私の中でのヘッセといえば、「車輪の下」
国語のテストに出る代表的なヘッセの作品ぐらいなものの認識である。
その作品は読んだような、でも記憶に残っていないというお粗末さ加減である。
そのヘッセを再発見したのは、「庭仕事の愉しみ」に出会った時だった。
ヘッセと「庭仕事」が結びつかなかった。
ヘッセの息子が撮ったというヘッセの写真とヘッセが描いた水彩画の数々に、当時の私の驚きは大きかった。
庭仕事もするんだと有名作家のヘッセが急接近した気分になった。
ヘッセは百日草が大好きで、特に老いゆく百日草を賛美していた。
それを描いた水彩画が載っていた。
その時から私も百日草という非凡にはなれない花に親しみを持つに至った。
老いるとはこのように美しくありたいものだとその絵を見て思った。
花に水をやりながら ヘルマン ヘッセ
夏がしぼんでしまう前に、
もう一度庭の手入れをしよう
花に水をやろう
花はもう疲れている
花は間も無く枯れる
もしかしたら明日にも。
世界がまたしても狂気になり
大砲がとどろく前に もう一度
いくつかの美しいものを見て楽しみ
それらに歌を捧げよう
1932年頃
添えられた水彩画
その時代も平和を揺るがす戦争の準備が着々と………。