「道の駅」での車中泊、禁止? OK? 問われるマナー、わかれる運営の対応
乗りものニュース 3/24(金) 16:15配信
車中泊の人気が高まっています。近年は車中泊を楽しむことを目的とした雑誌も登場しているほか、キャンピングカーの業界団体である日本RV協会によると、キャンピングカーの売り上げ額も、2015年度には過去最高の約357億円を記録しているそうです。
インターネット上では、おすすめの車中泊スポットを紹介する口コミサイトなどもあり、そこでは駐車場やトイレが基本的に24時間開放されている道の駅が主要なスポットとして取り上げられています。しかし一方で、「車中泊お断り」を掲げている道の駅も少なからず存在するようです。そのひとつ、京都府京丹後市の「道の駅 てんきてんき丹後」に事情を聞きました。
――駐車場で「車中泊」をしてはいけないのでしょうか?
道の駅は休憩のための施設ですので、当施設の駐車場では基本的に、車中泊はお断りしています。宿泊には、隣接するオートキャンプ場の利用をお願いしています。
――なぜ禁止しているのですか?
駐車場で洗濯物を干していたり、テーブルなどを出してバーベキューをしていたり、さらにはそのゴミを全て置いて帰ったりということが多々あるためです。
――しかし実際には車中泊をしている人もいるのではないでしょうか?
ウェブサイトでも車中泊を控えてもらうよう呼びかけていますが、駐車場は24時間開放しているので、道の駅の営業終了後については状況を把握しきれません。朝9時のオープン時点で、そのようにテーブルを出すなどしている人には、声がけをするようにしています。
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「てんきてんき丹後」では、駐車場が小型38台、大型4台とそこまで広くないこともあり、スペースを長時間占有されるとほかの人が利用できなくなるという事情もあるそうですが、車中泊を断る背景には、利用者のマナー問題が大きいようです。
車中泊の禁止あるいは自粛を呼び掛けている道の駅がある一方で、なかには、キャンプ場にあるような屋外手洗い場や、キャンピングカーに電源を供給できる設備を駐車場に設けるなど、車中泊の受け入れ体制を整えている道の駅もあります。
そのひとつが熊本県阿蘇市にある「道の駅 阿蘇」です。運営するNPO法人「ASO田園空間博物館」に、そのねらいを聞きました。
――屋外手洗い場など、車中泊を想定した設備を充実させているのはなぜでしょうか?
以前からキャンピングカーで車中泊をする人が多かったのですが、たとえばハミガキや食器洗いのためにトイレの水道が長時間占有され、ほかの利用者が待たされるといったトラブルが起きていました。一般利用者とのすみ分けのため、車中泊での利用を想定した洗い場を設けたのです。
――無料の電源供給設備まで設ける意図は?
これも、車中泊をする人が発電機を使用したり、ひと晩中エンジンをかけっぱなしにしたりすることによる騒音問題に対応するためです。こうしたことは遠慮してほしいと明言していますが、その代わりに外部から電源を供給できる設備を設けました。
――実際どれほど、どのような人が車中泊をしているのでしょうか?
今朝(2017年3月23日)は平日ですが10台ほどのキャンピングカーが停まっていました。熊本地震(2016年4月)以前のゴールデンウイークなどには、朝に出勤してみると、約120台分の駐車場に収まりきらないほどのクルマが停まっていたこともあります。当然ながら電源設備は足りなくなりますが、利用者のあいだで譲り合って使っていただいていたようで、大きな問題は起きていません。キャンピングカーの利用者はおもに50~70歳代で、普通車で車中泊しているのは、それよりも若い人が多い印象です。
――なぜこれほどまでに車中泊を想定した設備を充実させているのですか?
車中泊も気持ちよくできるということを、阿蘇に来る理由のひとつにしてほしいという思いがあります。この「道の駅」はJR阿蘇駅に隣接しており、温泉施設やコンビニエンスストア、市街地も歩ける距離にあり、車中泊をしつつ街の飲み屋に行く人もいます。車中泊の人を受け入れることが、地域の経済に役立つと考えています。
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「道の駅 阿蘇」でも車中泊のマナー問題はほかと同様で、「確かにゴミを置いていく人もいる」とのこと。しかし、「それは個人のマナーであり、大きな問題とは思っていません」(ASO田園空間博物館)といいます。
ちなみに国土交通省はウェブサイトで、「『道の駅』駐車場での車中泊は可能ですか?」という問いに対し、「『道の駅』は休憩施設であるため、駐車場など公共空間で宿泊目的の利用はご遠慮いただいています。もちろん、『道の駅』は、ドライバーなど皆さんが交通事故防止のため24時間無料で利用できる休憩施設であるので、施設で仮眠していただくことはかまいません」としています。
仮眠か宿泊か、その線引きはあいまいかもしれませんが、節度とマナーをもって道の駅を利用することが求められているでしょう。
乗りものニュース編集部