The Phantom of the Opera (Original 1986 London Cast)Andrew Lloyd Webber, Michael Reed, David Firth, John Savident, Michael Crawford, Rosemary Ashe, Sarah Brightman, Steve BartonReally Usefulこのアイテムの詳細を見る |
深夜~早朝、メンテナンスがはいってたんですね。事前に告知できなくて申し訳ありませんでした。
東京は連日の風雨もようやく治まり、本日は快晴です。
さて二日続けての『オペラ座』話、本日は初演ロンドンオリジナルキャスト版CDについて。
しかし、このCDには困った所がある。
まずdisc 1、2の内容がそれぞれ第一幕第二幕となっているのだが、どちらも1トラックだと言うこと。聴きたい曲は自分でタイムを憶えて早送りするしかない。
次に、添えられている日本語対訳がひどい!エ○サイト翻訳かと思うほどの代物。映画の字幕で最も槍玉に挙げられていた「情熱のプレイ」は、この対訳に既出だった…
数々の名曲のみ楽しみたい場合は、ハイライト版をお奨めします。
それでもこれは、歴史的な意味だけではなく、聴くべき価値のあるCDだと思う。
と言いつつ、実は私がこれを初めて聴いたのは映画公開後のことで、そして本当に驚かされた。
まずは、旧ブログでも少し触れたが、クリスティーヌがサラ・ブライトマンだったこと。彼女のCDは何枚か持っていたし、好きな歌い手さんだというのに、恥ずかしながらそのことを知らなかったのだ。
でも、なるほど、あの声あってこそファントムも入れ込むわけだと納得した。
そして、それ以上に驚かされたのが、タイトルロールのマイケル・クロフォードその人であった。
四季版などの印象もあって、ファントムの声と言うと、何となくセクシーなハイバリトンという先入観を持っていた。
が、オリジナルのクロフォードの声は、テノールどころかメゾソプラノくらいまでカバーしているのではないかと思うほど高く、中性的な声なのだ。
"The Music of the Night" の歌い出しなど、セクシーな声と言うより「嫌らしい猫撫で声」そのもの。断っておくが、これは褒め言葉である。
その少し前の "I have brought you…" の件りで、日本でいう「甲(かん)の声」を響きわたらせることで、忍び寄るかの如き「猫撫で声」がより効果的なものとなり、一方、歌い上げるべき所では、それこそ天上まで届くような声を聞かせてくれる。
ファントムは主役であり悲劇的人物ではあるけれど、「ヒーロー」ではなく、それどころか生身の人間ですらないかも知れない。
彼はトリックスターであり、或る意味「道化」でさえあり-----やはり「怪人」である。
そのことを的確に表現し得たのは、私の知る限りクロフォードと彼の声だけだ。
ここで今年公開された映画版について少し触れると、ファントム役にジェラルド・バトラーという人選や、その年齢設定、歌唱力への不満はあちこちで目にするが、あの映画では、ファントムを「怪人」や「幻影」ではなく、観る者が共感を抱けるひとりの人間、ひとりの青年として描こうとしていたのだから、それには適った人選であり演技であったと思う。でも(…以下数行伏せますが、バトラー氏ファンはお読みにならない方がいいと思います)、彼の場合、"The Mirror" の歌い出しが、クロフォード氏と別の意味であまりにも衝撃的で…(笑)。クライマックスの三重唱等、正直言って映像なしでは(つまりサントラで音声だけ聴いていては)堪えられない個所もあった。
但し、私自身はファントムに二枚目であることもセクシーさも求めない。彼はあくまでも「異形」の存在であるべきで、その意味では、バトラー以前に候補として名の挙がったヒュー・ジャックマンもアントニオ・バンデラスも、歌唱力はともかく適任とは言えない。
そして、映画に於けるファントムのキャラクターの変化によって割を食ったのは、むしろ、二人の男性の間でふらつく優柔不断な女性にしか見えなくなってしまったクリスティーヌの方だったのではないだろうか。
彼女の「恋人」はあくまでもラウルであり、エリックへのキスは、キリスト教的な自己犠牲に基づく慈悲と救済の行為でなくてはならないと、私は思う。
一方、これも旧ブログで書いたことだが、舞台とは、観客と地続きの場所でそれこそ生身の人間が演じていながら、映画やTVより遥かに、日常と隔絶した異界へと観る者を誘なう装置である。
そういう「場」に於て、ファントムの純情、狂気、幼児性、父性、プライド、生身の存在ならぬ不気味さと、生身の男の欲望-----の全てを内包し、そして昇華し得たのが、マイケル・クロフォードのあの声で、このCDを聴いて初めて、私は「音楽の天使」を納得した。
初演当時すでに44歳であり、二枚目とは言えない彼だったからこそ、その声はなおさら突出したものと感じられたのだろうか。
第一幕ラストのファントムの悲痛な叫びと、「シャンデリア落とし」の狂気に充ちた哄笑、そして "Go!!" には、いろいろな意味で鳥肌が立ったし、第二幕最後の、それと対(つい)をなす絶唱には胸打たれる。
私自身は恋愛ものより「幻想と怪奇」を愛する類いの人間だが、しかしそのジャンルと悲痛なラブストーリイとは、思いのほか相性がいいものなのだ。
このミュージカルのラストを締めくくるのは(実は原作が既にそうなのだが)、苦難を乗り越えて結ばれた恋人たちではなく、彼らに取り残された男である。
にも関わらず、そこに在るのは「愛の勝利」に他ならない。
クリスティーヌとラウルの愛がファントムに勝利したという意味だけではなく、エリックもまた、愛によって(彼が欲した形ではないが、彼が最も必要としたものによって)救われるのだから。
それにしても……もし、ロン・チャニーの外見にマイケル・クロフォードの声のファントムなんてものが存在したら最強だろうな、などと思ったりもする。
それこそ本当に「怪人」になってしまうかも知れないが。
読んでるうちにウズウズしてしまったので此方にもお邪魔します。
実は、私、マイケル・クロフォードのファントムは知らないんですよ。
あんなに有名なのに。
某DVDでコルム・ウィルキンソン(カナダ版ファントム)に惚れてしまい
カナダ版サントラを聞いてしまったので。
まぁ普通はコルムと言えばジャン・バルジャン(レ・ミゼラブル)なのでしょうが・・・
でも、クイークェグさんのお話を聞いてたら凄く聞きたくなってきました。
カウンターテナーのファントム。
確かに、中性的な方が “音楽の天使” っぽい気もしますし、
ただ「美しいだけ」でない声というのを是非聴いてみたいです!!
というか、声を想像しただけで鳥肌が立ったのは初めてですよ、私!!(←興奮しすぎ・・・)
私もファントムに二枚目であることやセクシーさを求めないと言う点では同感です。
姿形ではなく、あくまで声で人を魅了するのがファントムだと思っているので。
まぁ、声が良ければセクシーであろうがなかろうが どっちでもいいのですが
セクシーでなく二枚目でもない方が声の美しさが引き立つだろうとは思います。
そういう意味では、ジェラルドさんは私のファントム像からは かなりズレてました(苦笑)
それに、クイークェグさんの仰るとおり、ファントムがあんなだった所為で
(ごめんなさい。誤解を招くような書き方ですが、ジェラルドさん自体は好きだし、演技も良かったと思ってます)
クリスティーヌも微妙に嫌な女になっちゃって、物凄く中途半端な映画になっちゃった
というのがあの映画の正直な感想です。
ところで、あまり好きではないと言いつつ、ついつい見てしまう Oklahoma!
あのお話のジャドを見ていると妙に思い出すのがファントムさんだったりします。
ただ、クリスティーヌとローリィの「嫌悪の対象」に対する接し方が違うだけで
こうまで違うのかと・・・
ジャドは全てを失って どん底のまま。片やエリックは彼女のキスで救われる。
せめてローリィがジャドの思いを否定せずにちゃんと聞いてやりさえすれば
もう少し救いのあるお話になったのになぁ、と思う今日この頃です。
>misao様
まあ、ここに書いたようなことは単なる私の主観ですので。
クロフォード氏もああいう独特な声と歌い方なので、好き嫌いは分かれるようですが、やはり一聴の価値はあると思います。
>DJ様
え!コルム・ウィルキンソンのファントムなんてあるんですか!?そ、それはそれで聴いてみたいです。
上でも書きましたが、クロフォードは別に「美声」じゃないんですよね。歌い手としてはむしろキャラクターシンガーだと思うし、張りはあるけど「気持ち悪い声」と言うか…でも、その気持ち悪さが癖になるんですね(笑)。
サラ・ブライトマンの声は美しいだけではなくて、ファントムを救済に導くことを信じさせてくれる、やはり「天使の歌声」ですよ。
映画は歌よりも(苦笑)映像の美しさが素晴らしいと思いました。特にOvertureと共にオペラ座が「復活」していく所は、映画ならではの表現に感動しました。
ローリィ&ジャドとクリスティーヌ&ファントム、確かに少し似ているかも知れませんね。
でも、クリスティーヌとファントムは、音楽を通じた師弟の関係や、その時築かれた音楽家同士としての信頼が根底にあったからこそ、彼女は「怪人」エリックを見捨てることが出来なかったのではないかと思います。
多分まだアマゾンで購入可能だと思いますよ。
“Music of the Night”なんかは特に好きです♪
「癖になる気持ち悪さ」ですか。
それは何が何でも聞かないと!!(笑)
でも、クロフォードのファントムがあれほど有名なのは、やっぱりその「癖になる気持ち悪さ」が怪人にピッタリだったからなんでしょうね。
コルム・ファントムも人に言わせれば「艶っぽさに欠ける声」なんだそうですが(苦笑)
クリスティーヌ&ファントムは根底に信頼があったからこそ、というのは、言われてみれば、確かにその通りなのですが、やはりこの点で「オペラ座~」の方が好きだなぁと思ってしまうのです・・・
まぁ、あんな悪夢を見た後じゃ仕様がないかな?とも思いますが(苦笑)
顔は仮面で隠れていても、声は確かに彼の声で、「おお~!」と思いました。