蓮月銀也

小説、呟き等々……。

time goes on 物語 第10話 学年のアイドル

2024-08-03 19:50:35 | 小説

 僕は、格闘ゲームに熱中していた。しかし、ガラガラと部室のドアが開く音が僕の気をそちらにそらさせた。あっ、来たのかな?

「みんな、おはよう」

「おはよう!」

 みんなと同時に元気よく挨拶をする。まず、短いスカートが僕の目に飛び込んだ。相変わらず可愛い声だな。いや、声だけじゃなく、そのセミロングの髪と顔も可愛い。やはり、学年のアイドル的存在は違うな……河井美樹《かわいみき》さん。

「お菓子と飲み物を買ってきたよ」

 手提げ袋を胸のあたりまで掲げて、微笑んだ。流石《さすが》、河井さんだ。気が利くなぁ。ちゃんと、エコバッグだよ。君の愛は地球を救うよ!


  *****


 由利と河井さんが紙コップを配ってくれた。そして、エコバッグからファミリーサイズの容器に入った飲み物を取り出すのが見えた。コーラか。ZEROではないみたいだ……。

 コーラのキャップを開けようとする河井さんを眺めていた。

「うっ、うーん。固いよ。この、黒くて、太くて、固いよ!」

 キャップが回せなくて、思わず叫んだのだろうな。僕は、笑いそうになるのを堪えた。そうして見つめていたら、視線を感じたのかな? こっちを向いたので、目が合った。

「あっ、僕が開けようか?」

 小さく頷くのを見ると、駆け寄りコーラを受け取る。そして、難なくキャップを開けた。

「ありがとう。やっぱり男子だね。じゃあ、いっきに飲むやつ、やっちゃう?」

「えっ? やりません」

「うふふ。冗談よ。コーラ入れてあげる」

 び、びっくりしながら僕が紙コップを持つと、微笑みながらコーラを注いでくれた。

「河井さん、ありがとう」

「呼び方だけど、美樹でいいよ。れ、蓮輔」

 少し俯きながら、そう言う彼女の頬は、赤いように見えた。そして、僕の心は、炭酸の泡のように弾《はじ》けていた。



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