この物語が伝えるテーマは他人事ではありません。作者は誰にでも
起こりうる身近な病気として読者に訴えるのです。はたしてアリスは、
夫ジョンや子供たちや友人たちはこの病気とどう向き合うのでしょうか。
もしあなたの記憶が消え始めたとしたら、自分が誰だか分らなくなった
としたら? と。
私事ですが、アルツハイマーよりも進行が速くあっという間に脳が
侵されていき廃人のように全く動かなくなり死を待つだけの恐ろしい
病気、ヤコブ病に罹患したひとを知っているだけにこの物語は恐怖その
ものでした。
Julianne Moore - Still Ailce (Pocket Books)
この小説は Julianne Moore 主演で映画化され そして彼女は見事
2015年のアカデミー主演女優賞に輝きました。
お奨めの一冊です。「静かなアリス」というタイトルで邦訳が出ています。
Still とは、静止した、とか、動かない、という意味をもった単語です。
Stand still と言えば 動かすにじっとしている、という意味です。
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Lisa Genova 原作のこの小説はアメリカで大ベストセラーになりました。
ハーバード大学で認知心理学の教鞭をとっている主人公アリス・ハウランド
(Alice Howland) は同じハーバードで働く夫と息子ひとりに娘ふたりの
いる、幸せで社会的に成功した典型的なアメリカ人家庭の主婦でした。
子供たちも独立し夫婦共に職業を持ち、夫ジョンも出張で飛び歩いたり
自分自身も朝から晩まで多忙で出張や学界発表に明け暮れる生活の
毎日でした。
そんなアリスに異変が訪れます。講演中に急に言葉が出なくなったり、
ジョギングをしている最中に家に帰る方向が分からなくなったりします。
ボストンに行くはずなのにすっかり忘れてジョギングをして家に戻って
来る有様で生活に影響が出始めるのでした。
突然言葉が出ない、帰り道が分らない、記憶が抜け始めた自分の異常に
気が付き何かがおかしいと感じ始めます。それは50才という若さに突然
襲って来た若年性アルツハイマーでした。 どんどんと自分が認識でき
なくなっていくアリス。主治医に相談すると頭のMRIを撮りましょう、と
言われ余計に落ち込みます。閉経期だから? 頭の腫瘍? 一体何が
起きているのだろうか。このまま変になってしまうのだろうかという
不安感に襲われ始めます。そしてついに主治医から若年性アルツハイ
マーに侵されていることを聞かされるのでした。
苦悩するアリス。知識として頼りにしている携帯端末も紛失して
しまいます。自分と家族への重荷へとなっていく病気の進行。
だんだんと打ちのめされていくアリス。
大学の新学期の始まる前に学生からの評価表が低下しているのを大学
側から知らされ、大学にもアルツハイマーであることを告白します。
ウェブ上で自分と同じアルツハイマーで悩んでいるひとたちに声を
かけて自宅に招きお互いに相談したり彼女なりの努力をしてみます。
またアルツハイマーの患者の介護施設を見学に行き、こんなふうになるの
なる死んだほうがまし、と病気進行後にそなえ自分に指示を残したりします。
アリスは自分に向かって語り始めます。そこには正常な自分に向かって
語り始めることにより何とか元の自分を取り戻そうとする必死なアリス
の姿があったのでした。夫や子供たちも協力し共に病気と対峙します。
作者はアリスを通じてこういうときに家族はどうあるべきか、を問い
かけてきます。
誰にでも襲って来るであろうアルツハイマー。もしそれがまだ若い
うちに発症したら? もし自分の連れ合いや家族にも発症したら?
アリスの口から語られる三人称の語り口で物語が進みます。
プロットが良く練られていてこれが作者のデビュー作とは思えない
ほどの出来栄えです。作者自身ハーバードで脳と心の研究を重ねた認
知症の専門家でもあり、自身の研究である神経科学で博士号を取得する
キャリアを持っていて、おそらく相当の取材を重ねたものと思われますが
まことに見事な第一作です。
アルツハイマーの数々の症例を研究したものでないと書けないリアル
なフィクションです。日にちや時間が言えない、約束事を忘れていく、
など日常の初期症状を見事に表現し、いわば患者の方から語られる
アルツハイマーの進行の恐怖がよく描かれています。
アメリカではアルツハイマーはわりと身近な病気です。その意味では
この物語が伝えるテーマは他人事ではありません。作者は誰にでも
起こりうる身近な病気として読者に訴えるのです。はたしてアリスは、
夫ジョンや子供たちや友人たちはこの病気とどう向き合うのでしょうか。
もしあなたの記憶が消え始めたとしたら、自分が誰だか分らなくなった
としたら? と。
私事ですが、アルツハイマーよりも進行が速くあっという間に脳が
侵されていき廃人のように全く動かなくなり死を待つだけの恐ろしい
病気、ヤコブ病に罹患したひとを知っているだけにこの物語は恐怖その
ものでした。
Julianne Moore - Still Ailce (Pocket Books)
この小説は Julianne Moore 主演で映画化され そして彼女は見事
2015年のアカデミー主演女優賞に輝きました。
お奨めの一冊です。「静かなアリス」というタイトルで邦訳が出ています。
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