コトありで考えたこと

日々の生活の中で考えたことを書き綴った共同作成ブログです。

声の記憶  

2023-12-02 18:00:00 | 紫乃

サスペンスドラマを見ていたら、
聴覚の優れている女性が
昔、事件現場で聞いた犯人の声を覚えていて、
その声を警察の取り調べ室で確認して
「この声です」と証言したため、
犯人逮捕に至ったというストーリーだった。

もちろんフィクションなので、
十数年も前に一度だけ聞いた声を
覚えていられるわけがないよね、
と家人と話していた。

私などは、遠い過去に恋焦がれた相手の声も
もうはっきりとは思い出せないばかりか、
大好きだった亡き祖父母の声も覚えていないような気がする。

だが、不思議なもので、昔に聴いた曲の歌声は
今でもはっきりと記憶に残っていて、
特に一目惚れならぬ、一耳惚れした曲の歌手の声は、
一度聴いただけで記憶に残るほどの
衝撃を与え、その後もずっと耳に残っている。

たとえば、
サイモン&ガーファンクルの「スカボローフェア」の
歌声(これは二人の声だが)や、
オリビア・ニュートン・ジョンの「そよかぜの誘惑」の
オリビアの声や、
ジャーニーの「オープン・アームス」の
スティーブ・ペリーの声などは
絶対に忘れない。

ということは曲がつくと、声は記憶に残りやすいらしい。

多分、上に挙げた歌手たちの普段の話し声を聞いても、
記憶には残らないだろうから。

誰かの記憶に声を残したくなったら、
歌うといいのかもしれない。

 

(12月1日 紫乃 紀)


匂いの記憶   

2023-11-23 17:30:35 | 紫乃

ご近所さんが、庭で採れたかりんを3つ持ってきてくださった。

「よかったら、もらってね。
 ハチミツに漬けると喉にもいいし、
 Sさんはかりんの香りが好きだから、しばらく玄関に置いて
 香りを楽しむのよって言ってたわ」

かりんを手にしたのは初めての私。

どんな香りなんだろう?

ハチミツに漬ける前に少し鑑賞用に部屋に置いてみる。
確かにフルーツらしい芳醇な、でも控えめな香りが漂う。
「あ、何かの匂いに似てるよな」と思ったのだが、
その「何か」が思い出せない。

 

 

つい2週間ほど前も、旅の途中、山の中で嗅いだ匂いが
「何か」の匂いに似ていたのに、
その「何か」が思い出せなかったことがあり、
脳の中の記憶の中枢に異常が出てきたのかな、と思ったほど。
私の匂いの記憶は、以前ははっきりしていたものだった。

息子が新生児の頃、オムツを替えていて
「あ、この匂い知ってる」と鼻が反応した。

その時ふいに、遠い昔に嗅いだことのある、
赤ちゃんだった弟のオムツの匂いだと気づいた。

自分が4歳の頃に嗅いだ匂いをまだ脳は覚えていて、
20数年後に思い出したのだった。

懐かしい、甘酸っぱい匂い。胸がキュンとなった。

匂いの記憶で一番古いものは、
私が2歳か3歳の頃にいつも来るのを楽しみにしていた
『ロバのパン屋さん』の独特の匂い。

これは移動販売のパン屋さんなのだが、
「パン売りのロバさん」という曲をかけながら、
街を巡ってくる車で、
パンとはまた違う香ばしい匂いがしていたものだった。

あとで思い返すと、あれはみたらしだんごの匂いだった。
記憶にはないが、みたらしだんごも売っていたらしい。

かりんの匂いから、ロバのパン屋さんの匂いまで思い出してしまい、
匂いの記憶をたどる旅ができた。

ところで、かりんの匂いと似ていた匂いを、
だいぶあとになって思い出した。

洋梨の匂いであった。

「パン売りのロバさん」の曲はこちら→ロバのパン屋

(11月21日 紫乃 記)