フィトケミカルは生物活性化合物であり、植物の成長と生存に大切な役割を果たします。つまり植物の世界を守るために存在するものですが、近年、その成分が私たちの体に悪さをする活性酸素の害を除去する手助けをし、人の免疫機能の働きに大きく役立つものであることがわかってきました。そこで今回は、フィトケミカルの種類、その働き、摂取のしかたについてお伝えしたいと思います。
野菜や果物に含まれる膨大な種類のフィトケミカル
フィトケミカルという言葉を知らない人でも、赤ワインに含まれるポリフェノールや大豆のイソフラボンは聞いたことがあるのではないでしょうか。これらの成分がフィトケミカルで、私たちが主に野菜や果物の色や香り、苦味として感じているものです。現在1000種類くらいが見つかっていますが、未発見のものも多く1万種類くらいあると考えられています。これらはポリフェノール、含硫化合物、脂質関連物質(カロテノイド類)、糖関連物質、アミノ酸関連物質、香気成分の6系統に大きく分類されます。
抗酸化、免疫増強、がん抑制の作用
赤ワイン、黒豆、ブルーベリー、大豆、ごまなどはポリフェノールが含まれており強力な抗酸化作用があります。きのこ類に含まれるβ-グルカン、キャベツや小松菜などのアブラナ科野菜に含まれるイソチオシアネートは免疫細胞の数を増やし、働きを活性化する作用があり、活性酸素による細胞障害や遺伝子の損傷を防いで老化、成人病、がんを抑制することが明らかになっています。フィトケミカルの一例をわずかですが以下に挙げてみます。
イソフラボン(ポリフェノール):大豆、大豆加工品 /骨粗鬆症予防、乳がん予防、更年期障害改善
アントシアニン(ポリフェノール):ぶどう、黒豆、黒米、ブルーベリー /動脈硬化予防、抗酸化作用
クルクミン(ポリフェノール):うこん /肝機能向上、抗酸化作用
リコピン(脂質関連物質):トマト、スイカ /抗酸化化作用 ※抗酸化力はβ-カロテンの2倍以上、ビタミンEの約100倍ともいわれる
サポニン(糖関連物質):大豆、小豆、黒豆、高麗人参 /コレステロール低下、抗酸化作用
β-グルカン(糖関連物質) :きのこ類 /免疫力向上
フコイダン(糖関連物質):めかぶ、もずく、こんぶなどの海藻類 /免疫力向上
リモネン(香気成分):レモン、ゆずなどの柑橘類 /抗酸化作用、抗アレルギー作用
セサミノール(ポリフェノール):ごま /動脈硬化予防、抗酸化作用
イソチオシアネート(含硫化合物):小松菜、青梗菜、キャベツ、ケール、ルッコラ、ブロッコリーなど /抗酸化作用、解毒作用、がん予防
アリシン(含硫化合物):ねぎ、にら、にんにくなど /抗酸化作用、動脈硬化予防
フィトケミカルパワーを野菜や果物などから効果的に摂取する
フィトケミカルは植物で作られ、動物性食品に含まれる量はごくわずかで加工食品には含まれません。人体で生成することができないため、野菜や果物を食べることで供給する必要があります。また効果的に摂取するには摂り方にも工夫が必要です。
いろいろな種類を組み合わせて摂る
こうした成分は単独で大量に摂取するよりも、少なくても他成分との組み合わせで摂ったほうが高い効果を発揮します。
サプリメントではなく食事で摂る
野菜や果物から成分を抽出してサプリメントで摂っても、生体防護効果は食品に含まれる何百もの有効成分を組み合わせて摂るのと比較すると劣ってしまいます。また太陽をしっかりと浴びて育った野菜や果物の方が豊富に含まれます。露地栽培された旬の野菜をしっかりといただくのが良いでしょう。
加熱して摂る
フィトケミカルは植物の細胞や細胞膜の中にあり、細胞膜を破壊しないと体に吸収できません。食材によっては包丁で細かく刻んだり、ミキサーで破砕した程度では細胞膜は壊れないため、調理法によって効果的に摂取することが必要になります。ある一定時間煮炊きした煮汁にはその効力の8~9割が溶出するとされ、実際、生野菜ジュースに比べ煮炊きした野菜スープの方が活性酸素消去活性が10~100倍も強力であることが研究によって報告されています。またトマトのリコピンなどは皮の部分に多く含まれ、油に溶けやすい性質があるため、油を加えて加熱すると吸収されやすくなります。ただし野菜にはビタミンCや酵素など加熱して損なわれる栄養素、成分もあるため、生食や火食などいろいろな調理法を組み合わせて摂ることも大事でしょう。
私たちの健康は大地に育つ植物の質、健全性に大きく依存します。なぜならこの自然の植物に含まれる何百種類というフィトケミカルが私たちの体を守ってくれるからです。ぜひフィトケミカル豊富な食生活で健康な体作りをめざしてください。
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