旅先で出会う人々は
なんであんなにやさしいんだろう。
いや、向こうからすれば普通の
極当たり前の対応をしているだけなんだろうが
家を離れて見知らぬ土地を旅しているこちらからすると
道を教えてくれただけで
やさしい人だわぁ!と感激してしまう。
10代の頃に一人旅をしたときも
港で空を舞う鳥の名前を尋ねたら
「あれはとんびだよ」と、教えてくれたおじさんがいた。
初めての一人旅で実はちょいと心細かった私。
おじさんについていきたいくらい
心が温かくなったのを覚えている。
そして今回の旅。
実は、甑島に渡る港のどこかでスマホを落としてしまった。
気がついたのは船が出港してまもなくのこと。
引き返すわけにはいかない。
船の中で、おっさんが港付近の駅と交番に電話してくれた。
どちらにも届出はなかったが
交番のおまわりさんは
見つかったらすぐに電話をくれるという。
あっちゃ~!と思ったが
落ち込んでいたら一緒に旅するおっさんに申し訳ない。
それに
おっちょこちょいの女房を責めることなく
冷静に駅や交番に電話してくれたおっさんが
なんとも頼もしい。
以前だったら「何やってんだよ!?」となじっただろうに
おっさん、ホントに穏やかな人になったもんだ。
その後スマホの話は一切せぬまま、昼前に島に到着。
レンタカーで島内をドライブしていたら
おまわりさんから電話があって
スマホが見つかったから預かっておいてくれるという。
なんとラッキーなことか。
心が軽くなった分、島巡りも楽しい。
度々車を止めては、二人で写真を取りまくった。
(もちろん、おっさんのスマホで)
そのときである。
建設作業員らしいおじさんから声を掛けられた。
「こんにちは~。携帯は見つかりましたか~?」
へ、なんで知ってんの?
「実は同じ船に乗ってたんですよ。
ご主人が警察に電話してるの聞いて
大変だなあ、気の毒だなあと思ってたんです。
そうですか、見つかってよかった、よかった」
その後ももう一人
やはり同じ船に乗っていて
私のスマホ紛失を心配してくれていた人と出会う。
静かな船中でおっさんが電話をしていたから
私の不始末、みんなに筒抜けだったのね。
お恥ずかしい…。
それにしても、みんな、なんてやさしい。
自分のおっちょこちょいから引き起こした事件を
田舎の人々のやさしさに摩り替えてブログを書く私。
旅をしても
温かい人に出会っても
私の身勝手さは変わらない。