バンバンジーってなんだっけ？

ふとした瞬間に、頭にポンと浮かぶ単語というものがある。それはまるで、忘れかけた古い歌詞の一節や、遠い昔に読んだ本の一文のように、突然、そして唐突に現れるのだ。先日、私の頭に飛び込んできた言葉は「バンバンジー」だった。

「バンバンジーって、なんだっけ？」

そう問いかけながら、頭の中を必死に検索してみるが、ぼんやりとした輪郭しか掴めない。何かの料理だったような気がするが、具体的にどんなものだったのかは思い出せない。何とも歯がゆい。よく知っているはずのものが、急に遠い存在になってしまったような、そんな感覚に陥った。

まずは、冷静に考えてみることにした。確か、バンバンジーは中華料理の一つだったような気がする。けれども、それがどんな味だったのか、どんな材料が使われていたのか、まるで霧の中だ。そんな状態のまま、思い出そうとすればするほど、ますますその正体が遠のいていく。

困った時のインターネット、というわけで、スマホを取り出し検索する手もあった。しかし、ここで素直に答えを得てしまうのも、何だか味気ない気がした。人生というものは、少しばかりの迷いや疑問を楽しむ余裕が必要だ。だから、私はしばらくの間、その答えを探すのをやめ、昔の記憶を頼りに「バンバンジー」にまつわる記憶を掘り起こしてみることにした。

最初に思い浮かんだのは、子供の頃に母と行った中華料理店だ。小さな赤い提灯がぶら下がり、少し油っぽい匂いが漂う店内。席に着くと、決まってテーブルに出てくるのが、冷菜の一品。これがどうにも、私の「バンバンジー」の記憶と結びついているような気がする。薄く切られた鶏肉と、何かシャキシャキした野菜。そして、ごまの風味が効いたタレ。子供の頃には少し大人びた味に感じたが、今となっては懐かしい。

だが、果たしてこれが「バンバンジー」だったのかどうか。実際のところ、その記憶が正しいかどうかの確証はない。もしかしたら、全然別の料理を思い出しているのかもしれない。しかし、こうして過去の記憶に立ち戻りながら、あれこれと頭を巡らせる時間が楽しい。

さて、次に思い当たるのは、友人たちとの集まりでのことだ。いつかの暑い夏の日、友人たちと居酒屋で一杯やっていた時に、誰かが注文したのが「バンバンジーサラダ」だった気がする。けれども、あの時は会話に夢中で、料理の味なんて覚えていない。もしかしたら、またそれも別の料理と混同しているのかもしれない。

ここまで考えを巡らせてみても、どうも「バンバンジー」の輪郭はまだぼんやりとしている。しかし、この迷い続ける過程こそが、実は一番大事なことではないだろうか。物事というのは、すぐに答えが出てしまうと、かえって味気なくなるものだ。だから、私はあえてもう少し、この「バンバンジーってなんだっけ？」という問いの中にとどまってみようと思う。

実のところ、料理に限らず、日常の中でふと浮かんでくる謎や疑問というのは、決して無駄なものではない。それは、今まで当たり前のように見過ごしてきたものに対して、新たな視点を持つきっかけにもなるのだ。例えば「バンバンジー」のような、普段は何気なく口にしていた料理が、こうして改めて問い直すことで、より深くその存在を感じられる。

そんなこんなで、私は結局、答えを求めて再び頭の中を巡らせ続けることにした。バンバンジー、それはおそらく、シンプルな鶏肉料理の一つだろう。そして、ごまの風味豊かなソースが特徴で、夏場には冷たい一品としてよく提供されるもの。だが、それがすべての答えではないような気もする。

物事の本質というものは、しばしばその「曖昧さ」に宿っている。何かを完全に理解しようとすることは、時にはその魅力を失わせることにもつながる。だから私は、この「バンバンジー」に対しても、完全に思い出す必要はないと、そう結論づけることにした。

あえて、ぼんやりとしたままにしておく。それもまた一つの楽しみ方だろう。結局のところ、私にとって「バンバンジー」とは何なのか、それをすぐに答えることはできないが、その曖昧さこそが、この料理の一つの魅力なのかもしれない。

そして、次に実際に「バンバンジー」を食べる機会が訪れた時、私はきっとその時に初めて「ああ、これだった」と納得するのだろう。