ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

レジェンド

2018-09-04 01:48:40 | 日記
魚の目に悩まされて、うん十年。

いくつもの皮膚科に通い
整体や整形外科でインソールを作り
歩き方を研究し
最終的には自分で削るしかないと
スピール膏を買ってコツコツと処理し…

それでも一向になくならない魚の目に
私はあきらめかけていた。

しかしこのところ椎間板ヘルニアによる
足のしびれもひどくなり
もう、足ごと取り替えたい~~~!と思うほど
足のトラブルは我慢の限界を超えた。

そこで今日は
かねてから目をつけていたフットケア・サロンへ。

「あら~、ずいぶん年季が入ってますね」
私の足裏を見て、スタッフが驚く。

とにかく時間内でできるだけ削ってみましょう。
そう言ってくれたものの
機械で削っていくうちに
見た目以上に大きく、深いことに、改めて驚いたらしい。

「この店にいらっしゃるお客様の中でもトップレベルです」
えーーー!? そんなにひどいですか?
「私が経験した中で一番重症です」
えーーーー!? そこまでぇ???

気がつけば、さっきまでの余裕のある笑顔が消えて
眉間にシワを寄せながら施術している。
気がつけば、他のスタッフまでゾロゾロと集まってきて
口々に、これはすごい!とささやいている。

極めつけはこのひと言。
「レジェンドですね」

へへっ、レジェンドですかぁ?
って、誰が喜ぶか!?

魚の目界のレジェンドだなんて
まったく有り難くない言葉をいただいてしまったものよ。

とりあえず、今度はあきらめずに通ってみることにする。






ケイコ日記ーその18

2018-09-03 00:05:10 | 日記
夫のハルオが衰弱している。

ハルオは今年の春、動脈硬化閉塞症で緊急入院した。
拘縮した足を切断しなければ血流が滞り
命は保障できない!
一時はそこまで宣言された。
どうにか足のある身体で退院したが
その後も誤嚥性肺炎を繰り返し
今、どうにかこうにか命を繋いでいる状態である。

ハルオが死んでしまったら、ケイコはどうなってしまうのか!?
レビー小体型認知症が進み
時には歩き方も、介助バーのつかみ方も
わからなくなってしまったケイコ。
だが、ふと夫であるハルオのことが心配になるのだろう。

「息子はどうしてますか?ご飯は食べていますか?」と
職員に尋ねてくる。
もう何十年も前に亡くなった息子と隣室にいる夫・ハルオが
ゴチャゴチャになっているらしい。

息子さんは亡くなっていますよ。
でも、ご主人ならお隣の部屋でお休みですよ。

そう伝えると
「あ、そうです。そうなんです。
じゃ、主人は隣の部屋で寝ているんですね」と納得する。

しかし、話はそれで終わらない。

息子か夫か知らないが
とにかくケイコにとって最愛の人物が隣室で寝ていると知るや
彼女は“私が世話をしなくては!”
という気持ちになるのだろう。

やや時間を置いてハルオの部屋を尋ねてみると
首から頭に掛けて何枚ものタオルがミイラのようにグルグルと巻かれ
口にはクッキーやチョコレートが詰め込まれている。

ベッドの傍らに佇んでいるケイコが言う。
「この人が寒い寒いって言うんです」
「この人がお腹が空いたって怒るんです。だから…」

ああ、な~るほど。
最愛の人が心配で、やってくれたのね?
しか~しケイコよ
これじゃ、ハルオさん死んじゃうよぉ!!!

命の危険にされているハルオと
精神の危険にさらされているケイコ。

どっちを先に救えばいいのやら…。

トヨこそ地球の救世主

2018-09-01 01:28:41 | 日記
トヨが100万人いたら
世界中からテロや戦争、紛争は消えるだろう。

トヨは去年入居してきた87歳の女性である。
着替えもトイレも自分ででき
食堂が開く10分前には
必ずいつもの席に座っている。

記憶障害はウチでも3本の指に入るが
介護サービスは週2回の入浴介助しか利用していない
実に優秀なアルツハイマーおばあちゃんなのである。

もっとも、ご飯を食べると自分がどこに帰ったらいいのか
わからなくなってしまうので
食堂から居室への移動は私たちがお世話する。

そのとき彼女は決まって職員の腕に手を回し
朝だったら
「今日も一日の幕が開きましたあ」
夜だったら
「今日も一日の幕が下りましたあ」
と、言う。
(朝と夜の違いは、なぜか理解しているらしい)

そして居室への道を歩きながら
彼女はいつも
ほっこりとした笑顔で、歌うように繰り返すのだ。

「あなたたちのお陰で私は生きている。
あ~りが~とさ~ん、あ~りが~とさ~ん!」

どんなにイライラしていても、クサクサしていても
それを聞きながら一緒に歩いていると
す~っと心がほぐれてくる。
そしていつの間にかこちらも一緒に
「あ~りが~とさ~ん、あ~りが~とさ~ん!」

あとで聞いたら、私以外の職員もみんな
同じように「あ~りが~とさ~ん」を唱和し
幸せな気持ちになっているのだという。

愚痴ってばかりの30歳と32歳のメンズ職員が
この間、二人で話をしていた。

「なあ、トヨさんって癒されないか?」
「いやぁ、癒される、癒される」

だよねえ。

まだフサフサしているトヨの髪の毛を少しずつ頂戴して
日本国内に、世界に
ふ―――っ!と息を吹きかけて飛ばそうか。

地球上にトヨのコピーが出現して
憎しみの代わりに愛と感謝と思いやりを
もたらしてくれるに違いない。