「不可視の両刃」放射線に挑む~英国大学院博士課程留学~

英国に留学して放射線研究に取り組む日本人医師ブログ

2016ノーベル生理学・医学賞の単独受賞 ~大隅良典教授とオートファジー~

2016-10-03 | 学術全般に関して
大隅良典教授が今年のノーベル生理学・医学賞を単独受賞されました。
単独受賞というと、湯川秀樹博士、利根川進博士に続く3人目です。「単独だから3人分の価値がある」というと言い過ぎかもしれませんが、その分野で突出した貢献が認められたのだろうと思います。たしかに水島昇、Daniel J. Klionskyの両氏にも受賞の可能性はあったと思いますが、単独ということならば、それはやはり「大隅良典」の名前だけだったのでしょう。

医学部生だった頃、たしか2009年だったと思いますが、大隅先生の「オートファジー(autophagy)」の講義を初めて拝聴した時のことを思い出しました。
ご子息も医師ですが、私の大先輩です。私の同級生もたしか東工大の大隅研にお世話になっていましたし(飲み会が多いとぼやいていましたが)、これまでのノーベル賞受賞者の中では最も親近感を抱くことが出来る先生です。「オートファジー」という言葉は一般にはあまり知られていないかもしれませんが、タンパク質の再利用は細胞にとって非常に重要な意義があり、このメカニズムの破綻は多くの疾患病態に関連します。大隅先生は、このオートファジーに関わる遺伝子の多くを同定し、その分子基盤を明らかにされたのでした。生理学・医学賞の受賞に相応しいテーマだと思います。おそらく今後多くのテレビ番組などで採り上げられるでしょうから、一般の人々はそちらを参考にされると宜しいでしょう。

「誰もやらないことをやりなさい」と、大隅先生はかつて我々に話してくれました。
他人と違うことを恐れずに、私もまた自分だけの道を進もうと思います。