荻伏共同育成場日誌

北海道浦河町にある競走馬育成牧場・荻伏共同育成場の場長が日々の風景をお届けする徒然日誌。

先週の注目新馬「ポルトフォイユ」

2015-06-30 08:42:02 | 競馬
 またまた面白みのない注目馬で申し訳ありませんが、レース内容や血統背景を考えると、28日阪神5レースのメイクデビュー(芝1800m)で勝ち上がったポルトフォイユを上げざるを得ません。ウインクレドがつくる1000m通過が59.2秒というこの日の馬場を考えるとかなりのハイペースを先頭から15馬身ぐらい後方の4番手で追走。3~4角中間から進出し、直線では逃げ馬がフラフラしていて行き場に迷う面も見られましたが、地力の違いで抜け出し2着に5馬身差の圧勝でした。勝ち時計は1.50.0。先団につけられるレースセンスとスピード、このハイペースで抜け出せるスタミナとパワーは現在デビューしている馬の中では最高レベルではないでしょうか。父ディープインパクト、母はポルトフィーノ、全兄に『京都新聞杯』『きさらぎ賞』ともに2着のポルトドートフィユ。祖母は年度代表馬エアグルーヴ、伯母にエリザベス女王杯2連覇のアドマイヤグルーヴ、叔父に香港G1『クイーンエリザベス2世C』を勝ったルーラーシップがいる超がつく良血馬。安平町・ノーザンファームの生産馬です。無事に行けば来年のクラシックに出走してきそうな1頭で、注目していきたいと思います。

同業者の方やこの職に興味がある方はコメントくださいね。

ゴールドシップのゲート内での出来事についての一考察

2015-06-30 07:50:36 | 日記
第56回『宝塚記念』で大本命ゴールドシップがゲート内で立ち上がり大きく出遅れたことは本当に残念な出来事でした。『天皇賞(春)』での枠入り不良、ゲート再審査からの先入れは当然のことであり、ギリギリまで厩務員が枠内にいてなだめており、そのときは問題なさそうにも見えました。しかし、ゲート入りが完了し発走直前と同時に立ち上がり、着地したところでゲートが開けられたものの、もう一度立ち上がり大きく出遅れ、結果的に大敗しました。

【原因】
 横山典騎手は「分からない」とコメントしております。実際のところはゴールドシップ自身しか分からないと思いますが、いくつか検証したいと思います。
まずは先入れ。上述の通り、前走枠入り不良だったので先入れは当然です。そして、次回も確実に先入れです。これを破れば競馬の公平性は失われます。なぜなら枠入りを待たされる馬は自分に非がないにもかかわらず不利な状況に置かれてしまうからです。ゴールドシップは自らの枠入り不良という行為によって先入れになったわけです。さて、先入れは影響があったのかと言えば、大なり小なりあったと思います。本当に狭いのですよ、ゲートって。ゲートが良くない馬にとってみれば苦痛だと思います。
次に隣枠のトーホウジャッカルがチャカついたこと。上述の通り、ゲートはとても狭く、隣の馬はかなり近くにいます。パドックで尾にリボンをして最後方を歩かせているように、ゴールドシップは他の馬が近くにいるとテンションが高くなると推察されます。近くにいるだけでテンションが上がるのに暴れられたら、さらにテンションが上がると考えられます。
逆になぜ発走直前まで大人しくしていたのか考えると、まずは厩務員がついていたからということと、もう一つはテンションが上がっていなかったことが上げられます。隣枠で暴れたこともありますが、それだけではなく枠入りが完了し騎手が手綱を詰め重心を移動すると馬は出走態勢に入り気合も入ってきます。それがゴールドシップの場合過度の気合いになってしまった可能性があります。1998年の同じく『宝塚記念』でメジロブライトも立ち上がり脚をひっかけてしまったように、テンションが上がりすぎると馬は立ち上がるという行為によって発散する方法を求めることがあります。

【対応策】
 今後、発走再審査が行われ無事通過すれば、秋のG1戦線に出てくるでしょう。但し、須貝調教師も仰っているように、トレセンでの練習は全く問題ないとのこと。実際、本当にゲートが嫌いな馬はメンコをかぶせても枠入りを嫌がります。
今回のことでよく引き合いに出されているのが2000年『皐月賞』でのラガーレグルスです。その前々走『共同通信杯』でとんでもない出遅れをしたものの前走の『弥生賞』では問題なかったラガーレグルス。しかし『皐月賞』ではゲートが開くと同時にひっくり返り競走中止。ラガーレグルスもトレセンでのゲート試験は問題ないタイプで、実際通過したのですが、JRAは『東京優駿』で同じような事態が起こらないために実際の競馬場で発走再審査を行いました。京都競馬場での1回目はクリア。2回目の東京競馬場でも外枠のときはクリア。しかし、1枠に入れた時、ラガーレグルスは『皐月賞』と同じことをしてしまいました。その場に立ち合わせた人は観客の中に傘で柵を叩いた人がいたとか。それの善し悪しはさておき、このような形での発走再審査をゴールドシップに行うかどうかです。それは関係者である人たちの声ではなく、馬券を購入してくださるみなさんの声が反映されるべきではないかと思います。「このようなキャラだからあのように出遅れたとしても仕方ない」と考える人が多いならば、このような厳しい処置は必要ないでしょう。逆に「多額の金銭を無駄にしているのだから納得のいく再審査をクリアしてからにしてほしい」と考える人が多いならば、競馬場での再審査も考慮に入れるべきでしょう。

【総括】
これは自身の考えで批判される方もいらっしゃるかもしれませんが、スターターも横山典騎手も須貝調教師も非はないと考えております。スターターは脚が接地したことを見計らって開けています。もう1回立ち上がることは想定外だったでしょうし、新聞等で報じられている通り、横山騎手から開けてよいとのサインもあったと思われます。その横山典騎手ですが、あの状況では脚をひっかけずに制御することが精一杯だったと思います。スタートやり直しを指摘する人もいらっしゃいますが、あの状況で後ろ扉を開けられるのは、乗っている人間からすると余計に大きな惨事を招くのではと考えざるを得ません。管理する調教師の責任を問う声もありますが、上述の通りトレセンではやらないのですから、対策は競馬場でやる以外他ありません。余談になりますが某種牡馬産駒はトレセンにおいてゲート入りが非常に悪いらしく、管理する調教師は口々に″こちらでしっかりやっておいてくれ″と言われるのですが、育成場ではそんな素振りさえ見せないので対策の取りようがありません。
長々と検証してまいりましたが、結論としては今回の件に関してファンの皆様がどのように思っているのかが最も重要であり、それに対して主催者であるJRAがどのように対処するのかという結論以外ないと思われます。ファンの皆様には多様な意見があると思われますが、その中で最も支持されている意見は何なのか集約し、それを実行するのが主催者としての役割ではないでしょうか。

先週の重賞分析『宝塚記念』

2015-06-29 08:25:19 | 競馬
 上半期の総決算、阪神競馬場で行われた第56回『宝塚記念』(G1・芝2200m)は単勝1.9倍大本命ゴールドシップがまさかの大きな出遅れによって、スタートから波乱の展開となりました。典型的な逃げ馬がいない中、レッドディヴィスが押し出されるようにハナに立ち、1000m通過が1.02.5という昨年同様緩い流れに。2番手につけたラブリーデイは直線半ばで抜け出し、後続の追撃を凌いでG1初制覇を成し遂げました。勝ち時計は2.14.4。自在性が持ち味ですが、展望でもご紹介した通り今年負けた2戦はいずれもゴールドシップと歩調を合わせる形で仕掛け潰されてしまったもの。今回は外から被せてこられるだけの馬はおらず、川田騎手が馬の力を信じて自分のレースに徹したことが勝因と言えるでしょう。父キングカメハメハ、母ポップコーンジャズという血統。安平町・ノーザンファームの生産馬です。
 大外強襲の2着はデニムアンドルビー。テンから決め打ちの後方待機。スローペースも織り込み済みだったでしょうが、騒がず慌てず直線勝負。1頭だけ別次元の末脚で猛然と追い込んできましたが僅かに届かず、悲願のG1制覇はなりませんでした。
 3着は最内から脚を伸ばしたショウナンパンドラ。調教で出来の良さが際立っており、ロスのない競馬も好走につながったのだと思われます。
 4着は休み明けのトーホウジャッカル。中団外目を追走し掛かり気味にも見えましたが、4角では勝つのではという勢い。直線半ばで失速しましたが実力があるところは見せられました。順調に使えれば楽しみな1頭です。
 5着は3番人気のヌーヴァレコルト。中団から正攻法の競馬でしたが伸びきれませんでした。距離や馬場云々よりもいい時の出来にないのではないでしょうか。
 2番人気のラキシスは8着。調教も良く出来は良さそうでしたし、馬場や距離は問題ないはずで、確かに後方から行きすぎという感じもありましたが、3角でペースアップしたとき手が動いていたように良いところが全くありませんでした。敗因は分かりませんが巻き返しに期待したいですね。
 ゴールドシップの出遅れについては別記事で書かせていただきますが、後味の悪いレースになってしまったのは残念ですね。

今日の育成馬~6/28結果~

2015-06-28 16:24:39 | 競馬
【今日の出走馬】
―東京―
3R ラヴァーズデイ 6着
9R ナンヨーテンプル 6着

―阪神―
1R カネトシスキーム 10着
3R メイショウショウキ 14着

―函館―
6R メイショウアルバ 16着

今週は散々な結果ですね。
来週からまた出直しです。

同業者の方やこの職に興味がある方はコメントくださいね。

『宝塚記念』に関する一考察

2015-06-28 07:33:02 | 競馬
 第56回『宝塚記念』が今日行われます。ゴールドシップの三連覇なるかが最大の焦点ですが、過去2年と比較してもメンバー的には組み易く、皆さんもそう思われているようで前日オッズは1.9倍と一本被りです。阪神競馬場の戦績は7戦6勝2着1回と準パーフェクト。苦手な瞬発力勝負になりそうもない時計のかかる馬場もあいそうですし、調教も悪くありません。

 他の馬の調教ですが人気馬ではラキシス、他ではショウナンパンドラレッドデイヴィスディアデラマドレが良く見えました。他はちょっと…。

 展開を見てみましょう。まず逃げ馬がいません。ネオブラックダイヤカレンミロティックあたりが行くと思われますが、勝負師武豊騎手が枠を利してトーセンスターダムを逃走させないとも限りません。どの馬がハナを切るにしてもゴールドシップお得意の3~4角中間からの捲りをされると先行勢は厳しくなります。これをさせないためには2200mを1000mのレースにしてしまう、クシロキングが勝った『天皇賞』(古い)ようなレースが求められます。昨年も1000m通過は1.02.5と遅いのですが、これよりもさらに緩いペースで逃げてゴールドシップが来る前に一気にペースを上げ、4コーナーでリードを保てていれば可能性がないわけではありません。但し、横山典騎手なので緩いペースならば向正面から仕掛けてくることも考えられ、そうなれば万事休すです。ラキシス、ヌーヴァレコルトなど人気となっている牝馬はゴールドシップのロングスパートに付き合わないことが勝利へのカギとなりそうです。できれば先団に位置し、外から捲ってきても我慢して、直線に入ってから瞬発力にかけるしかないのではないでしょうか。2頭の4歳牡馬G1馬ワンアンドオンリートーホウジャッカルはゴールドシップと同型のロングスパートタイプ。調教がいまいちなのはいつもなのであまり気にしなくても良いのかもしれませんが、海外帰りと蹄とはいえ故障休み明け。能力が未知数のトーホウジャッカルは魅力的ですが初めての休み明けというのも気になります。ステップレース『鳴尾記念』を勝ったラブリーデイは今年負けた2戦は2戦ともゴールドシップの捲りにやられたもので今回その天敵が出てきます。2戦ともゴールドシップに合わせて仕掛けているので、自分のレースに徹したほうがチャンスはありそうです。後方から行くと思われるショウナンパンドラやデニムアンドルビー、それにディアデラマドレも自分の競馬に徹して展開の助けを借りるしかないでしょう。下手にロングスパートに付き合えばつぶれるだけです。今上げなかった4頭は実力的に苦しいと思います。

 いずれにしてもゴールドシップが中心となるこのレース。発走は15:40です。