ほぼ不定期日記

散歩ばかりしている男の嘘日記

きのこ雲の下の青春

2009年08月07日 | ほぼ嘘日記
昭和20年の8月6日
広島の電力会社に勤めていた私の父は
山奥の変電所へ保守のために
列車で出かけることになりました
広島駅を出た列車が廿日市を過ぎた正午頃
車窓から閃光を見たのです

原爆でした

同僚に代わって出張したことで
幸運にも被爆をまぬがれた父でしたが
子供の頃に私が聞いても当時のことは
あまり詳しくは教えてくれませんでした

今思えば
信じられないほどの恐怖体験で
心に大きな傷を受けていたのかもしれません

勤めていた電力会社は広島市の中心部にあり
当然父の同僚たちは一瞬にして蒸発したか
黒焦げになってしまったことでしょう
入ることを禁じられていた市内に
何日後かに戻った時に父が見たものは何だったのか?
想像しただけで恐ろしくなってくるというのに
実際の現場を
見て
嗅いで
体に染み込ませた青年の心の中こそ
地獄絵図などという言葉さえ陳腐な世界だったことでしょう

快活で外交的な父でしたが
心の底には消えない景色があったのかもしれません



こういう心の状態を
心的外傷後ストレス障害またはPTSDというのでしょうか




ところで近頃話題の薬物MDMAは
PTSDの治療薬だったこともあったそうですが
危険な副作用や
性的興奮のための乱用もあって
違法な薬物に指定されたのだそうです

薬物の乱用の弊害というものは
生命の危険とか
社会に迷惑をかけるということだけで無く
深刻な心の傷を抱えて生きる方々の治療のチャンスを
奪ってしまうということでもあったりするのです
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