みなさま、こんにちは
胚培養士は毎日たくさんの受精卵を観察しています。患者様お一人おひとりの性格や個性に違いがあるように、受精卵にもそれぞれ個性があります。今回のラボ通信では、そんな個性がよく出る【透明帯(卵子の殻)】についてお話します。
透明帯の厚さ
受精卵には、透明帯が厚いものや薄いものがあります。採卵したすべての卵子の透明帯が分厚い人、すべて薄い人、混ざっている人など、患者様によって違いがあります。
透明帯が厚い受精卵は、孵化ができるかどうかが心配になってきます。当院では移植時に患者様に透明帯の厚さについて説明させていただき、孵化補助の実施をおすすめしています。逆に、透明帯が薄すぎる、かろうじて透明帯として存在しているような場合は、孵化補助を行うと移植時に受精卵が壊れてしまう恐れがあります。孵化補助の実施を希望される場合は、胚培養士とよくご相談なさってください。
透明帯の硬さ
顕微授精は、卵子に針を刺して精子を注入します。その際、針を刺すときの感覚で透明帯の硬さがわかります。まったく抵抗がなく針が刺さる卵子、透明帯がゴムのように伸びてなかなか針が刺さらない卵子など様々です。
胚盤胞は孵化をする際、細胞数を増やしながら風船のようにパンパンに膨れていきます。膨らみ切ったところで、透明帯が破れ、胚盤胞が外へ飛び出します。透明帯がゴムのように伸びるような卵子の場合、胚盤胞まで育って孵化をすることができるでしょうか。
下の画像は、透明帯は平均的な厚さですが、顕微授精の際に硬いと判断された受精卵です。培養5日目に胚盤胞まで育ち、6日目にはパンパンに膨れていますが、なかなか孵化をすることができません。
子宮の内膜は受精卵が着床するのを待っている時期があります。胚盤胞が孵化できずにグズグズしていると、その大切な時期が過ぎてしまう恐れがあります。透明帯が硬い場合も、孵化補助を実施した方が良いと考えています。
卵子の中にある仕切り
卵子を観察していると、その中に仕切りのような膜があり、不要な空間ができている場合があります。この空間も胚盤胞がパンパンに膨れた時に、透明帯に力が上手くかからない可能性が考えられます。このような仕切りがある場合は、仕切りの反対側に孵化補助を行うようにしています。
以上が、透明帯についてのお話でした
ご質問などがございましたら、いつでも胚培養士にお声掛けください