2020.8.19COVID-19【宮川絢子(カロリンスカ大学病院泌尿器外科医師|ForbesJapan(石井節子2020/08/19: 新型コロナ「第二波がこない」スウェーデン、現地日本人医師の証言
2020.8.19COVID-19【寄稿/宮川絢子(カロリンスカ大学病院泌尿器外科医師|ForbesJapan(編集/石井節子2020/08/19: 新型コロナ「第二波がこない」スウェーデン、現地日本人医師の証言
寄稿/宮川絢子(カロリンスカ大学病院泌尿器外科医師|ForbesJapan(編集/石井節子2020/08/19: 新型コロナ「第二波がこない」スウェーデン、現地日本人医師の証言
→https://forbesjapan.com/articles/detail/36353/1/1/1
(引用終わり。8,000文字)
「スウェーデンの新型コロナ対策は失敗だったのか。現地の医療現場から
ForbesJapan政治経済 2020/06/16 07:00」
https://forbesjapan.com/articles/detail/35156
「スウェーデン新型コロナ「ソフト対策」の実態。現地の日本人医師はこう例証する
ForbesJapan政治経済 2020/05/07 07:30」
https://forbesjapan.com/articles/detail/34187
紹介:関連するおはら野のブログ記事名orURL
→
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午前11:05 · 2020年8月19日
*Yahooニュースなんだけど、Forbes JAPAN 編集部 から引用。Yahoooニュースでは、データの図表がすべて抜けている。
*カテゴリーを変えるかも。
by龍隆2020.8.19
— 中田考 (@HASSANKONAKATA) August 19, 2020
*カテゴリーを変えるかも。
by龍隆2020.8.19
寄稿/宮川絢子(カロリンスカ大学病院泌尿器外科医師|ForbesJapan(編集/石井節子2020/08/19: 新型コロナ「第二波がこない」スウェーデン、現地日本人医師の証言
→https://forbesjapan.com/articles/detail/36353/1/1/1
「新型コロナウイルス第二波到来」で、不安にじわじわとさいなまれる日本。アメリカからは「死者数15万人超」との発表が海を渡り、1日に7万人を超える新規感染者数が報告されている。
だが「都市封鎖せず」と独自路線の新型コロナウイルスソフト対策を貫き、一時は世界の注目を集めたスウェーデンの現状については、あまり多くの報道がされていない。
Forbes JAPANで5月、6月、多くの反響を集めた「スウェーデンのコロナ対策」関連の記事に、スウェーデン在住の医師、宮川絢子博士に聞いた「スウェーデン新型コロナ「ソフト対策」の実態。現地の日本人医師はこう例証する政治経済 2020/05/07 07:30」と「スウェーデンの新型コロナ対策は失敗だったのか。現地の医療現場から政治経済 2020/06/16 07:00」 がある。
宮川博士は、スウェーデン・カロリンスカ大学病院・泌尿器外科勤務の医師で日本泌尿器科学会専門医であり、スウェーデン泌尿器科専門医(スウェーデン移住は2007年)だ。
カロリンスカ大学病院はスウェーデンで最多の感染者、犠牲者を出したストックホルムにあり、国内で最多の感染者治療を行なった医療機関である。ピーク時には感染者の治療も担当した医師としての経験と多くのデータに裏付けられた検証にもとづき、宮川博士に再びご寄稿いただいた。今回はその前編である。
データで見るスウェーデンの現状
新型コロナウイルスパンデミックにおいて、ロックダウン政策を取らず、人口あたり世界上位の死者数を出してしまったスウェーデンにおいても、感染第1波は収束した。ロックダウン政策を選択し、その後ロックダウンを解除した国では、すでに第2波が始まりかけているところも多くあるが、スウェーデンでは今のところ感染の再拡大はみられていない。
スウェーデンで最も多くの感染者及び犠牲者を出した首都ストックホルムの、最も多くの感染者の治療を行なったカロリンスカ大学病院で、ピーク時には感染者の治療も担当した医師としての経験から、スウェーデンの現状をアップデートしてみたい。
スウェーデンの新型コロナウイルス感染対策は、「長期間継続することが難しいロックダウンという方法を取ることなしに、ソーシャル・ディスタンスを取り、高齢者を隔離することで感染のピークを抑え、医療崩壊を回避すること」であった。また、国民一人ひとりが感染対策に責任を持ち、自主性に任せるという、中央と国民の信頼関係に基づいたものであった。
//画像// 図1:日毎の死亡者数の推移
画像①https://2019.images.forbesjapan.media/articles/36000/36353/wysiwyg/a169be1c5bb584f4caa1918082561895.png
しかしながら、これまで、スウェーデンでの死者は5700名を超えた。100万人あたりの死亡者数は570名であり、日本の約70倍にもなる。多くの犠牲者を出したが、毎日の死亡者数は、4月中旬をピークに減少してゆき、現在は、1日数名となった(図1)。
2p
詳しいデータ、グラフから見るスウェーデンの状況
//画像// 図2:入院者数推移
画像②https://2019.images.forbesjapan.media/articles/36000/36353/wysiwyg/9e6968c80c1bcc03d23df846779d3b9c.png
ICU治療が必要な重症者も減少し、入院者数は激減している(図2)。
//画像// 図3:週毎の新規感染者数と重症度。「公衆衛生庁ホームページより」。
画像③https://2019.images.forbesjapan.media/articles/36000/36353/wysiwyg/00ad31aada824d40f6c198c5ad976054.png
3月に感染が急拡大し、感染者の追跡調査を諦めて以降、PCR検査は入院が必要な重傷者に限り行われていたが、徐々にPCR検査のキャパシティーは拡大し、6月に入りストックホルム市ではPCR検査や抗体検査を無料で行うようになるなど、PCR検査数が大幅に増加した。検査数の増加に伴い、新規感染者は一時的に増加したが、増加したのは軽症者だけであった(図3)。
//画像// 図4:週毎のPCR検査数と陽性件数(または人数)の推移。「公衆衛生庁ホームページより」。
画像④https://2019.images.forbesjapan.media/articles/36000/36353/wysiwyg/658d1efb975b417d1523883e28304c1a.png
//画像// 図5:PCR検査陽性率の推移。「公衆衛生庁ホームページより」。
画像⑤https://2019.images.forbesjapan.media/articles/36000/36353/wysiwyg/621567c0e1613b54da570048cc8e35ec.png
そしてその後、新規感染者数(新規陽性者数)もPCR検査陽性率もともに減少してきている(図4・図5)。
スウェーデンでは6月後半から夏季休暇期間となった。国民は国内での移動制限を勧告されていたが、それが解除され、国内であれば自由に移動できようになった。EU内の渡航制限勧告も、特定の国を除き解除された。もともと国民は、それぞれの判断である程度通常の生活を行ない、休暇期間に入り、その自粛生活にも少し緩みが出ているようにも感じられるが、現在まで感染拡大の再燃は見られていない。
何故スウェーデンはロックダウンしなかったのか
このパンデミックで感染対策の指揮を取るスウェーデンの国家疫学者、テグネル氏は、ロックダウンにははっきりとした学術的エビデンスがないとした。そうであるとすれば、スウェーデンの政策が「壮大な社会実験」と呼ばれるのは不本意である。今までに経験したことのない今回のパンデミックにおいて、ロックダウンすることも、ロックダウンをしないことも、どちらもある意味で社会実験であると言えるのかもしれない。
ロックダウンという治療には、感染拡大抑制という効果と同時に、看過できない副作用がある。スウェーデンの専門家グループは、効果と副作用のバランスを考慮して「ロックダウンには、副作用こそあれ大きな効果はない」とした。
また、今回のパンデミックは長期戦になることが予想されたため、長期間持続可能な政策が望ましいが、ロックダウンすることは、経済的にも国民の精神衛生上的にも長期間の継続は難しいとした。しかしながら、実際には国民の日常生活にはある程度の制限が加わっており、部分的ロックダウンであったといえる。
ロックダウンができなかった大きな理由の一つは、憲法の縛りがあったことだ。スウェーデン憲法では、国民の移動の自由が保証されている。つまり、国が国民の移動を規制できないことになっている。
また同憲法では、公衆衛生庁などの公共機関は政府とは独立しており、政治主導の意思決定はできないことになっている。そして、感染症対策に関する法律には、感染症対策を担当するのは公衆衛生庁であると明記されている。つまり、感染症対策は政府の影響を受けることなく、公衆衛生庁が指揮を取ることが法律上担保されているのだ。
3p
入居後18カ月までに約40%が死亡という事実
ロックダウンの一環として、学校などの教育機関の閉鎖についても議論された。スウェーデンでは、子供が教育を受ける権利が重視された。家庭環境に恵まれない子供が登校できなくなることで起こる弊害や格差の拡大が考慮された。また、学校が閉鎖されることで、医療従事者の約10%が勤務できなくなる試算で、そうなれば、医療現場を維持することが難しくなることが予測された。そのため、高校・大学などは遠隔授業となったが、保育園、小中学校は閉鎖されることはなかった。
ただし、感染拡大の程度によっては閉鎖しなければならないこともあるとして、学校を閉鎖できるように新法を整え、また閉鎖した場合であっても、保育や学童のサービスを受けられる親の職種のリストが発表されていた。スウェーデン社会を維持するために必要な職種とは、エネルギー供給関連、金融サービス、貿易・建築・製造業、医療・介護、情報通信、交通輸送、食品、行政、裁判所・警察・軍隊、公共社会保険、交通機関などであり、危機管理庁がリストを作成していた。
多くの死亡者が出た介護施設
//画像// 図6:70歳以上の新型コロナウイルスによる死亡者と介護状況
画像⑥https://2019.images.forbesjapan.media/articles/36000/36353/wysiwyg/75688353b277967134508f6670d18b95.png
2019年にはスウェーデンにおける70歳以上の高齢者は約150万人であった。19万1910人が自宅でヘルパーの助けを借りる要介護者であり、7万9410人が介護施設に居住する高度要介護者であった(2020年1月時点)。つまり、70歳以上の高齢者のうち、約18%が要介護者である。スウェーデンの新型コロナ感染症による死亡者の90%が70歳以上の高齢者であり、死亡した高齢者の約80%が要介護者である(図6)。
スウェーデンで高齢者を中心に死亡者が多く出たのは、介護施設でのクラスターが多発し、自宅に住む高齢者へもヘルパーを介して感染が持ち込まれたためである。この周辺については、前稿を参照されたい。
//画像// 図7:介護施設における居住期間(日)の中央値(2018年)
画像⑦https://2019.images.forbesjapan.media/articles/36000/36353/wysiwyg/17598875e8ea2c60e72f5a578efbb4a6.png
多くの犠牲者が出た介護施設であるが、介護施設の入居者の過半数は認知症を患っており、残りは、基礎疾患を複数持つ全身状態の良くない高齢者である。入居してから死亡するまでの期間は比較的短いことが知られている(図7)。入居期間が中央値で2年前後というこのデータは、予後が長い認知症患者を含むため、認知症以外の患者に関してはさらに短くなる。
//画像// 図8:介護施設入居後18カ月での生存率
画像⑧https://2019.images.forbesjapan.media/articles/36000/36353/wysiwyg/4f3741c0c8a250eb61303c22c092a4c2.png
同様に認知症の患者を含んだデータであるが、入居後18カ月までに約40%が死亡することがわかっている(図8)。介護施設の入居者は予後が良くないという理由により、社会庁は、介護施設での感染者は原則として病院には搬送しないとする指示を出していた。これは、新型コロナ感染症に限るはずであったが、介護施設で常駐医師がいないなど医療従事者が不足しており、医師が遠隔診断で病院に搬送しない判断をしたケースもあったようである。
その中には、適切な診断が下されないまま、救命目的の治療ではなく緩和治療に自動的に移行したケースもあり、不幸な転帰をとった高齢者も存在した。この点は、大きな社会問題となっており、今後、外部調査委員会の調査により、改善すべき点が明らかにされることになっている。
p4
EU諸国各国と比べた超過死亡率の推移
//画像// 図9:人口10万人あたり死亡数(週)
画像⑨https://2019.images.forbesjapan.media/articles/36000/36353/wysiwyg/9b811e6317447c136f3716b7444d423e.png
一方で、新型コロナ感染症による死亡者の平均年齢は、現時点での社会庁の統計によると83歳であり、2019年のスウェーデンの平均寿命は83.1歳である。83歳時点における平均余命は、スウェーデンの生命表によると7年程度であるが、前述の通り、介護施設に入居している基礎疾患を持つ要介護高齢者の予後は悪く、したがって、平均余命は短いと考えられる。
そのため、新型コロナウイルス感染により、死亡が若干前倒しになっただけだとする見方もある。もしそうであるとすれば、長期的には超過死亡率は相殺されてくるはずである。例年よりも多かった死亡者数は、現在では、例年以下にまで減少している(図9)。
//画像// 図10:EU諸国各国の超過死亡率
画像⑩https://2019.images.forbesjapan.media/articles/36000/36353/wysiwyg/ffa210c6d94dcab8d1e5e1837294edee.jpg
実際、超過死亡率は低下し、ロックダウンをした他のEU諸国と比べても、超過死亡率は多いとは言えない(図10)。
//画像// 宮川絢子ポートレート
宮川絢子(みやかわあやこ)◎スウェーデン・カロリンスカ大学病院・泌尿器外科勤務。平成元年慶應義塾大学医学部卒業。日本泌尿器科学会専門医、スウェーデン泌尿器科専門医、医学博士、カロリンスカ大学およびケンブリッジ大学でポスドク。2007年スウェーデン移住。スウェーデン人の夫との間に男女の双子がいる。
文=宮川絢子 編集=石井節子
だが「都市封鎖せず」と独自路線の新型コロナウイルスソフト対策を貫き、一時は世界の注目を集めたスウェーデンの現状については、あまり多くの報道がされていない。
Forbes JAPANで5月、6月、多くの反響を集めた「スウェーデンのコロナ対策」関連の記事に、スウェーデン在住の医師、宮川絢子博士に聞いた「スウェーデン新型コロナ「ソフト対策」の実態。現地の日本人医師はこう例証する政治経済 2020/05/07 07:30」と「スウェーデンの新型コロナ対策は失敗だったのか。現地の医療現場から政治経済 2020/06/16 07:00」 がある。
宮川博士は、スウェーデン・カロリンスカ大学病院・泌尿器外科勤務の医師で日本泌尿器科学会専門医であり、スウェーデン泌尿器科専門医(スウェーデン移住は2007年)だ。
カロリンスカ大学病院はスウェーデンで最多の感染者、犠牲者を出したストックホルムにあり、国内で最多の感染者治療を行なった医療機関である。ピーク時には感染者の治療も担当した医師としての経験と多くのデータに裏付けられた検証にもとづき、宮川博士に再びご寄稿いただいた。今回はその前編である。
データで見るスウェーデンの現状
新型コロナウイルスパンデミックにおいて、ロックダウン政策を取らず、人口あたり世界上位の死者数を出してしまったスウェーデンにおいても、感染第1波は収束した。ロックダウン政策を選択し、その後ロックダウンを解除した国では、すでに第2波が始まりかけているところも多くあるが、スウェーデンでは今のところ感染の再拡大はみられていない。
スウェーデンで最も多くの感染者及び犠牲者を出した首都ストックホルムの、最も多くの感染者の治療を行なったカロリンスカ大学病院で、ピーク時には感染者の治療も担当した医師としての経験から、スウェーデンの現状をアップデートしてみたい。
スウェーデンの新型コロナウイルス感染対策は、「長期間継続することが難しいロックダウンという方法を取ることなしに、ソーシャル・ディスタンスを取り、高齢者を隔離することで感染のピークを抑え、医療崩壊を回避すること」であった。また、国民一人ひとりが感染対策に責任を持ち、自主性に任せるという、中央と国民の信頼関係に基づいたものであった。
//画像// 図1:日毎の死亡者数の推移
画像①https://2019.images.forbesjapan.media/articles/36000/36353/wysiwyg/a169be1c5bb584f4caa1918082561895.png
しかしながら、これまで、スウェーデンでの死者は5700名を超えた。100万人あたりの死亡者数は570名であり、日本の約70倍にもなる。多くの犠牲者を出したが、毎日の死亡者数は、4月中旬をピークに減少してゆき、現在は、1日数名となった(図1)。
2p
詳しいデータ、グラフから見るスウェーデンの状況
//画像// 図2:入院者数推移
画像②https://2019.images.forbesjapan.media/articles/36000/36353/wysiwyg/9e6968c80c1bcc03d23df846779d3b9c.png
ICU治療が必要な重症者も減少し、入院者数は激減している(図2)。
//画像// 図3:週毎の新規感染者数と重症度。「公衆衛生庁ホームページより」。
画像③https://2019.images.forbesjapan.media/articles/36000/36353/wysiwyg/00ad31aada824d40f6c198c5ad976054.png
3月に感染が急拡大し、感染者の追跡調査を諦めて以降、PCR検査は入院が必要な重傷者に限り行われていたが、徐々にPCR検査のキャパシティーは拡大し、6月に入りストックホルム市ではPCR検査や抗体検査を無料で行うようになるなど、PCR検査数が大幅に増加した。検査数の増加に伴い、新規感染者は一時的に増加したが、増加したのは軽症者だけであった(図3)。
//画像// 図4:週毎のPCR検査数と陽性件数(または人数)の推移。「公衆衛生庁ホームページより」。
画像④https://2019.images.forbesjapan.media/articles/36000/36353/wysiwyg/658d1efb975b417d1523883e28304c1a.png
//画像// 図5:PCR検査陽性率の推移。「公衆衛生庁ホームページより」。
画像⑤https://2019.images.forbesjapan.media/articles/36000/36353/wysiwyg/621567c0e1613b54da570048cc8e35ec.png
そしてその後、新規感染者数(新規陽性者数)もPCR検査陽性率もともに減少してきている(図4・図5)。
スウェーデンでは6月後半から夏季休暇期間となった。国民は国内での移動制限を勧告されていたが、それが解除され、国内であれば自由に移動できようになった。EU内の渡航制限勧告も、特定の国を除き解除された。もともと国民は、それぞれの判断である程度通常の生活を行ない、休暇期間に入り、その自粛生活にも少し緩みが出ているようにも感じられるが、現在まで感染拡大の再燃は見られていない。
何故スウェーデンはロックダウンしなかったのか
このパンデミックで感染対策の指揮を取るスウェーデンの国家疫学者、テグネル氏は、ロックダウンにははっきりとした学術的エビデンスがないとした。そうであるとすれば、スウェーデンの政策が「壮大な社会実験」と呼ばれるのは不本意である。今までに経験したことのない今回のパンデミックにおいて、ロックダウンすることも、ロックダウンをしないことも、どちらもある意味で社会実験であると言えるのかもしれない。
ロックダウンという治療には、感染拡大抑制という効果と同時に、看過できない副作用がある。スウェーデンの専門家グループは、効果と副作用のバランスを考慮して「ロックダウンには、副作用こそあれ大きな効果はない」とした。
また、今回のパンデミックは長期戦になることが予想されたため、長期間持続可能な政策が望ましいが、ロックダウンすることは、経済的にも国民の精神衛生上的にも長期間の継続は難しいとした。しかしながら、実際には国民の日常生活にはある程度の制限が加わっており、部分的ロックダウンであったといえる。
ロックダウンができなかった大きな理由の一つは、憲法の縛りがあったことだ。スウェーデン憲法では、国民の移動の自由が保証されている。つまり、国が国民の移動を規制できないことになっている。
また同憲法では、公衆衛生庁などの公共機関は政府とは独立しており、政治主導の意思決定はできないことになっている。そして、感染症対策に関する法律には、感染症対策を担当するのは公衆衛生庁であると明記されている。つまり、感染症対策は政府の影響を受けることなく、公衆衛生庁が指揮を取ることが法律上担保されているのだ。
3p
入居後18カ月までに約40%が死亡という事実
ロックダウンの一環として、学校などの教育機関の閉鎖についても議論された。スウェーデンでは、子供が教育を受ける権利が重視された。家庭環境に恵まれない子供が登校できなくなることで起こる弊害や格差の拡大が考慮された。また、学校が閉鎖されることで、医療従事者の約10%が勤務できなくなる試算で、そうなれば、医療現場を維持することが難しくなることが予測された。そのため、高校・大学などは遠隔授業となったが、保育園、小中学校は閉鎖されることはなかった。
ただし、感染拡大の程度によっては閉鎖しなければならないこともあるとして、学校を閉鎖できるように新法を整え、また閉鎖した場合であっても、保育や学童のサービスを受けられる親の職種のリストが発表されていた。スウェーデン社会を維持するために必要な職種とは、エネルギー供給関連、金融サービス、貿易・建築・製造業、医療・介護、情報通信、交通輸送、食品、行政、裁判所・警察・軍隊、公共社会保険、交通機関などであり、危機管理庁がリストを作成していた。
多くの死亡者が出た介護施設
//画像// 図6:70歳以上の新型コロナウイルスによる死亡者と介護状況
画像⑥https://2019.images.forbesjapan.media/articles/36000/36353/wysiwyg/75688353b277967134508f6670d18b95.png
2019年にはスウェーデンにおける70歳以上の高齢者は約150万人であった。19万1910人が自宅でヘルパーの助けを借りる要介護者であり、7万9410人が介護施設に居住する高度要介護者であった(2020年1月時点)。つまり、70歳以上の高齢者のうち、約18%が要介護者である。スウェーデンの新型コロナ感染症による死亡者の90%が70歳以上の高齢者であり、死亡した高齢者の約80%が要介護者である(図6)。
スウェーデンで高齢者を中心に死亡者が多く出たのは、介護施設でのクラスターが多発し、自宅に住む高齢者へもヘルパーを介して感染が持ち込まれたためである。この周辺については、前稿を参照されたい。
//画像// 図7:介護施設における居住期間(日)の中央値(2018年)
画像⑦https://2019.images.forbesjapan.media/articles/36000/36353/wysiwyg/17598875e8ea2c60e72f5a578efbb4a6.png
多くの犠牲者が出た介護施設であるが、介護施設の入居者の過半数は認知症を患っており、残りは、基礎疾患を複数持つ全身状態の良くない高齢者である。入居してから死亡するまでの期間は比較的短いことが知られている(図7)。入居期間が中央値で2年前後というこのデータは、予後が長い認知症患者を含むため、認知症以外の患者に関してはさらに短くなる。
//画像// 図8:介護施設入居後18カ月での生存率
画像⑧https://2019.images.forbesjapan.media/articles/36000/36353/wysiwyg/4f3741c0c8a250eb61303c22c092a4c2.png
同様に認知症の患者を含んだデータであるが、入居後18カ月までに約40%が死亡することがわかっている(図8)。介護施設の入居者は予後が良くないという理由により、社会庁は、介護施設での感染者は原則として病院には搬送しないとする指示を出していた。これは、新型コロナ感染症に限るはずであったが、介護施設で常駐医師がいないなど医療従事者が不足しており、医師が遠隔診断で病院に搬送しない判断をしたケースもあったようである。
その中には、適切な診断が下されないまま、救命目的の治療ではなく緩和治療に自動的に移行したケースもあり、不幸な転帰をとった高齢者も存在した。この点は、大きな社会問題となっており、今後、外部調査委員会の調査により、改善すべき点が明らかにされることになっている。
p4
EU諸国各国と比べた超過死亡率の推移
//画像// 図9:人口10万人あたり死亡数(週)
画像⑨https://2019.images.forbesjapan.media/articles/36000/36353/wysiwyg/9b811e6317447c136f3716b7444d423e.png
一方で、新型コロナ感染症による死亡者の平均年齢は、現時点での社会庁の統計によると83歳であり、2019年のスウェーデンの平均寿命は83.1歳である。83歳時点における平均余命は、スウェーデンの生命表によると7年程度であるが、前述の通り、介護施設に入居している基礎疾患を持つ要介護高齢者の予後は悪く、したがって、平均余命は短いと考えられる。
そのため、新型コロナウイルス感染により、死亡が若干前倒しになっただけだとする見方もある。もしそうであるとすれば、長期的には超過死亡率は相殺されてくるはずである。例年よりも多かった死亡者数は、現在では、例年以下にまで減少している(図9)。
//画像// 図10:EU諸国各国の超過死亡率
画像⑩https://2019.images.forbesjapan.media/articles/36000/36353/wysiwyg/ffa210c6d94dcab8d1e5e1837294edee.jpg
実際、超過死亡率は低下し、ロックダウンをした他のEU諸国と比べても、超過死亡率は多いとは言えない(図10)。
//画像// 宮川絢子ポートレート
宮川絢子(みやかわあやこ)◎スウェーデン・カロリンスカ大学病院・泌尿器外科勤務。平成元年慶應義塾大学医学部卒業。日本泌尿器科学会専門医、スウェーデン泌尿器科専門医、医学博士、カロリンスカ大学およびケンブリッジ大学でポスドク。2007年スウェーデン移住。スウェーデン人の夫との間に男女の双子がいる。
文=宮川絢子 編集=石井節子
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