
落語『湯屋番』はどうなる?
「世が世なら、憧れの『若旦那』となって、神楽坂(←クリックすると三味線の音が聞こえます)や向島
で、きれいどこに囲まれて、ああ、芸者遊びも飽きたねーとか何とか言っているんだろうな・・・」ナアンテ、憧れる向きもあろうが・・・現実はさほど甘くはない。
この国は、短時間に急激に変わりすぎた。余りにも急にネ。
肝心の神楽坂や向島も嘗ての繁栄は今何処だ。柳橋など散策すると、昔の面影は全然ない。二、三十年前の文物は、もう残っていないのだ。
段々、落語も理解されにくい時代になってくるね。「銭湯」なんぞ、ひたすら消えゆく道を辿っている。だから、心配な落語はいっぱいあるが、取り敢えず 落語『湯屋番』。
古典的銭湯(一般公衆浴場)は、一般家庭の内風呂普及に加え、最近の健康ブームで急増する大型の「スーパー銭湯」に押され気味である。
厚生労働省はその“復権”を目指し、銭湯を地域の「健康増進拠点」に変身させる作戦に乗り出した。自治体が住民向けに実施する健康相談の会場として積極活用し、健康機器導入を銭湯側にも促すとのこと。(*参考:江戸の湯屋 )
さあ、そうなると、『湯屋番』の若旦那は、番台でニヤニヤして想像を逞しくしている場合じゃない。
第一、番台なんて無くなる。入浴券や石鹸・シャンプー・手拭い類の購入は、全て自動販売機を利用するようになる。
その前に役所から派遣されてきた役人が、「当浴場の利用に当たっては、先ず‘入浴申込書’を提出せよ」とか、「入浴契約を締結しなさい。それには住民票と印鑑証明を一通ずつ準備し、印鑑は実印を使用するべし」 なんて言い出すに違いない。 バカバカしい。
若旦那はお払い箱になり、インストラクターと呼ばれるのが、脱衣場をウロチョロするようになる。 そうなると……ああ、ヤダヤダ、『湯屋番』なんて落語は全く理解されなくなるヨ。