さんぜ通信

合掌の郷・倫勝寺のブログです。行事の案内やお寺の折々の風光をつづっていきます。 

2021 卯月つれづれ 震災関連本二冊 

2021-04-15 14:24:05 | 随流去

今年は震災から10年という事で、各地でいろんな行事が行われました。
鎮魂の法要やシンポジウム、映像や出版物など、個人や団体を問わず、
様々な形で東日本大震災の記憶や教訓を心にとどめるための行事が行われました。

倫勝寺の属する曹洞宗でも、発災の時間にあわせて法要が行われたり鎮魂の鐘が撞かれました。
当日はあらためて被災された皆様の胸中に思いを致すとともに、お手伝いに行った被災地の方々の今に思いをめぐらした次第です。

日本は本当にいろんな自然災害が起こるところで、あれからどれだけ沢山の水害や地震、台風の被害があったことでしょうか。

ブログにも幾度か書きましたが、私が兼務する昌龍寺がある千葉県鋸南町も、台風で甚大な被害が出ました。
台風による被害で直接の死者が出なかったのがせめてもの救いでしたが、未だにブルーシートをかけた家も目につきます。

あるお檀家のお母さんは、屋根瓦が吹き飛ばされた家を守って頑張っていましたが、
経済的な事情から保田ではもう生活ができないと諦め、千葉市内に引っ越していかれました。
いろんな手続きや家の売却整理を済ませ、息子さんの家のすぐ近くにアパートを借り、ようやく落ち着いた生活ができると喜んでいました。
しかしそんな喜びもつかの間、病気がみつかり、あれよあれよと症状が悪化してつい最近亡くなってしまいました。

良く働くおばさんでした。
給食の小母さんを長く勤め、旦那さん、お母さんの看取りをし、独りになってからは東京の小学校で働き、家に帰れば草取りをし・・・
働くだけでなく、お孫さんやお友達に囲まれて楽しく過ごした時間があったことも、葬儀場に飾られた沢山の写真からうかがい知ることができました。

昨春、引っ越し前にお仏壇の整理を依頼され、ご自宅で読経したときにお会いしました。
いつもと変わらぬ笑顔で冗談を言いながら、それでも寂しさを隠せずにいた横顔が想いだされます。
千葉に行っても頑張りすぎないで適当にやるんだよ、と声をかけたのが最後になりました。

被災した地元に残って頑張ることも大変ですし、他所に新しい住まいや暮らしを得ても、慣れるまでに時間がかかります。
さまざまな事情があり悩みぬいて選んだ人生ですから、私がいまさらなにかいう事もできませんが、
災害や引っ越し、ひとり暮らしやいろんな心労が重なって体調を崩されたのかな、と心を痛めたことでした。

お葬儀の時、棺に入ったお顔は闘病疲れもあって少し痩せていましたが、それでも生前の元気な様子が伺えるいいお顔でした。
息子さん娘さん方の看病介護もあって、闘病生活はきっと幸せな時間だったのだと思います。

無事にお彼岸にお渡りいただけますように、と心からお祈りし読経させていただきました。

そのお葬儀の前に読んでいた本が二冊あります。

内館牧子さんの「小さな神たちの祭り」
金田 諦應さんの「東日本大震災:3.11生と死のはざまで」

両書とも震災関連の本ですが、金田さんは震災以降、傾聴活動を続けている曹洞宗のお坊さんです。
こちらは毎日現場で呻吟し懊悩しながら活動された方の、被災者や亡くなられた方への想いの詰まった本。

内館さんの方は心温まるファンタジーですね。
仙台の東北放送(TBC)開局60周年あわせて放送されたドラマをノベライズしたもの。
ラストに泣かされます。

お時間があればぜひ。

・・・・・・

園内は日増しに緑が濃くなってきました。

ツツジの花数も増えてきています。

園内奥の藤棚。今年もたくさん花房をつけています。

今日はもう一本。



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