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もんく [とある南端港街の住人になった人]

再感染か

土曜日の午後、仕事が終わってからつぶあん(♀)(写真)をクリニックに連れて行こうと思っていた。

右手の肉球より少し上にある突起のところが膿んでいた。少し前に同じような事があって、その時にはお腹の側面にもパチンコ玉が入りそうな穴が開いてしまっていて、医者に調べてもらったところ菌感染だとわかった。1週間毎日フランス製の薬を飲み、1週間空けてから再度同じ薬を飲んだ。

たった3週間だったけれど、そりゃもう長い3週間で、飲まされる方も飲ませるこちらも苦しい思いをしていた。それで今回、再発かと思い早めにクリニックに行くことにした。もし同じ菌に感染していた場合、もしかすると以前と同じ薬は効かないかもしれず、ちょっと不安なのだ。


けれど、土曜日の午後、つぶあんは珍しく昼間家に帰って来なかった。探すと2軒隣の家の車の下に寝ている。昼間寝始めると呼んでも起きて来ない。土曜日もそうで、頭を持ち上げてこちらを見はするけれども歩いて出てこない。いくらその家が留守にしているとは言え、勝手に入るわけにもいかず、結局土曜日は連れて行けなかった。


日曜日、日曜日はクリニックは午後3時からだ。朝、テスコまで買い物に行って、いつものパキスタン・ナン職人の店でお昼を食べた後、今度は家で寝ているつぶあんを捕まえてカゴに入れ、その上に布をかぶせて車に乗せる。くぐもった声で最初は鳴いていたけれど、すぐに静かになって無事クリニックに到着。

クリニックの開所を待っていたのか午後3時過ぎのクリニックの狭い待合室にデカい犬が3匹もいた。1匹の犬に対して3人位の人がいて、スタッフもその間を縫うように歩き回っているものだから酸欠になりそうだ。つぶあんは物音立てずにカゴの中にいて、たぶん硬直して動けなくなっている。

待つ事約20分、カゴごと診察室に入る。布を開け、カゴの中を覗くと、つぶあんは広くも無いカゴの中の一番奥の小さな面に身を寄せて丸くなっている。顔だけ90度こちらに向けて目を見開いてこれから怒る恐怖に怯えた表情。(猫に表情があるか、と言う問題については、この際お許しいただくことにしたい。)


前足を掴んで引っ張り出そうとすると、身体の後ろ半分がカゴの奥面にくっついてしまったかのように粘る。どうにか引き出すがカゴの下に敷いた新聞紙がいっしょについてきてグシャグシャになる。持ち上げると緊張で身体が丸くなっていて、ちょうど毛の生えたサッカーボールを抱いているような感じになった。

消毒されたステンレスの台の上に乗せようとしても足が空中で縮んでなかなか下りない。やっとの思いで台に乗せると丸くなった背中からポトンと落ちた。目が古木の節穴のようにまん丸でこちらを見ている。傷の部分を広げたところ、医者はそこを消毒液か何かでクリーングし、その後傷を押し広げるようにする。血が滲み出る。滲み出た血をガラス板を押し付けて採る。

ガラス板に紫の試薬が落とされ顕微鏡観察された。しばらく無言で観察している。こちらも沈黙。つぶあんは怖くて自分の肩に乗ってじっとしている。沈黙の後、生死を決する重大な言葉が発されるはず。また3週間の試練が来るのかと80%位覚悟して待つ。


が、検査の結果は陰性。感染はしていなかった。なので朝晩2種類の軟膏を付けて治りを待つことに。


家に帰ってカゴから出すと、1回右手をプルプルッとしただけで医者が巻いてくれた脱脂綿と接着性の包帯を取ってしまって何食わぬ顔。昨夜も一緒に散歩に行けとせがむし今日も早朝から散歩を要求するつぶあん。元気が何よりだけれども、薬をなめないようにするにはどうしてやったら良いのやら。
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