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一杯・15万円の茶漬け
冒頭の写真:八百善の会食(大田蜀山人、亀田鵬斎、酒井抱一、大窪詩仏)
「江戸流行料理通」都立中央図書館より
一杯(一膳)が15万円もする茶漬けをご存知だろうか?
本当の話である。江戸時代、山谷にあった八百善(やおぜん) という、江戸で最も名高い超高級料亭で本当にあった話として伝わっている。
★概略次のような話だ。
あるとき美酒美食に倦きた客が数人、八百善の座敷に上がって極上の茶漬けを注文したところ、少々お待ち願えませんでしょうかと言う。
少々待つくらいかまわないとういうので客は待ったが、一向に料理が出てこない。
かれこれ半日も待たされてやっとお茶漬けと香の物を食べることが出来た。その香の物というのは、春には珍しい瓜と茄子の粕漬を切り混ぜにしたもので、お茶漬けともどもまことに結構な味であった。
さて帰る段になって勘定を聞くと一両二分だという。びっくりした客が問いただすと、主人が出てきて説明した。
温室のない当時としては非常に珍しい瓜と茄子を使い、茶は宇治の玉露、米は越後の1粒選り、中でも最も金のかかったのはお茶に使った水だと言う。
宇治の上茶に合わせるにはこの辺の水ではよくないので、わざわざ早飛脚を仕立てて玉川上水の取水口まで水を汲みに行かせたと言うのである。
そのため時間もかかったし、運賃も高くついたわけで、それを聞いた客は"さすが八百善"と感心して帰っていったといいます。(中央公論社発行、八百善「料理通」江戸のおそうざいより抜粋)
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一両二分を現在の価値に直すのは難しい。というのは、江戸時代と現在の貨幣価値を、米価で比較すると一両が10万円。大工の手間賃で比較すると、30万円。高級日本酒で比較すると2万~2万5000円……と、ざっとこういう具合である。何を基準に比較するかによって結論が違ってくるからだ。
さらに同じ江戸時代でも、前期、中期、後期、幕末で物価の変動が激しい。一両の貨幣としての価値にも変動が観られる。
ここでは通説に従って、一両を10万円とすると、一両二分は15万円になる(四分で一両)。
この八百善は後に幕府からお咎めを受け、それを境に往時の繁栄を失って行く。現在では、割烹家八百膳株式会社 として盛業中と仄聞する。詳しくは知らない。