第7話-12

　「課長、俺はパチンコやったことがないんですけど、ゲームみたいですね。マリオとかの」
　斉藤はパソコンの前ですっかりリラックスして、ネクタイまで外して、ひっきりなしに独り言を呟いている。
　高槻は隣りに座って、斉藤のパソコンのディスプレイを覗いた。

　「ＣＲシックスレンジャーズで検索したら１２万件も出て来て、必勝法って追加したんだけど、８万件以上ですね。参ったなあ」
　参ったと言うものの、斉藤は幸せそうに笑った。「俺独自のやり方があるんだけど、もうちょいひねっていいかなあ？」
　斉藤は若者言葉で言うタメ口で高槻に聞いた。ここは、パソコンについては課長より詳しそうな課員に任せた方がいいかも知れない。
　「いいよ。斉藤君のやり方で探してみて」
　高槻が返事をすると、「そうっすよね？要は完全な必勝法が見つかればいいんだから」と斉藤は伸びをして、「コーラかなんかあれば、パワーアップするんだけど」と言った。

　要領のいい部長に命令されるのもいやだけど、おちこぼれ社員の使い走りになるのも気分が悪い。とは言うものの、斉藤が必勝法を見つけてしまえば自分の手柄にできる。

　「わかった。１階の販売機で買ってくるよ」
　高槻は財布を持って立ち上がった。
　「１階ってコカコーラでしたよね？俺、ペプシの方がいいんだけど」
　斉藤は高槻の背中に向かって言った。