「嫌だね。なんで私が、あんたらとお茶しなきゃならないの?」
「おいおい、そう冷たくするなよ。うちの主将《キャプテン》が是非にと言っているんだからさ」
なるほど、由利は。進学の巨人達にナンパをされていたのか。五人組の目の前に来たのは、いいけど……や、やっぱ、でかいちやー! 何故か土佐弁で思う。
「まぁまぁ、お兄さん方。この娘《こ》は、嫌がっているじゃないですか。」
猿田は、行動が素早いな。物怖じしないのは、親譲りかな? とにかく偉いぞ。
「ん? なんだお前は?」
不機嫌そうな巨人の一人の言葉に猿田が微笑んだように感じた。
「今、なんだ君《ちみ》は、って言った? そうです! 私《わたす》が」
「んぐぐ」
「ゆ、友人です」
犬養が咄嗟に猿田の口を手で塞いで、代わりに返答した。話が拗れるのを恐れたのだろう。
「お、誰かと思えば、犬養じゃないか。」
「久しぶりだな、佐戸《さど》」
にやけた顔の相手に対して、犬養の顔は曇り、佐戸と呼んだ男と目を合わせようとはしなかった。
「お前、バスケを止めたのか? こんな低身長《マイクロ》とつるんでよ」
「……別に、お前に関係ないだろ」
顔は、冷静だが拳を握りしめているな。悔しいんだな犬養。
「私、彼氏いるから! これが私の男だから!」
硬直《フリーズ》した場を動かす言葉を叫んで、由利が僕の右傍に寄り、腕を組んだのだ。僕は、生き延びる事が出来るか?
「お前らいつの間に! んぐぐ」
空気を読めない男の猿田は、犬養によって再び口を塞《ふさ》がれた。
「なんだと? 彼氏だと?」
「あ、後利《ごり》主将」
低い声で話しながら、奴らの中の一番背の高い男が佐戸の横に現れた。僕を睨んでるよ。まさか、決闘とか言わないよね?
「彼氏と言うのは、本当なんだな?」
「本当よ♡ ね、蓮輔」
由利は、躊躇《ちゅうちょ》せずに答えて、体を密着させてきた。ああ、いい匂いがする。いや、それよりもだ。この柔らかい二つの感触が……。でかいちやー!
「証拠をみせろ」
後利主将が、まだ疑いの目で僕を見ている。慣れてない雰囲気を感じたのかな?
「接吻《きす》だ! 接吻を見せろ! 俺を騙したら、分かっているだろうな?」
「ええっ!」
僕は、思わず驚きの声を上げた。