My favorite things 2024

不定期でジャンルもバラバラです。 お気軽に寄って見て下さい、 

悪所通い

2007-03-20 00:10:12 | 江戸由縁東京旧聞
どうもォ、このォ、あ~吉原ってェ話になりますと、何かあ、ちいっとばか
照れるっつぅかァ、ん~、このォ顔が赤くゥなるような、あ~変な気分んで。
ふ~、え~とォ、ィ、今はもう昔のことなんでえ、まあ、ねえ、身に覚えが
ない訳でもないんですが、へへ。え~、だけども、あ~、やっぱり、このォ
伝え聞いてる、お~、その昔の吉原の話の方がねえ、どうもこの、楽に話
せるんでェ、え~、こっちのほうをちょっとばか聞いて頂ければ、ね、有難
えんです。

あ~、え~、大昔は吉原は今の人形町のあたりにィあったんだそうですな。
そんで、この、江戸が大きくなって行くにつれて、町屋に近いとこにィそんな
とこがあっちゃまずいってんですが、明暦の大火ってのがあって皆燃えちま
った。ンでェ、それを理由にして浅草の外れほうに移させたんだそうですな、
ナンでも。んでもって、名前も改めて新吉原ってェなったんだと。

ツァ~、その頃はてえと、吉原田圃って言うくらいで、な~にもないとこで、
夜なんざ真っ暗なんだ。ん~、お~、んで、時代が下って参りますってとお、
それでも段々と賑やかにィ、なって来ましてえ、江戸中の男たちはこぞって
出かけて行くようになります。あ~、この、何と言ったって幕府公認でござ
いますから、え~、はあ、大手を振って堂々と行けるって訳で、良く悪所通
いなんて言いますけども、うん、まあ、このォ大変良い時代だったんすな。
名代の大名に武家、商人、町屋の職人に坊主まで行ったんだそうですから。

ンと、それでェ吉原はますます栄えて来ますんで、少々遠いたって、そりャ
あなた、行きますよ、根が好きなんすから。ええ。ねえ。行かない方が野暮っ
てもんで。そうでしょう。ねえ。あああ、うなずいちゃったりして。え~。
ふふ。ははは。そうだようねえ。

ん~、で、どうやって行くかってえと、急がない連中は、日本堤ってぇ土手
がある。この土手を浅草あたりからのんびり歩いて行くんです。通いなれた
る土手八丁ってやつですな。うん。え~、で~、ちょいとばか余裕のある向
きは舟でもって山谷堀を行くんすな。お~、専門の船頭がいてねェ、猪牙
舟ってやつです。これでもって吉原まで行く。五月の終わりごろになるって
いうと、川風が夕方なんざァどうにも気持ちが良い、ん~、ワクワクする気
持ちを抑えて、川ァ上っていく。ねえ、どうです。ん、あ~、どうも風流で。
粋ですな。いえ、まったく。ん、うん。ああ、こういうのは、やっぱり粋でなきゃ
いけませんな。ええ。

「何処行くんだ、おめェ。イイのォ着ちゃって、めかし込んでよ。」
「ああ、ちょっとそこまで女郎買いに行くんだ。」 これじゃあいけませんな。
こういうのは江戸じゃァ野暮になっちゃうんす。そのへんに大根でも買いに
行くんじゃないんすから。粋じゃないと駄目っすな。日頃から粋が肝心です。

「江戸っ子の生まれ損ない猪牙に酔い」なんて言いますが、あ~、このォ
吉原なんてとこは、江戸っ子なら大抵みんな行くんす。それもォ 喜んで
行っちゃうんすから。え~、大体、あ~、江戸ってところは男が多くてね
女が少ないんす。だからァ、吉原なんてみんな行ってる。それがあ、当た
り前だったんすな。で、え~、通い馴れてるのに、なんで猪牙に酔うんだ、
と。あ~、こりゃァだからあね、不慣れなやつのことを言っているんすな。
吉原も行ったことねえのか、猪牙にも乗ったことがねえのかって。江戸の
男じゃあねえよ、と。あ~、つまり、この、吉原行くゥことを、ハナっから
言っているんですん、これは。猪牙つうのはそういうことなんで。うん。
あ~。酔ったりしたら無粋だってんです。ウン。え~、だから、とにかく
粋でなきゃいけませんや。

で、このォ山谷堀来て、今まで川で暗かったのを、舟ェ降りて土手ェ上がる
って言うと、向こうの暗い中に吉原のォ明かりがどーんと見えるんで。
不夜城ってやつですな、いやァ~、これがまた見事なもんで。あかあかとし
てんだァ。こいつがいきなり目の前に広がるん。ツ~と、もうそりゃあなた、
夢の世界ってやつでさァ、え~、ん~、ドカ~ンとね、実に見事です。

ふ~。で、え~、吉原へ着いたらあ、衣紋坂ってえのがある。まあ土手だ
からねェそりゃ坂ってのがある。ん。で、え~、そこに見返り柳ってえのが
あった。あァ、こりゃあ今でもあります。あります。今でもちゃんとあるんで
す。もちろん当時の柳じゃあ、ありませんよ、でもあります。石碑なんかも
おいてありますよ。うん。暇だったら、今度行って見て来てくださいよ。
ぜし。ねぇ話のネタかなんかに。

でェ、あ、このォここで、ナカから出てきたのが遊んできた女のこと、思い
出して振り返るんすな、うん。で、そこに柳が目に入る。ンで、まァこのォ
誰言うことなく見返り柳、っつんで。うまいこと言うもんですな、どうも、
昔のひとは。見返り柳。粋なもんですな。

で、あ~、そこの坂道で着物の乱れもそっと直すんすな、特に乱れちゃあい
やしないんす、ンだけども、どうも、このォ、気のもんで。襟を正すんです。
だから、え~、そんでもって、この坂を衣紋坂ってェ言うんですよ。

それから、つ~と、この坂ォ降りるってとお、五十間道つうのがある。あ~
こりゃあ、この長さが五十間あったからだつんだけど、こいつがくの字に
曲がってんだ。うん。え~何たって吉原だからねえ、まっつぐ入るのが気が
引けるんだか、あ~、わざわざ曲げてあるんだ。気ィ持たせるんだァ。まあ
、あ~、土手んとこからまっつぐ見られねえようにしてあんだろうけど。う
ん。一応憚ってんですなあ。ん。

でもって、あ~、え~、この道を行ったところが大門となるんです。夕方に
なるってェと、行灯に火が入り清掻が聞こえてくる。この三味線がまた堪ら
ないんで。身震いしちまう。いよいよ吉原ァんナカぁ入るんですがァ、どうも
この、今日は生憎時間が来ちまって、スイマセンねえ。ここから先はまたの
お楽しみってェことで、この辺でまた宜しくと、どうも有難うございます。。

ー・-・-

とまあ「講釈師見てきたようなことを言い」ではありませんが、悪所通い、
山谷堀から大門まで、の一席でございました。お粗末でございました。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 大川端毒婦伝 | トップ | 戦前の吉原 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿