On The Road

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3-32

2010-01-25 20:26:40 | OnTheRoad第3章
 どうして陸上を辞めたのかとか、太ったころのスズキさんにも会ってみたかったなんてことは絶対言ってはいけないと思う。すごく気になるけど。

 スズキさんが病院の坂を下りてくるのが見えた。ピンクの白衣の上にアキエさんのより薄手のカーディガンを着ている。アキエさんのはベージュだったけど、スズキさんのは真っ白だ。コートを着るかわりに明るいグレーのチェックのマフラーをしている。

 寒そうに早足でスズキさんが近付いてくる。何を話すかはまだ決まっていない。スズキさんが喫茶店の中の僕に気付いてちょっと笑った、気がする。

 「サトウさんはキセキの人だから、先輩に会えたのも不思議と思ってないです」と、ココアを注文するより前にスズキさんが言った。
アキエさんの病室にいたおばあさんとピンクの好きなオバサンはすごく仲が悪かったのに、アキエさんが入院してきてから急に仲良くなったらしい。アキエさんが起こしたキセキには興味があるけど、この短い時間に聞きたい話ではない。といって、共通の話題はほかに思いつかなくて、アキエさんやサトウさんの話で僕たちはしばらく盛り上がった。



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2 コメント

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微笑みを心眼で見た (中西K郎)
2010-01-27 23:09:44
「ちょっと笑った、気がする」に注目しました。「、」の醸し出す間合いが良いです。何メートルも向こうのスズキさんの表情が見えたのか、いや感じたのですね。コージ君にとっては、スズキさんが実際より大きく、そしてスローモーションのように動いて見えたのではないでしょうか。
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気がしたんです (コージ)
2010-01-28 22:01:15
K郎さんの指摘は鋭くて、なんだか恥ずかしくなります。でも、自分でもこの書き方、実は気に入っています。
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