こんな夢を見た。
緑深い森の中を全力で走っている。
私の背丈を越える草が多く茂り、目の前を塞いでいて、容赦無く私の顔にムチの様にしなった茎が叩きつけてくるのだけれども、私は怯むことなく走り続ける。
しばらくして森を抜ける。
空は蒼く晴れ渡り、眼下には広大な世界が広がっている絶壁の上だった。
私は崖の淵に沿って歩き始めたのだが、すぐに自分一人しか歩く幅しかないところに来てしまった事に気がつく。
左手側は、おそらく下まで千メートルはある垂直な崖であり、右手側は下、十メートル毎に足場が階段の様になっている崖だった。
そして足元は岩ではなく、ただの土であると言う事に気がついてしまった時、足元の崩壊が始まったのである。
当然の様に左手側に落ちてしまえば万に一つも助かる見込みはないのであるから、私は右手側に落ちることを選択する。
普通に考えてみるならば、十メートルも結構な高さであるのではあるが、千メートルと比べてみると何とかなってしまんじゃないかと思えてしまう不思議。
私は十メートルを落ちた。
また人一人しか立つことができない足場に着地した瞬間、私は体にかかる衝撃を少しでも減らすために着地するスピードで膝を曲げてそのまま次の足場に向かって体を捻ると同じ様に落ち始めた。
それを崖が終わる千メートル下まで延々と繰り返し、無事最後の草が生い茂る地面にたどり着くと、私はそのまま走り出した。
人生最大の危機だったけど、意外となんとかなるものだと思いながら。
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