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a green hand

長かった不安

今、母のいない母の部屋で久しぶりにブログに向かっている。
母は入院中である。

病院で95歳を迎えた。
コロナ禍での入院は非常に不安である。

妹に母を頼み、お気軽にコンサートに出かけた数日後、腰の痛みと血中酸素濃度がひくくなり、かかりつけの医院を介護タクシーで受診した。

今回も肺炎だろうかと思った。
血中酸素濃度は、母の場合低い値でも不思議を感じなかった。
ずっと低くても異常がなかったからだ。

しかし今回は、88の値まで下がっていた。
「十分生きた、なんの悔いもない。どうかS先生に最期まで診てほしい」の決心が固く我々も母の思いに沿うのがいいと思わざるを得ない状況であった。

それから介護認定のための種々の手続きがスタートした。
94歳まで介護認定なしで来れたのも有難いが早めにこうしたことを済ませておけば、いざという時に慌てなくて済むと感じた。
(必要がなかったのだから切羽詰まらないと考えも及ばないものではあるが、母は元気すぎたのだ)

在宅で最期を迎えたい思いに沿うべく妹と2人でお世話がスタートした。
夜になると苦しむ。
口の渇きと痰を出すことで朝を迎える。

市から聞き取りの人が来て、母にたくさんの項目を聞いていた。
介護認定会議を経て決定は来年の1月中旬と知らされた。

高齢なのと圧迫骨折で動けないことで認定は明らかなのだろう。
あれよあれよという間にケアマネージャー、訪問看護師さんたちが来てという慌ただしい日々がやってきた。

1週間がすぎただろうか、ある看護師が母に入院を説得し始めた。

母も我々娘が腰ベルトをして母を寝ずに介護する姿に少なからず思う事があったのだろう。
しかし、極め付けはかかりつけのS先生についての思いだった。

「S先生は優しいから」と言った母に「入院はしたくないがい、今の病院は昔と違うよ、優しくても治せなくてはしょうがない」とS先生は困ったように呟いた。


看護師は「Tさんなら入院しても早く帰って来れる。お願いだから入院してください」と。

母は即答はせず、我々と夫を呼んで、夫が母の手を取り、「大丈夫だから入院して頑張って」の言葉を聞いて即決断した。

S先生にしてみれば血中酸素濃度80を切りどんどん下がる母を、最期は近いと判断してたにちがいない。

不思議なことに意識もはっきりしていて、家族会議を招集するほど頭も血圧も脈も正常で血中酸素濃度だけが異常に低いだけだった。
ただ、口呼吸で相当苦しそうに思えるのだが本人はそうでもないという。
大正15年、寅年生まれの根性は凄い。

普通なら生きているはずがないのに、母があの世を願ってもこの世に縛り付けられていた。

雨の降る日の夕方、S先生の手配で隣町の総合病院に介護タクシーで入院した。
夕方の静まり返った病院では母の到着を数人の職員と医師が待っていてくれた。

レントゲンとCTを撮り終え、内科医の説明を聞いた。
直近の圧迫骨折、急性気管支炎、うっ血性心不全と診断された。

心臓と肺が水に半分ほど浸かり溺れた状態であると。
意味がわからなかった。
心臓がとても大きくなっている。
血中酸素濃度が低いのには慣れていたのですね、山登りする人にこういう大きな心臓が見られると。(母は登山はしないが、つい最近まで卓球を楽しめる強い身体ではあった)

以前から足の浮腫みが酷く凄く太いあしをしていた。
が、それもさほどそれも気にしていなかった。

全身の浮腫みを取るために点滴と利尿剤、酸素マスクで治療をすることになった。

入院間も無く、孫やひ孫からの色紙や手紙で励まされ、あの世に向かっていた母の決意が生きる方向へと転換した。
コロナ禍の今、面会はできないが、オンラインより「手紙」や「色紙」の力の大きさに驚いた。
看護師さんが枕元に孫さんたちの手紙や色紙を並べていますよと。





酸素量を少しずつ減らし始めた。
浮腫みもとれて心臓もだいぶ小さくなってきたと看護師さんを通しての説明があった。
年内の退院は無理だが来年、酸素をつけたままの退院かどうか、またそのときにということであった。

食べ物を持参して良いのかどうかわからなかったが洗濯した下着を届ける日の昨日、膝掛けと母の好きなゴボウせんべい4枚、一口栗羊羹一本、クッキーを2枚忍ばせた。
が、真面目な母は、病院側の許しがなければ食べないだろうと思い、看護師さんに断った。
看護師さんから渡されれば母も堂々と食べられる。
食欲はそんなにあるわけがない。
ずっと床に足をつけていないのだから。




介護認定度の決定と退院と同じ頃かな〜と私なりに考えている。
今回の母のことについて沢山の反省点があり未熟度がますます上がってしまった。




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