蓮月銀也

小説、呟き等々……。

time goes on 物語 第7話 先輩

2024-08-03 19:11:24 | 小説

「ぐはっ!」

 佐戸の叫び声が耳に入った。いきなり、何かが飛んできて、顔面に直撃したようだ。奴らの動揺が感じられる。

「こーら! 雉山! 同じ部の女と密着同伴登校か? ウイッ」

「先輩!」

 よろよろと歩きながら、近づいて来る制服姿。先輩だ。先輩を見て、僕は、笑顔になり声を上げた。

「だが、その肉食獣の雄的積極行為は、いいぞ! 男子は、そうじゃないとな。ヒック」

「先輩、まさか酒に酔ってます?」

「馬鹿野郎! 酒饅頭《さけまんじゅう》が怖くて、祝日登校ができるかよ! ヒック」

 酒饅頭で、あんなに酔う人間いるのかなぁ? アルコールは熱で飛んでると思うげど……。先輩は、いつも朝食は吉備団子なのに。

「何者だ!」

 その叫び、ゴリラの威嚇《いかく》。もはや敵大将となった、後利主将は標的《ターゲット》を先輩へと変えている。

「ったく。いきなり、叫ぶなよ。酔いが醒めちまうぜ。俺は、こいつらと同じ部の部長だ。姓は桃尻《ももじり》、名は呂伊弥《ろいや》だ!」

「そうか、部長か。なら、お前に俺の怒りをぶつけてやろう」

 あの主将は、もう本気だな。喧嘩になるのかな。桃尻先輩も身長では、負けていないけど。

「飲んだ吉備団子! 吐かんとけよ!」

「俺は、牛か!」

 先輩の啖呵《たんか》を切るのと、ゴリラ似の男のつっこみ。僕は、こけそうになる。奴らもガクッと体が傾いた気がした。

「部長! 後は、よろしくね」

 あらら、由利め、素早いな。駆け出しながら、舌なんか出しちゃって。逃げペロ?

「行け、雉山! 由利を守るんだ!」

「で、でも?」

「いいから行け!」

 僕は先輩に頷き、由利の後を追って駆け出した。先輩、どうか御無事で……。



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