荻伏共同育成場日誌

北海道浦河町にある競走馬育成牧場・荻伏共同育成場の場長が日々の風景をお届けする徒然日誌。

『先週の注目馬』ダノンスコーピオン

2021-06-26 05:54:02 | 競馬
すっかり遅くなってしまいましたが、一度やめるとその後書かなくなってしまうので継続するためにも書かせていただきます。
 圧巻のスピードを披露した快速馬か、辛勝した評判馬か。どちらを取り上げるか迷いました。辛勝ながら後々考えると相手が強かっただけというケースは、パッと思い浮かぶものだけでもアドマイヤマーズに対するケイデンスコール、ワグネリアンに対するヘンリーバローズがあります。
 先週の日曜日阪神5レース(芝1600m)では評判馬ダノンスコーピオンが単勝1.3倍という一本化ぶりの人気。
 レースでは前後半の半マイルのタイム差が4秒近くもあるという超スローペース。ダノンスコーピオンは先団を見る形でじっくりレースを進め、4コーナーでは射程圏内。ところが2番手につけていたルージュラテールが抜け出し先頭に立つと脚色が全く衰えず、残り200mでは粘り込み濃厚の気配でしたが、最後に猛然と追い込んだダノンスコーピオンが頸さ差し切りました。勝ちタイムは1.38.7。3着コナブラックは3馬身差、4着馬には更に8馬身ついていることを考えると、ルージュラテールが予想以上に強かったと考えています。

 父ロードカナロアは名スプリンターですが、アーモンドアイのように距離をこなす馬もいますが、ダノンスマッシュのように自身と同じ短い距離を主戦場とする馬もいます。母レキシールーはカナダの年度代表馬にもなった名牝でカナダの牝馬三冠『ウッドバインオースク』『ワンダーウェアS』だけでなく、牡馬三冠の『クイーンズプレート』に勝っています。母系はバリバリのカナダ血統で活躍馬を見つけられませんでした。母の父スライゴベイ Sligo Bay は2歳時アイルランドを本拠地としていましたが、その後トレードされアメリカで活躍し『ハリウッドターフカップ』を勝っています。父サドラーズウェルズ、母がグローリアスソングやデヴィルズバッグの全妹という良血を買われ種牡馬となった馬です。

 レース未見の方はJRAのHPで見られるのでチェックしておいてくださいね。

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先週の注目馬『セリフォス』

2021-06-14 21:18:28 | 競馬
 2015年を除き、2010年以来2歳リーディングサイヤーを獲得し続けているディープインパクト。その2015年ディープインパクトにストップをかけたのがダイワメジャー。2歳戦の中でも新馬戦は非常に強い印象があります。アドマイヤマーズやメジャーエンブレムのように後々も活躍する馬もいれば、クライムメジャーのようにとんでもない大物だと思っていたのにそこそこで頭打ちしてしまう(と言っても現役ですし、オープンまで行きましたが)馬もいます。

 土曜日・中京5レース(芝1600m)で1番人気に推されたセリフォスは、ダイワメジャー産駒らしい雄大な馬体でパドックでも目立っていました。
 レースでは、前後半4ハロンのタイム差が2.8秒もある超スローペースのせいで、先団が目まぐるしく入れ替わる落ち着かない展開。セリフォスも揉まれる展開で掛かり気味に2番手に。直線に入ったところで先頭に立ちますが、外からベルクレスタ、さらに外からトゥードジボンが襲い掛かります。しかし、詰められてからもうひと伸びみせ、逆に1馬身半の差をつけ快勝。勝ちタイムは1.35.0。

 父ダイワメジャーはマイル・中距離G1を5勝した名馬であり、中央競馬のG1勝ち馬を6頭排出する名種牡馬でもありますが、サンデーサイレンスのスピード系種牡馬として系譜をつなぐ意味でも、もう少し後継種牡馬が欲しいところです。母シーフロントは『モーリス・ジルベール賞』という芝1600mのリステッド競走を勝っていますが重賞では少し足りなかったようです。近親には『パシフィック・クラシックS』を勝ったゴービトウィーン Go Between がおり、遡ると日欧で活躍馬を出したイエローゴッドと同系です。母の父ルアーブル Le Havre は『ジョッケクルブ賞(仏ダービー)』の勝ち馬で貴重なブラッシンググルーム系の種牡馬です。
 セリフォスが大物の道を歩むのか、新馬戦だけの輝きなのか、注目したいダイワメジャー産駒です。

 レース未見の方はJRAのHPで見られるのでチェックしておいてくださいね。

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今週の注目馬『コマンドライン』

2021-06-07 17:18:05 | 競馬
『東京優駿』が終わり、新しい世代が来年のクラシックに向けて動き始め、5頭の馬が勝ち名乗りをあげました。単勝1.1倍の馬を注目馬にするのはいささか恥ずかしさもありますが、仕上がりの良さを生かして勝ち上がった馬が多い中、スケールの大きさを感じさせるこの馬をあげないわけにはいきませんでした。

土曜日東京5レースの新馬戦(芝1600m)。コマンドラインは上述の通り単勝1.1倍。この馬以外にもなかなか素質がありそうな馬も多く、被り過ぎの印象を受けましたが、パドックではなるほど大物感を漂わせていました。レースでは好発から、前半1000mが1.00.8というペースの4番手をややかかり気味に追走。直線に入った段階では幾らかもたつき、逃げるコンクパールの脚色が衰えないので逃げ切りもあるかと思わせましたが、それも一瞬。ステッキが入ると一気に加速し抜き去ると、逆に3馬身突き放して快勝しました。勝ちタイムは1.35.4。

父はディープインパクト。もうひと世代残されていますが、産駒数を考えるとこの世代が大活躍を見込める最後の世代と言っても過言ではないかもしれません。
母コンドコマンドはアメリカの2歳G1『スピナウェイS』など5勝。快足を飛ばす逃げ馬で、弱い相手にぶっちぎり、強い相手には完敗する競走成績でした。繁殖としては『マイラーズC』など重賞2着が3回もあるアルジャンナを輩出しております。祖母イヤーリーリポート Yearly Report も『デラウェアオークス(G2)』など重賞3勝の名牝ですが、この馬の近親に活躍馬がおらず、遡るとラムタラ Lammtarra やヘクタープロテクター Hector Protectorを輩出したロイヤルスタチュート Royal Statute の系統です。

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