ぱぱはブラックオリーブ好きじゃないとのことで今週はナッツもりもり
作者:三浦しをん 出版:新潮文庫 ■実は初めましての作家さん。読書会で三浦しをんさんの話で盛り上がっていた参加者さんたちがいて読みたくなって、ずっと積読だったこちらを。 様々な、形に囚われない「恋愛小説」。前半部分は、心がひりつくような作品が並び、ちょっと読むのがしんどくなりそうに…ところが「森を歩く」以降、心が温かくなる作品が次々と… その人がその人であること、自分が自分でいられること、そんな関係性の居心地の良さを最終的に感じ取ることの出来た作品 |
作者:ジェームズ・サーバー 翻訳:村上春樹 出版:ポプラ社 ■とても分かりやすい寓話。そして、世界が永遠に学び取ることのできない「何か」 それでも、あとがきで村上春樹さんが書かれているように 「世界で最後の花を守るために、一人ひとりがひとつひとつの力を合わせて行くこと」ができるといいのにな、と思う | 題名:世界で最後の花
作者:須藤古都離 出版:講談社 ■カメルーンで生まれたニシローランドゴリラのローズ。 彼女は幼い頃から母親とゴリラ研究チームの教育を受けて手話を操り、人間と会話することができた。 アフリカの大自然の中で暮らしたり、その才能が反響を呼びアメリカの動物園で暮らすこととなるが、その動物園で夫のゴリラが射殺されてしまう。 その事件に憤慨したローズは人間相手に裁判を起こす…! 表紙とタイトルに惹かれて、最初の数行を読んで、ポップな話かと思いきや、ものすごく問題提起してくる作品でした。 そもそも、この作品は実際に起こった『ハランベ事件』をモチーフに描かれたものらしい。 ローズがあまりに知的で、冷静に物事を捉える様がなんだか現実離れしていて、そういう私の感じ方こそが、心の何処かでやはり生き物の頂点は人間だと驕っているのかもな…なんて考えてしまいました。 動物に人権…なんて、かんがえたことなかったけれど、そこについて世界がもっと真剣に考えることができたのであれば、社会がもっと生き物に対して、その命の重さに対して、配慮した社会づくりができるのかもそれない。 | 題名:ゴリラ裁判の日
作者:江國香織 出版:新潮文庫 ■11人の少女の、かけがえのない夏の記憶の物語。 言葉にしたいけれど、うまく言葉にできない、そんな素敵な読後感を今回もくれた江國さん大好きです | 題名:すいかの匂い
作者:小森陽一 出版:集英社文庫 ■海猿の原案者でもある小森陽一さんら初めまして。 表紙の宇宙服が気になって、宇宙が出てくるSFかな〜と思いきや、目指すは地下。 ケイビング(洞窟探索)の描写が面白くて、もっとそこを掘り進めてほしかったり、なんならケイビングの小説を読みたくなるくらい魅力的だった。 前代未聞のことにチャレンジする割には展開が早くて、他の陰謀も相まって、なんだかお腹いっぱいになる作品。 帯で大吉先生が映像化について言及されているけれど、確かにこれが映像化したらかなり面白そうだと思いました。 主人公の雰囲気や、社内の人間関係などなど、図書館戦争とものすごく似たものを感じた。 | 題名:インナーアース
作者:木皿泉 出版:河出書房新社 ■またまた初めましての作家さん。 いくつか作品の表紙を見かけたことがあって、勝手に女性作家さんだと思っていたけれど、夫婦脚本家さんなのですね。 43歳にしてこの世を去った小国ナスミ。 各章ごとに、ナスミと関わった登場人物が、ナスミを、ナスミの言葉を思い出し、自分の胸にストンと落としていく。 こんな風に、死んだあとも誰かの心に残っていくような生き方をしたいな。 ナスミさん、特別優しいとか、出来た人とかではないんだけれど、ガハハと笑う豪快な感じとか、やっちゃえ〜!と走ってしまう感じとか、すごく好きだった。 人は誰かからこんな風に受け取って、そしてそれをまた誰かに贈って生きていくのでしょう。 | 題名:さざなみのよる
作者:柚木麻子他 出版:文集文庫 ■珍しくアンソロジー。 集中力が途切れてしまうのであまりアンソロジーは好みじゃないのですが、最初の柚木麻子さんの「エルゴと不倫鮨」と最後の柴田よしきさんの「どっしりふわふわ」がとっても良くて、アンソロジーでは珍しく手元に置いておきたい作品に。 特に最初の柚木麻子さんのエルゴと不倫鮨。もう、最高!大好き! おじさんが若い子を連れて行く薄暗くムーディな『今風の鮨』を出すお店。そこにいきなり登場してその場の空気を掻っ攫っていく、抱っこ紐で子どもを抱いたぼさぼさ髪の女性ー もうこれだけでインパクト大!!出てくる料理もどれも美味しそうだし、ラストはやっぱり柚子さんらしい終わり方でした。 料理の表現が素敵な作品に間違いはなし(完全なる持論) | 題名:注文の多い料理小説集
作者:上村渉 出版:書肆侃侃房 うつくしい羽とあさぎり、の2篇が納められている。これまた初めましての作家さん。 装丁が美しくて、手に取ってみました。 ■うつくしい羽 ひょんなことから何もかもを失ってしまい実家に出戻った主人公。余計な世話を焼いたばあちゃんのせいで、縁もゆかりもないフレンチレストランのオーナーに拾われ接客係をすることに。 そこのオーナーの作る料理は確かに素晴らしいが、地産地消にこだわり、こだわりが強いからこそ他のスタッフに求めることも多く、仕事中も怒号が飛び交う。 続かないと思っていた仕事なのに、気づけば休みには都内へフレンチを食べに行くように…。 料理人として師事していないからか、各スタッフが尊敬の念を抱き関わるオーナーにもジョークを飛ばせる主人公。 そして、仲が深まることで見えてくるオーナーの過去。 料理が繋ぐ人と人との形。 料理の表現が美しくてお腹が空いちゃう。そして、現代の「消費される食」の問題にも一石投じているのではないかな。 ■あさぎり 女だらけで営む弁当屋。もともとは嫁ぐ形で店の運営に関わってきていた主人公だけれど、夫が亡くなり、フィリピン人のリナさんを雇い、娘が孫を連れて出戻ってきた。 そんな中勝手に娘が学校と話をつけて、中学校の職業体験で生徒を預かることに。 その時に預かった女子生徒「田代」と弁当屋の家族の、血の繋がりのない繫がりのお話。 こちらは、描きたかったものはなんとなく分かるけれど、ちょっと消化不良な感じがした。 どちらも御殿場が舞台のお話だけれど、著者さんが御殿場出身なのだそう。 また機会があれば、別作品も読んでみようかな | 題名:うつくしい羽