荻伏共同育成場日誌

北海道浦河町にある競走馬育成牧場・荻伏共同育成場の場長が日々の風景をお届けする徒然日誌。

今週の注目馬「クインズサターン」

2016-05-31 17:51:18 | 競馬
 来週末米三冠最終戦『ベルモントS』が行われ日本からラニが参戦します。三冠の中で最も向いていると戦前から思っていたレースなので期待しておりますが、そのラニを含め今年の3歳ダート戦線はレベルが高く特に『ヒヤシンスS』の上位6頭はかなりのハイレベルだと思います。そのハイレベル戦線に入っていける新星が現れました。29日日曜日東京5R3歳500万下(ダート1600m)でクインズサターンは好発から先団やや後ろを追走し直線ジワジワあがっていくと残り200mから一気に加速。後続をあっという間に5馬身突き放し圧勝しました。勝ち時計1.36.8。
 父パイロ、母ケイアイベローナ、母の父サンデーサイレンス、3代母に『マイルCS』勝ち馬シンコウラヴリィがいる血統。
 レース未見の方はJRAのHPで見れるのでチェックしておいてくださいね。

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先週の育成馬(2016/5/28,29)

2016-05-31 17:26:06 | 競馬
【5月28日】
-京都-
1R アグネスソワレ 16着
11R メイショウハガクレ 18着

-東京―
7R ナンヨーアイリッド 12着

【5月29日】
-京都-
1R メイショウバッハ 7着
3R マダムアルディ 16着
5R ワンダーリーデル 5着
10R シンデレラボーイ 4着
   ケントオー 8着
12R トウケイウイン 1着

土曜日は散々でしたが京都12レース『與杼特別』でトウケイウインが3勝目をマークしてくれました。ワンダーリーデルは相手が強すぎましたがそのうちチャンスが回ってきそう。メイショウバッハは大幅な変わり身を見せたので今後に期待です。


2歳4月時のトウケイウイン

カネヒキリの死亡事故についての考察

2016-05-30 04:51:52 | 仕事
27日ダート界に偉大な足跡を残した名馬カネヒキリが種付け中の事故によって死亡しました。色々情報が流れていますが、種付けに入ろうとしたとき繁殖牝馬によって竿を蹴られ尿が出せなくなり膀胱破裂で死亡という情報が自分の方には入っていますが真偽は不明です。

 事故の要因を考える前に簡単な繁殖についての流れを紹介したいと思います。繁殖経験は3年しかなくもう12年も前のことですから記憶違いがあるかもしれませんが参考までに。
 繁殖牝馬はいつでも種付けできるわけではありません。通常黄体期と発情期が周期的に入れ替わり発情期の最後に排卵するのですが、その排卵前に種付けを行います。精子は約2日間もつので排卵前日につけるのが良いのでしょうが都合よく排卵してくれない場合もあるので、種付け後に排卵促進剤をうつことが一般的です。
 それではどのように排卵時期を見極めるのか申し上げると、その年に分娩(お産)をした繁殖は分娩後1週間程度で初回発情と呼ばれる排卵があり、そこで種付けをする場合もありますが、お産後すぐということで子宮の状態が悪い時があり総研(JRA総合研究所)は2回目以降の発情を推奨しています。初回発情が終わり黄体期に入るのですが黄体期は繁殖によって周期が異なるため(確か14日くらい)、生産牧場の多くはそれまで繁殖がどのように繁殖経過を送ってきたかを繁殖台帳(お産台帳)と呼ばれるものにつけており、それに基づいて発情期が来たかどうかを観察。多くの牧場は詩情馬みなさんが知るところの当て馬を養っており、繁殖を近づけて発情がきているかどうか確かめます。
 発情期に入ると洗浄場やもしくは牧場に来てもらう形で獣医に子宮や卵子の状態を手を直接入れてもらうことによって診てもらいます。これが直腸検査略して直検で卵の成長や子宮の柔らかさなどから排卵するタイミングを判断してもらいます。ここでやっかいなのが排卵寸前の卵の大きさも繁殖によってかなりの個体差があるため、それまでの繁殖経過が重要になってきます。

 さて本題です。
 通常良い発情がきている場合繁殖牝馬が種馬を蹴るという行為は見られません。ではどうして繁殖牝馬は蹴るという行為に至ったのか。

・元々癖が悪い繁殖だった。
・上がり馬だった。
・良い発情が来ていなかった。

 繁殖の中でも癖が悪い馬はいます。以前の種付けでトラウマがあり種付けそのものが嫌いで暴れる馬は少数ですが扱ったことがあります。そのような場合は種馬場のスタッフにその旨を伝えることで事故は回避できます。
 上がり馬つまり競走生活を終えるなどして初めての種付けに臨む繁殖ですが、これまでの傾向も分からずなおかつ繁殖自身も初めての経験で恐怖から暴れる繁殖は少なくありません。ですから初めての種付けは比較的上手な種馬につけるようにする牧場が多いと思います。上手な種馬とは
・静かに入ってくる。
・慎重にやさしく乗る。
・乗るまでに時間をかけすぎない。
で下手な馬はこれをすべて逆にした種馬です。
 発情にも良い悪いがあります。詩情馬につけてもあまり発情兆候を見せない繁殖はいて、そのような場合良い発情ではなくても種付けしてしまうケースは少なくありません。種馬場にいる詩情馬の前へ持っていき発情兆候を見せるかどうか判断しますが中には蹴る馬などもいます。そのような場合種馬場の獣医が直検し子宮の状態を確認し種付けの可否を判断しますが牧場で獣医のゴーサインが出てきている繁殖ばかりですから大方通ります。

 このような繁殖牝馬がいることを想定して種馬場の中には対策を講じているところもあります。トップサイヤーが集まる社台スタリオンでは防具であり実際に挿入できないようになっている前掛けをつけた当て馬が実際に乗っかる寸前まで行きます。こうすることで種馬場のスタッフは発情しているかどうかということと主ともに繁殖牝馬の特徴を把握することができるわけです。世界の名馬が集まる日本軽種馬協会は“けばり”と呼ばれる(注:検索しても出てこないので違うかもしれません)全身固定具をつけて繁殖の動きを封じます。一見可哀想にも見えますが協会主催の後継者研修という場で「世界から名馬を売ってもらうためには万が一も許されないんです」と中西場長が仰っておられたのが思い出されます。

 今回は種馬場での事故でしたが他山の石と思わず、日々馬の状態は変化し、僅かな兆候を見逃さないような万全の対策を講じる必要性を肝に銘じさせられる事案でした。


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『東京優駿』の結果分析

2016-05-29 17:48:14 | 競馬
 群雄割拠、史上最高のメンバーが集結したと戦前から前評判が高かった第83回『東京優駿』(G1・東京芝2400m)。1番人気はハイレベルな『皐月賞』を圧巻の末脚で制したディーマジェスティで3.5倍。2番人気は『皐月賞』では一敗地に塗れたものの自在性が魅力のサトノダイヤモンドで3.8倍。3番人気は『皐月賞』を最速の上がりで追い込み2着になったマカヒキで4.0倍。4番人気は折り合いに不安はあるものの能力の高さは疑いようもない2歳王者リオンディーズで5.5倍。10倍以下はここまでで以下『毎日胚』『京都新聞杯』と重賞連勝中のスマートオーディン、『青葉賞』快勝のヴァンキッシュラン、強敵相手に負け続けているものの名手・武豊騎手を背に逆転を狙うエアスピネルと続きました。

 レースでは大方の予想通りマイネルハニーが単騎逃げ。有力どころではエアスピネルが5番手で、それを見る形でサトノダイヤモンド、マカヒキ、ディーマジェスティがひとかたまり。リオンディーズは1コーナーまでに頸を上げてかかりなだめるために後方2番手から。1000m通過は1.00.0ジャストの平均ペース。息を入れるためにペースが落ちるとアグネスフォルテがかかり先頭に並びかけたため再びペースが上がります。4コーナーを回り直線に入るとエアスピネルが早めに先頭に並びかけるものの外からサトノダイヤモンドが交わしにかかります。その2頭が壁になってマカヒキは出れず、ディーマジェスティは外に持ち出し、リオンディーズは真ん中をつきます。サトノダイヤモンドがわずかに膨らんだところをマカヒキが間を割って入り、残り100mでエアスピネルは力尽きます。外に膨らんだサトノダイヤモンドのあおりを受けディーマジェスティは大外へ。サトノダイヤモンドとマカヒキの激しい追い比べにディーマジェスティが強襲するものの届きません。2頭は鼻面を合わせたまま決勝線。写真判定の結果マカヒキがハナだけ競り勝っていました。勝ち時計は2.24.0。今週からCコース使用で外差しが全く決まらないレースが続いており川田騎手はこれまでのマカヒキの戦法である大外強襲をやめ馬群を割る戦法を選択しました。前が壁になった時は肝を冷やしましたが落ち着いて捌いたファインプレーでもあり、それに答えた馬のすごさでもあります。『凱旋門賞』に挑戦するというプランもあるようで今後がますます楽しみです。最後は屈したもののサトノダイヤモンドも力をあるところを見せました。レースが上手でルメール騎手も完ぺきな騎乗でしたが本当に惜しいなレースでした。3着のディーマジェスティは逆に伸びない大外で伸びてきてまさに負けて強しの内容でした。4着エアスピネルはこれもまた武豊騎手が素晴らしい騎乗を見せてくれましたが決め手と距離適性の差が出た感じです。5着リオンディーズは外の方の枠(12番)を引いた時点で前が壁にできずかかるのではないかという不安が的中。ある意味1コーナーで勝負が決した印象で能力は高いもののあれだけかかると位置取りを下げるか逃げるかしかなくなり、追い込んできたものの届く気配はありませんでした。

 勝ったマカヒキは父ディープインパクト、母ウィキウィキ、母の父フレンチデピュティ、全姉に『京都牝馬S』など重賞2勝のウリウリがいるという血統。安平町ノーザンファームの生産馬で馬主は金子真人ホールディングス。

 それにしても着順こそ違えど掲示板に乗った馬は『皐月賞』と全く同じという結果。ハイレベルなメンバーが見せたハイレベルなダービーを堪能できました。路線は分かれるかもしれませんが、秋もハイレベルな戦いを見せてほしいですね。

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今週の出走馬(2016/5/28,29)

2016-05-28 04:29:09 | 競馬
【5月28日】
-京都-
1R アグネスソワレ
11R メイショウハガクレ

-東京―
7R ナンヨーアイリッド

【5月29日】
-京都-
1R メイショウバッハ
3R マダムアルディ
5R ワンダーリーデル
10R ケントオー
   シンデレラボーイ
12R トウケイウィン

前走2着のナンヨーアイリッドは勝ちたいですね。『安土城S』の2頭も好勝負を期待したいですね。トウケイウィン、ワンダーリーデルも走破圏内。他はちょっと厳しいかもです。

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