開催まで1年を切った東京2025デフリンピック。昨年6月~11月にかけて全日本ろうあ連盟主催で「国際手話通訳者の人員確保のため、国際手話通訳者(ろう者)と手話言語通訳者(きこえる人)をペアで養成」(全日本ろうあ連盟の開催要項から一部抜粋)する研修会が行われ、国際手話クラスではこの研修の話題が持ち切り!受講された会員の方にご寄稿いただきましたので、皆様もぜひお読みください。「よぺ」さん、ご寄稿、誠にありがとうございました。本番での活躍を楽しみにしています!(事務所)
私は昔から手話通訳に興味がありました。米国留学時、アメリカの「聴覚障害を持つ医療従事者の協会」が開催する全米大会が開かれたときに日本人が参加するとのことで、手話通訳を依頼されたことがあります。しかし、ヨーロッパからの参加者がいて、国際手話も必要となりました。私はアメリカ手話言語(以下、ASL)を流暢に使えますが、国際手話の方は全く知らなかったため、通訳がなかなかうまくいかず、トラウマになった記憶があります。そのため、この研修会があることを知ったとき、手話通訳の仕事をしたい気持ちがあったものの、一歩をなかなか踏み出せずにいる自分がいました。すると、日本ASL協会の関係者から、「この研修会はあなたに合ってるんじゃない?やってみたら?!」と背中を押してもらったこと、また、この研修会の募集要項に「本講座に参加することで、 東京 2025 デフリンピック本番の通訳を依頼することを約束するものではございません。」という記述があり、できるところまではしてみようと、受講を決意しました。
研修会はきこえる人とろう者とでカリキュラムが別々に設定されており、ろう者の方は全部で50時間(オンライン14時間、対面36時間) 。6~7月はオンラインの講義、10〜11月は東京で対面実地研修をしました。
初めての対面研修は10月12日~14日で、リトアニアとインドネシアからそれぞれ1人ずつろう講師が私たちのために講義をしてくれました。私と一緒に受講した受講生も、私と同様に国際手話そのものを見ることに慣れていない人ばかりでした。手話通訳の講座とはいえ、普段の会話ではなく、専門的な内容の講座を国際手話で受けることは、絶対に理解ができないと思いました。しかし私はASLができること、日本手話言語の力も相まって、国際手話で話されている専門的な内容をほぼ読み取ることができました。トムとジェリーのアニメや「H3 World TV」*という国際手話のニュース動画を日本手話言語で表現したり、Herluf Bidstrup(ハールフ・ビストルップ)というデンマークの漫画家が描いた漫画の内容を国際手話で表現したりする練習もしました。国際手話表現のわからない単語があった時は、講師に直接聞いたり、ほかの受講生に聞いたりしました。
講師に国際手話で質問する際、うまく表現できず、もどかしい思いをしたこともありましたが、3日間国際手話のシャワーを浴びた結果、国際手話力が上達するのを実感しました。
ほかの対面研修では、きこえる通訳者と国際手話通訳と日本手話言語通訳の共同通訳の研修でした。音声日本語⇔日本手話言語⇔国際手話の通訳の練習とともに、国際手話通訳者と日本手話言語通訳者の呼吸の合わせ方の練習もしました。国際手話→日本手話言語(図①)はほぼできましたが、日本手話言語→国際手話(図②)の通訳は難しかったです。
対面研修のほとんどで、神様が私に試練を与えたのか(笑)、私のグループのろう者がみな欠席しており、私一人で通訳作業をすることが多かったです。でも、私はその分長い時間、通訳の練習ができるとポジティブに考え、頑張りました。
今回の研修は50時間でしたが、来年度のデフリンピックに向けて通訳をするには、まだまだ力が及びません。今後は個人で世界ろう連盟の手話動画や、国際手話のできる外国人が日本に来たときに、積極的に交流をして国際手話の力を少しでも上げていけたらと思っています。(よぺ)
----------------------------------
事務所注*H3 World Tv
https://h3world.tv/
国際手話でニュースを発信しているインターネット動画サイト
----------------------------------