毎年真冬に数回北海道に一週間ほど滞在するのだが、もう10年以上もこういうことをしているので特に行くところもなく。
毎回同じホテルに泊まるので、スタッフの皆さんもほとんどが顔なじみ。チェックインの日なんかは入り口に入って目が合うと、フロントデスクにたどり着くまでに書類を出して待っていてくださる。ホテルの皆さんも(この人は毎回一週間以上も札幌にいて何をしているんだろう。すすきのに泊まる一般的なおじさんたちと違ってきれいなお姉さんを連れて帰ったり、きれいなお姉さんのお店に行ってる様子も一切ないし)とどこか不思議に思っていると思う(笑)。
では、何をしているのか。村上春樹さんの『羊をめぐる冒険』のいるかホテル、『ダンス・ダンス・ダンス』のドルフィンホテル的な滞在をしています。
朝起きて(今日は何しよう)と考えて、外に出る。朝食を食べたい気分になったら、本の中でよく出てくるダンキンドーナツはもう日本にはないのですすきののミスタードーナツでドーナツ一個とコーヒーの朝食をとる。
ダンキンドーナツっていつ頃日本を完全撤退したんでしたっけ、僕が最後に名古屋で見たのは1987年ごろだったと思う。ダンキンは彼のエッセイにもよく出てくる。アメリカ本国にはダンキン(ダンクin)の元になった、コーヒーに漬けて食べるための取っ手がついたドーナツがあると書いてあったので、アメリカに行くといつもチェックするのだが、もうたまにしか作っていないらしい。昔進学してボストンに住んでいた古い友人は見たことがあると言っていた。
先日行った韓国、仁川国際空港には制限区域内にあったね。ダンキン。もちろん取っ手付きドーナツを探しました、残念ながらなかったけど。
村上春樹の「僕」的にすすきののミスタードーナツで、外の往来を見ながらのんびりとコーヒーを飲んだ後は、これまた『ダンス・ダンス・ダンス』的に映画でも観ようかと映画館に行き、適当に上映している映画を観たりもする。
・・・五反田くんは出てこない(笑)。
映画を観ない時は書店に寄って、特にお目当てのものもなくなんとなくブラウズする。気が向けば一冊購入して、ホテルに帰ってベッドに寝転んで読む。
だいたいこんな感じで、小説とは違って何も事件は起こらず日々が過ぎるのを楽しむ。
一度だけこんなことがあった。大雪で新千歳を発着する航空便が数日マヒしたときだったか、地震の時だったかは忘れたが、僕の滞在中数日ホテルに人がほとんどいないことがあった。フロントデスクの前を通ってもスタッフの皆さんは特にやることもない様子だった。
ある日夕飯をとって夜遅くホテルに戻ると、暇そうにしているフロントデスクの皆さんに軽く会釈をしてエレベーターで自分の宿泊している階に行ってエレベータの扉が開いたら、真っ暗だったことがある。非常灯の明かりだけ。
自分の押し間違いで、人が少ないので客を入れていない階に行ってしまっただけなんだが、春樹ファンのアホなんで(笑)、ワクワクしながらエレベーターを降りて誰もいないその階を非常灯をたよりに一周歩いてみた。
羊博士もいないし、羊男が出てきて「きみは鼠には会えないよ」も「早く帰るんだ」も「踊るんだ、踊るんだよ」とも言ってくれることはなかった(笑)。
(羊男のセリフはなんとなく記憶している物を書いただけなので、たぶん間違っています(笑)。ご容赦ください)
ただ、札幌のホテルでのそのシチュエーションが嬉しくて(笑)。誰もいないホテルのその階を一人でにやにやしながら徘徊したのだった。
今回もそんな滞在。この冬は札幌だけであと二回、各一週間~10日ほどこのホテルを予約済である。
これでホテルステイタスも維持できるので、それを活用して次の次の年末はいつものポルトガルのお気に入りホテルを楽しむ予定。
さて、今日は何をしましょうか。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます