・報われない
仕事が忙しい。
寝ないで仕事をしても、終わらないくらいに日程が溢れている。
納期が切られてくるのだけれども、どうやったらそんな日程で終わるんだというような酷い日程である。
身体が二つあっても、終わらない様なレベルの混み具合。
「そんな日々がずっと続く訳じゃないんだから、この不景気に、ある時にやらないでどうする」
そんな檄が飛ぶのだけど、こんな日が一週間も続けば精神的に参ってしまうのは当然の事であるように思うのだが、長く働いていると、そんな激動の日々さえもぬるっと過ぎ去っていくようなこなし方を覚えてしまうというのはある意味当然の事なのかも知れない。
そうでなければ、心が持たないと言っておく。
「こんなに仕事を頑張っているのに、どうしてパチンコは出ないんでしょうねぇ」
ため息と共に一緒に働いているI君が断裁機を操りながら、そんな事を言った。
「世界はそう言う風に出来ているのさ」
私はモニターを見つめつつ、そう答えるのだ。
薄ら笑いで。
「夢も希望もないじゃないですか」
「夢なんてものは、夢を見れる人だけが見るものなのさ。俺たちが見る事が出来るのは、絶望と失望と悪夢くらいなものだよう」
「何か良い事を言っている!?」
時計を見れば既に午後十時を回っており、確かうちの会社の定時は夕方五時だと思ったのだが、これは一体どういう事であるのかと憤った。
頭の中で流れるのはオルゴール調で流れるスマップの「世界に一つだけの花」であったという事は、あまりにも悲しいのでI君には言わなかった。
・散髪
日曜日の夕方、突然、携帯のバイブが震えた。すでに携帯としての役割よりも、ネットを見たり、ワンセグを見るための存在として活躍している存在だったので、本来の機能である電話とメールは久しくその機能を使う事はなかったので、時々鳴ったりすると非常にびっくりするのである。
見てみると、I君からのメールであった。
「髪切るのを失敗した!!」
この一年ほど、散髪に行く機会を失って、伸びに伸びきったI君の髪の長さは、キムタクが一番長かった頃に匹敵する長さだったのだけど、どうやら散髪にいった様なのだけど、どんな風に失敗したのかという事は書かれてもいないし、画像も添付されていなかったのである。
わざわざメールを送ってくるくらいである。
モヒカンとか、チョンマゲとかを想像したのだけど、おされなI君の事であるからさすがにそんな事はないだろうと思い、また大げさな事を言っていると思ったのであった。
実際、次の日の朝に合ったI君はもの凄く短くなって、イガグリの様になって現れたのだけど、個人的な感想は普通じゃん。