ガザ・パレスチナと共に生きる 白杖記

ネタニヤフ訪米は失敗?その狙いと結果

◆◆7/28記事◆◆

 

◆ 7月28日 ゴラン高原にロケット弾、12人死亡 イスラエル・ヒズボラ全面衝突懸念高まる(時事通信) 
マジュダル・シャムスのサッカー場を直撃し、12人が死亡し、20人以上がけがをし、全員が10歳から20歳の若者だった。

◆7月28日 イスラエル、ヒズボラへの報復措置協議 今後数日「重大かつ緊迫」とメディア(時事通信)
 占領地ゴラン高原の町へのロケット弾攻撃で12人が死亡したことを受け、ネタニヤフ首相は28日、治安閣議を開き、ヒズボラへの報復措置について協議し、報復の手段と時期について、ネタニヤフ氏とガラント国防相に決定する権限が与えられた。

◆7月28日 イスラエル選手に殺害予告、フランスが捜査開始 パリ五輪(AFP=時事)

◆7月28日 トルコ大統領、イスラエルの戦争に介入示唆 パレスチナ人支援へ(ロイター)

◆7月28日 〈訪米の賭けに失敗したネタニヤフ〉“三股外交”で政権継続狙うも、逆に窮地に(Wedge・ウェッジ、月刊 雑誌)(Alex Wong /gettyimages)
 ネタニヤフ首相は訪米で「政治的延命」を図るというギャンブルに出たが、その思惑は外れた。首相はバイデン大統領と民主党の次期大統領候補ハリス副大統領、加えて共和党候補のトランプ前大統領と会談して“三股外交”を展開した。だが、逆にガザ戦争の早期終結を迫られる格好となり、その窮地は深まった。

(1)四面楚歌
 首相の立場は現在、四面楚歌状態だ。国内的には、ガザ戦争をめぐり政権内の2つの勢力から強い圧力を受け、政権崩壊の脅威に神経をとがらす日々だ。その圧力とは、
① 一つは極右の有力閣僚であるベングビール国家治安相とスモトリッチ財務相からのどう喝だ。2人は首相がもし、パレスチナ自治区ガザのイスラム組織ハマスを壊滅しないまま、停戦に合意すれば「政権から離脱し、崩壊させる」と公然と主張しているほか、ベングビール氏はパレスチナ側との取り決めを破ってイスラム教の聖地に入り、パレスチナ人への挑発を繰り返している。
② もう一つの勢力は超正統派ユダヤ教の宗教政党「ユダヤ教連合」と「シャス」。
両党は最高裁がこのほど、超正統派ユダヤ教徒が受けてきた「徴兵免除」に違法判決を出したことに伴い、徴兵手続きが行われつつあるのに反発。政権離脱を仄めかし、首相は引き止めるのに躍起になっている。
③ 与党リクードの中でもネタニヤフ首相が戦後のガザ統治問題をあいまいにしていることに、ガラント国防相らが反発。停戦協議をめぐっても、首相は交渉担当のイスラエルの対外特務機関モサドのバルネア長官と対立している。ガザからの早期撤退を主張する軍ともギクシャクし、うまくいっていない。
④ 野党は首相の退陣と早期総選挙を要求し、ハマスに捕らわれている人質の家族らの反ネタニヤフ行動は激しくなる一方。世論調査では国民の3分の2が首相の辞任を要求している。
 こうした国内状況に加え、北方のレバノン国境地帯ではシーア派武装組織ヒズボラとの交戦が激化、レバノン侵攻さえ強いられかねない情勢だ。戦争になれば、アラブ各地から数千人の義勇兵がヒズボラに参戦すると報じられている。
 さらにこのところ、1600キロメートルも離れたアラビア半島のイエメンの反政府勢力フーシ派から長距離ドローンやミサイル攻撃を受けていることも大きな懸念の的だ。7月19日に最大都市テルアビブが攻撃されたのに対し、イスラエル空軍が報復爆撃したが、ガザ戦争が終わらない限り、緊張は緩和されまい。

(2) 首相のシナリオ
□ ベイルート筋や米紙などの情報を総合すると、ネタニヤフ首相の訪米日程はこうした苦境から脱し、政権と権力を維持する目的で組み立てられたものだった。ポイントはイスラエル国会が8月から夏季休会に入る点だ。最長10月後半まで休会となるが、首相のシナリオは次のようなものだろう。
① 7月末までの訪米で国内を不在にし、この間の倒閣の動きを抑え、国会の夏季休会につなげる。総選挙に追い込まれる場合でも、来年3月ごろまで先延ばして時間を稼ぐ。
② 訪米は「米国と渡り合えるのは自分しかいない」ことを国内向けに誇示し、支持率を上げる手段。そのためにも米国からイスラエル支援を獲得しなければならない。
③ ハマスとの停戦協議は“偽装的に”続行するが、停戦合意には難くせを付けて妨害し、戦争は終わらせない。終戦となれば、責任を問われて辞任せざるを得ないからだ。とにかく最優先は政権を維持し、権力を保持し続けることだ。
 首相はこうしたシナリオを現実のものにするため、なんとして訪米を成功させたかった。だから上下両院での議会演説は力が入った。
 ハマスとの戦いを「文明と野蛮との衝突」とし、ガザ市民3万9000人の犠牲を出した攻撃を正当化。「イスラエルの敵は米国の敵であり、イスラエルの勝利は米国の勝利だ」と米国と一体であるという巧みなレトリックを多用した。

(3) クギ刺したハリス
□ ネタニヤフ首相はバイデン現政権、トランプ前政権双方に気を配り、慎重に言葉を選んで超党派の支持を取り付けようとした。共和党からは喝采を受けたものの、民主党の評価は散々で、ペロシ元下院議長は「これまでの外国人指導者の演説で最悪のもの」と切り捨てた。
 上下両院の民主党系議員263人のうち、約半分が演説をボイコット、議会の職員約100人が演説へ抗議して「病欠」した。上院議長役のハリス氏も政務多忙を理由に欠席してみせた。米国の分断の波をモロにかぶった格好とも言えるだろう。
 首相は25日にはバイデン大統領、ハリス副大統領と相次いで会談。バイデン氏は会談で「停戦合意を成立させる時だ」と伝えた。ニューヨーク・タイムズは、イスラエル軍当局者はバイデン大統領が停戦を受け入れるよう首相を説得することを期待していると報じていた。
 首相との関係が冷却化しているバイデン氏は大統領選挙戦からの撤退により、再選に気を遣わずに政策に集中できるようになっており、首相に相当強く停戦を求めたもようだ。バイデン政権はこれまで、停戦に耳を貸そうとしない首相に圧力をかけるため、一部の大型爆弾の供与を凍結した経緯がある。バイデン氏の任期はまだ半年あり、首相は同氏の要求を無視できない。
 ハリス氏も首相と会談し、イスラエルの自衛権の支持を表明する一方で、ガザの民間人の被害について、ガザの悲劇を「座視しない」し、「沈黙することはない」などと発言。大統領に当選した場合は、イスラエルに対し、バイデン氏以上に強い姿勢で臨むことを示唆した。停戦を渋る首相に「釘を刺した」ものと受け取られている。
 
(4) トランプとの関係は修復しても…
□ この後、ネタニヤフ首相はフロリダまで足を運び、トランプ氏と会談した。トランプ政権時代、両者は親密な関係にあったが、首相が前回の選挙で勝ったバイデン氏に祝意を伝えたため、選挙結果を認めていないトランプ氏が激怒。「ネタニヤフに裏切られた」と忠誠心のなさを批判したと伝えられていた。
 この点を問われたトランプ氏は関係が悪かったことはないと取り繕った。大統領選で一騎打ちとなるハリス氏がネタニヤフ首相に厳しい姿勢を見せたことに対抗してか、首相との関係修復に舵を切ったとみられている。トランプ氏は会談前のインタビューで、ガザ戦争を迅速に終わらせることが必要だと述べており、首相にも伝えたもようだ。

 ネタニヤフ首相は米国から戦争への全面支持を直接取り付けたかったが、3人の指導者とも思惑がそれぞれ異なるにせよ、「早期終戦」を求めており、今回の訪米は「戦争続行」を目論む首相にとって成功とは言えない。皮肉なことに首相は訪米で重い宿題を得負わされることになった。


◆ひかるの呟き◆
ネタニヤフ訪米のウエッジ記事は政治の分析としては当たっているのだろう。だが、イスラエルのガザ攻撃を止めることにはなっていない。まやかしでしかない「オリンピック停戦」すら実現できていない。自分の息子・兵士を殺されたイスラエルの母親の訴え((7月7日のブログ)に耳を傾け、一刻も早い停戦を実現させよう。

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