私が働く介護施設に入所されているI垣さんには、物盗られ妄想があります。
売店ご来店時や廊下でお会いした時など、とにかく顔を合わせると、決まって同じストーリーが始まります。
「ちょっと聞いてちょうだい。
私が買ってきたコーヒースティック(お湯で溶かすやつ)を、誰かが持って行きますねん。
それも、憎々しげにビリ〜っと破いてあってね。2本だけ残して、あとは全部取って行ってしまって。
私がそんなに憎いのかって聞きたいわ!
トイレットペーパーも、いつも持って行かれてね。紙がなかったら、一体何で拭けといいますねん!
テレビのリモコンも盗まれるし、爪切りも5個あったのが、いつの間にか1つしかなくてね。
以前『盗まないでください』って手紙を書いて置いてたら、『盗んでません』って返事が返ってきて!
もぅ、ほんまに私死にたいわ!
そんなに私が憎いなら、どうぞ殺してくださいと言いたいですわ!
部屋に置いてたら盗まれるから、いつも持ち歩かなあきませんねん。ほんまにもぅ…!」
と言うI垣さんのカートには、いつもトイレットペーパー、尿取りパッド、コーヒースティック、リモコンなどが入っています。
これでも要約してありますが、実際は、話し始めたらエンドレス。
同じ内容が延々とリピートされ続けます💦
この話を初めて聞いた時は「盗人がいるなんて!」とビックリしたものですが、実はI垣さんの妄想だと知ってからは、毎回、さてどうやって切り上げようか…とばかり考えている私😅
要所要所で
「2個だけ残ってるんですよね?」
「盗んでませんって返事が来たんですよね?」
と、オチを先に言ってみたりしますが、I垣さんには一向に通じません💦
とにかく、話し出したら止まらないので、切り上げるタイミングが難しいのです😰
もちろんI垣さんの「聞き役」は私だけに限りません。
廊下や事務所の前で
「あらぁ、それは大変ですね〜」
「困ったもんですね〜」
「死にたいなんて言わないでくださいよ〜」
と相槌を入れている『I垣さんにつかまった人🤣』を見かけると、みんな内心「おつかれ〜!」と苦笑いしながら通るのです。
明日は我が身でしょうかね、いやi垣さんの方ですけど…
初めて遭遇するとビデオとか撮影して、「ほおら、自分で飲んだでしょ」なんて説得しがちですが事態が大きくなるだけだろうから、ベテランさんみたいに「はいはい」ってスルーするのが一番なのでしょうね🤔
職員も看護師も、みんな『I垣さん暦』が長い人は上手にスルーしています。
無視ではなく、サラリと上手く切り上げてる感じですね〜。
入居者のみなさんは、本当に個性豊かなので(笑)そういうスキルも必要なんですね〜😆