食べること、オシッコをすること、
いろんなことがわからなくなってしまったケイコではあるが
自分の失敗をごまかすことに関しては
まさに天才である。
今日も、驚くほどの天才ぶりを見せた。
某宗教団体の幹部であるらしいケイコのところには
今も信者たちが会いにやってくる。
「先生、先生」と慕い、敬うその姿に
この人たちの目にケイコの認知症状は見えていないのか?
この人たちは資産家・ケイコの金を狙っているのか?
と、訝る声も少なくない。
でもきっと、おそらくきっと
そこまで慕われるほどに
かつてのケイコは人格者だったのだろう。
今日やってきたのは
中でも一番ケイコが気に入っていた女性である。
その人が来ると、ケイコは本当に嬉しそうで
だからこそ帰ってしまったあとは寂しさのあまり不穏になり
就寝援助を行うヘルパーを困らせること、しばしばだった。
それほど大切な客人が来た今日。
しかし、悲しいかなケイコは彼女のことがわからない。
「先生、お元気でしたぁ?」
手土産片手に満面の笑顔で近寄ってくる相手に対して
思わず、ケイコの目が泳ぐ。
それでもここは毅然と立ち向かおうという本能からか
ケイコは、わかった振りをする。
「ああ、アナタ、きてくださったのね!?」
しかしながら、相手の名前をどうしても思い出すことができない。
どうする? ケイコ。
そこで発揮する、類まれなるケイコの天才ぶり。
傍らにいた私に向かって、突然、ケイコが言う。
「あ、あなた、この方はとても大切な人なの。
だからあなたも自己紹介してくださらない?」
はあ~? なんで私が?
それに私、この方のこと4年前から存じ上げてますよぉ。
だがそこはプロの介護職員。
初めて会ったかのように、自己紹介させていただく。
それを受けて、私とは十分顔見知りの相手も
「私は○○と申します」と、自己紹介してくださる。
すかさずケイコ
「そーなんです。この方、○○さんて仰るんです!」
誰だかわからなかった客人の名前を言い当てる
天才ケイコの認知症ごまかし術である。
天晴れ!
いろんなことがわからなくなってしまったケイコではあるが
自分の失敗をごまかすことに関しては
まさに天才である。
今日も、驚くほどの天才ぶりを見せた。
某宗教団体の幹部であるらしいケイコのところには
今も信者たちが会いにやってくる。
「先生、先生」と慕い、敬うその姿に
この人たちの目にケイコの認知症状は見えていないのか?
この人たちは資産家・ケイコの金を狙っているのか?
と、訝る声も少なくない。
でもきっと、おそらくきっと
そこまで慕われるほどに
かつてのケイコは人格者だったのだろう。
今日やってきたのは
中でも一番ケイコが気に入っていた女性である。
その人が来ると、ケイコは本当に嬉しそうで
だからこそ帰ってしまったあとは寂しさのあまり不穏になり
就寝援助を行うヘルパーを困らせること、しばしばだった。
それほど大切な客人が来た今日。
しかし、悲しいかなケイコは彼女のことがわからない。
「先生、お元気でしたぁ?」
手土産片手に満面の笑顔で近寄ってくる相手に対して
思わず、ケイコの目が泳ぐ。
それでもここは毅然と立ち向かおうという本能からか
ケイコは、わかった振りをする。
「ああ、アナタ、きてくださったのね!?」
しかしながら、相手の名前をどうしても思い出すことができない。
どうする? ケイコ。
そこで発揮する、類まれなるケイコの天才ぶり。
傍らにいた私に向かって、突然、ケイコが言う。
「あ、あなた、この方はとても大切な人なの。
だからあなたも自己紹介してくださらない?」
はあ~? なんで私が?
それに私、この方のこと4年前から存じ上げてますよぉ。
だがそこはプロの介護職員。
初めて会ったかのように、自己紹介させていただく。
それを受けて、私とは十分顔見知りの相手も
「私は○○と申します」と、自己紹介してくださる。
すかさずケイコ
「そーなんです。この方、○○さんて仰るんです!」
誰だかわからなかった客人の名前を言い当てる
天才ケイコの認知症ごまかし術である。
天晴れ!