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認知症の予防は40代から! 脳の老化を防ぐ5つのポイントとは?続きもあります

2021-12-05 15:30:00 | 日記

下記の記事を日経グッディ様のホームページからお借りして紹介します。(コピー)です。

 

知症は40代50代からの予防が重要だ。若い頃からの認知症治療や研究に取り組む医師らの啓発団体「40代からの認知症リスク低減機構」は、8月27日に「脳寿命を延ばす いまの状態を把握し、対策を考える ~脳と腸からはじめる認知症予防の可能性」と題するオンラインメディアセミナーを開催した。

当日は認知症をテーマにした3つの講演があり、それらを3回にわたって掲載する。まず今回は、アルツクリニック東京院長で順天堂大学名誉教授の新井平伊さんに、認知症の早期発見と予防法のポイントを解説していただいた。

 

働き盛り世代でも物忘れが増えてきたら、大丈夫かなと心配になるだろう。脳の老化のサインを見つけて早めに対処しよう(写真はイメージ=123RF)。

認知機能低下を早期発見しよう

認知症の代表的なものにアルツハイマー型認知症があるが、昔は、健康かアルツハイマー型認知症かの2つの分け方だった。しかし、健康な人がいきなりアルツハイマーになるわけではなく、最近では、認知機能が落ちてきた「軽度認知障害[MCI(*1)]」と、さらにその前段階の「主観的認知機能低下[SCD(*1)]」があり、4つの段階に分けて考えられているという(下グラフ)。

昔はアルツハイマーか、健康かの2つの段階しかなかないと考えられていたが、最近では、アルツハイマーになる前に、軽度認知障害(MCI)と主観的認知機能低下(SCD)があると考えられている。つまり「未病」にも3つの段階があるという。

認知症は、ある日突然発症するわけではなく、徐々に進行していく。中でも、アルツハイマー型認知症で原因として考えられているのは、ある物質が脳の中にたまっていくからという。

「アルツハイマー型認知症は、アミロイドβタンパクが脳に蓄積し、脳神経に障害を起こして発症すると考えられています。発症の20年くらい前から、アミロイドβは脳の中にたまりはじめます。そのためMCIやSCDの段階で気づいて予防することが大切です」と新井さんは言う。

*1 MCIは「Mild Cognitive Impairment」の略で、SCDは「Subjective Cognitive Decline」の略。

次のような症状は脳の老化のサインかもしれないので、早めに気づくようにするとよいそうだ。

  • なぜかイライラする
  • 眠れなくなる
  • 外出がおっくうになる
  • 趣味に楽しみを感じなくなる
  • ど忘れが増える
  • 同じことを何度も聞くようになる
  • 頭痛や胃痛がある

自分の脳の老化に気づくためには、認知機能をチェックするのもいい。例えば、「認知症ねっと」では、ウェブ上で無料で認知機能をチェックできる。気になる人は試してみよう。

もし脳の衰えを感じたら? 老化を予防するポイントは?

では、もし脳の衰えを感じたら、どうすればよいのだろう。世界保健機関(WHO)は生活習慣病が認知症に与える影響を発表している(*2)。こういった情報も含め、新井さんは脳の老化を予防するポイントとして次の5つを挙げている。

<脳の老化を予防するポイント>

・生活習慣病の改善

糖尿病、脂質異常症、高血圧、肥満、歯周病などの生活習慣病をきちんと治療する。

・対人ゲーム

麻雀、トランプ、将棋、囲碁のような対人ゲームをする。

・運動をしながら頭を使う

体操しながら歌う、散歩しながら計算するなど、体と同時に脳を使う。

・質のよい睡眠をとる

リズムを整え、質のよい睡眠を十分な時間取る。

・バランスのよい食事

お酒の飲み過ぎや間食・夜食を避ける。WHOでは地中海食(*3)を推奨しているが、バランスのよい日本食もよい。

*2 「認知機能低下および認知症のリスク低減 WHOガイドライン」を参照。

*3 イタリアやスペインなど地中海沿岸諸国の伝統料理「地中海食」は、オリーブオイルと魚介類の摂取が多いのが特徴で、心臓病の予防効果やダイエット効果が確認されている。ニューヨーク在住の2258人を対象にした調査からも、アルツハイマー病のリスクが低いことが分かっている(Ann Neurol. 2006 ;59:912-21.)。

対人ゲームは、人間を相手にすることでコミュニケーションを楽しめるし、予期しない反応が返ってきて変化に富んでいます。勝ち負けに一喜一憂して感情を揺さぶられることもあります。計算ドリルや漢字の書き取りを繰り返すよりも、脳の活性化にはいいと思います」と新井さんは勧める。

さらに新井さんは睡眠の重要性を指摘する。

アミロイドβタンパクは睡眠中に代謝され排出されるため、睡眠不足になると蓄積しやすくなります。いまは副作用の少ない優れた睡眠薬がありますから、どうしても眠れないときは活用するのもいいでしょう。寝酒は眠りが浅くなるのでお勧めしません」とのことだ。

「アルツハイマーは発症する20年くらい前から進行しているので、若い頃からの予防が大切です。また、薬やサプリメントに頼ろうとするよりも、普段の生活に気を配りましょう。食事は1日3回とるものですから、一番重要だと思います」と新井さんは力説する。

認知症を予防するためには、40代、50代でも油断せず、生活を見直していこう。

次回は、脳と腸が互いに影響を及ぼし合うといった最新研究の内容をお届けする。

(図版制作:増田真一)

 

脳と腸の意外な関係 腸内細菌が認知症に影響する?

認知症セミナー(中編)

2021/10/20 梅方久仁子=ライター

認知症は40代50代からの予防が重要だ。若い頃からの認知症治療や研究に取り組む医師らの啓発団体「40代からの認知症リスク低減機構」は、8月27日に「脳寿命を延ばす いまの状態を把握し、対策を考える ~脳と腸からはじめる認知症予防の可能性」と題するオンラインメディアセミナーを開催した。前回記事(「認知症の予防は40代から! 脳の老化を防ぐ5つのポイントとは?」)に引き続き、講演の内容を紹介する。

近年、腸の不調が脳に影響を及ぼすことが注目され、腸内細菌のコントロールが認知症予防につながるのではと言われ始めた。今回は、国立長寿医療研究センター もの忘れセンター 副センター長の佐治直樹さんに、認知症と腸内細菌の関係について解説していただいた。

 

腸内環境が脳にも影響を与える?(写真はイメージ=123RF)

認知症の危険因子とは

「認知症は、軽度認知障害[MCI(*1)]の段階で食い止めることが大切ですが、今のところMCIの段階で使える有効な薬はありません」と佐治さんは説明する。「認知症の危険因子には、年齢、遺伝子のように修正できない項目と、生活習慣など修正できる項目があります。修正できる項目は40%で、そのうち5%は高血圧、肥満、飲酒、糖尿病など食事が関わるものです」という。

認知症疾患診療ガイドライン2017」には認知症の防御因子として、適度な運動、余暇活動、社会的参加などとともに食事因子が挙げられているが、実際にはどんな食事がいいのか、どういう献立がいいのかなど、具体的にイメージしにくいという人も多いだろう。

脳と腸はつながっている?

食べ物と脳の関係を解き明かすために、佐治さんは腸内細菌に注目した。食事は腸内環境に影響を与える。腸内細菌やその代謝産物から、脳と腸が互いに影響を及ぼし合う関係(「脳腸相関」や「腸脳相関」と呼ばれる)を調べていけば、食事が認知症に与える影響も分かってくると考えたからだ。

腸内細菌と脳の病気の関係については近年研究が進んでいる。例えば2021年2月には有名な科学誌「nature」が、腸内細菌と様々な精神疾患との関係についての記事を掲載した。そのほかにも、アルツハイマー型認知症、多発性硬化症、パーキンソン病、脳卒中などが、腸内細菌と関係するのではという報告があるという(*2)。

「ヒトの脳腸相関については、様々な経路が想定されています。神経系活性経路や、免疫経路、内分泌の経路、代謝産物の経路などです。私は、腸内細菌が代謝する物質が脳に影響するという代謝産物経路に興味を持っています。脳に影響する経路が分かれば、それをうまく調整することで脳の機能を保護することにつながるのではと考えています」(佐治さん)

食べ物が体内に入ると、腸内細菌が食物を代謝し、その結果、様々な代謝産物が発生する。例えば、腐敗産物であるインドールや、悪い菌を抑制する乳酸・酢酸などが代表的な代謝産物だ。

「代謝産物が一つのカギとなると思います。食事によって、代謝産物は変わります。食事はいろんな病気に関連していますが、認知症もやはり関係しているのではと考えています」(佐治さん)

佐治さんらは、腸内細菌がつくり出す様々な代謝産物と認知症の関係を調査した(*3)。その結果、腸内細菌のいくつかの代謝産物は、認知症と関係があることが分かったという。中でも、アンモニア(*4)が認知症リスクとの関連が高く、乳酸は低いという結果が得られたという。

*3 Saji N, et al. Sci Rep. 2020 May 18;10(1):8088.

*4 アンモニアは食物中のタンパク質が代謝されるときにできる有毒な物質。ただし健康な人では、肝臓の働きによってアンモニアは無毒化され、尿とともに体の外に排せつされる。

また、佐治さんらの別の研究では、認知症の人と認知症ではない人では、腸内細菌叢(さいきんそう)はタイプが異なることが分かった。認知症ではない人に比べて、認知症の人の腸内細菌叢には、種類の分からない菌が増えているという。

認知症の人とそうでない人の腸内細菌のタイプ

認知症の人と、そうでない人の腸内細菌のタイプを比較したところ、認知症の人では「バクテロイデス」と呼ばれるタイプの菌が少なく、その他の不明な細菌の割合が増えていた。(元データ Saji N, et al. Sci Rep. 2019 Jan 30;9(1):1008.)

「現代的日本食」を好む人は、認知症になりにくい?

「日本食と認知症」「日本食と腸内細菌」については、これまで東北大学などで研究されてきたが、佐治さんらはこれらをまとめ、日本食と腸内細菌・認知症との関係についての解析を行ったという。

患者さんの食事の内容を調査して、どの程度日本食中心かを、次のようなスコアで表した

  • 伝統的日本食スコア… 米飯、味噌、魚介類、緑黄色野菜、海藻類、漬物、緑茶が多いと、それぞれプラス1点、牛肉豚肉、コーヒーはマイナス1点とする。
  • 現代的日本食スコア… 伝統的日本食スコアに加えて、大豆類、果物類、キノコ類が多いと、それぞれプラス1点とする。
  • コーヒーを含む現代的日本食スコア… 現代的日本食スコアのコーヒーをマイナスではなくプラス1点とする。

ご飯、味噌汁、焼き魚、野菜、海藻類、納豆…こういった和食を点数化して調査した結果は?(写真はイメージ=123RF)

解析の結果、認知機能がよい患者さんは、魚介類、キノコ類、大豆類、コーヒーを摂取する割合が多かった。また、「現代的日本食スコア」が低いと認知症の人が多く、高いと認知症の人の割合は少なかった。「現代的日本食スコア」と「コーヒーを含む現代的日本食スコア」が高いと、認知症の割合が低かったという結果も出たという。

海外の研究でも、MIND食やDASH食(*5)という健康によい食事をとっている人は、血液脳関門(*6)が保たれるという報告がある。また、国内の研究では、魚油(DHA)を多くとる人は認知機能低下のリスクが低く、豆類を多くとる女性は10年後の認知症発症リスクが下がるといった報告がある。

*5 MIND食とは、地中海食とDASH食を組み合わせた食事法。DASH食とは、アメリカで高血圧改善のために推奨されている、飽和脂肪酸とコレステロールを抑えてミネラル、食物繊維、タンパク質を多くとる食事法。

*6 血液から脳組織への物質の移行を制限する仕組みのこと。

「食事や健康に関する情報は、厚生労働省のe-ヘルスネットや農林水産省の『日本型食生活』のススメといったサイトに紹介されています。しかし、あまり知られていないようで、もったいないですね。もう少し分かりやすく知らせていく必要があるのかなと思います」(佐治さん)

これらのサイトの情報を活用して、自身の健康を保っていきたいものだ。

 

腸を整えるビフィズス菌。認知機能が改善する研究も

認知症セミナー(後編)

2021/10/26 梅方久仁子=ライター

認知症は40代50代からの予防が重要だ。若い頃からの認知症治療や研究に取り組む医師らの啓発団体「40代からの認知症リスク低減機構」は、8月27日に「脳寿命を延ばす いまの状態を把握し、対策を考える ~脳と腸からはじめる認知症予防の可能性」と題するオンラインメディアセミナーを開催した。前回記事(「脳と腸の意外な関係 腸内細菌が認知症に影響する?」)に引き続き、講演の内容を紹介する。

今回は、森永乳業株式会社研究本部基礎研究所長の清水金忠さんにビフィズス菌の特徴と認知機能の関係についての最新研究を説明していただいた。

 

写真はイメージ=123RF

ビフィズス菌が作る酢酸は、腸に良い働きをする

ビフィズス菌は主にヒトや動物の腸内にすむ細菌で、腸内環境を整え様々な病気を予防する。

健康によい菌としては、乳酸菌がよく知られている。乳酸菌は、糖を分解して乳酸を50%以上つくり出す菌の総称だ。それに対してビフィズス菌は、乳酸よりも多く酢酸をつくり出すという特徴がある(下表参照)。

酢酸は腸管内で様々なよい働きをすることが分かっている。例えば、有害菌の増殖抑制、腸管バリアの改善、抗炎症作用、抗メタボリック作用、O157感染防御作用、免疫グロブリンA(*1)の機能制御などだ。

「酢酸は大腸でよい働きをしますが、口から摂取すると小腸でほとんど吸収されてしまって、大腸まで届きません。大腸での酢酸濃度を一定に保つには、ビフィズス菌のように酢酸を作り出す菌の活性を高めることが重要です」(清水さん)

ビフィズス菌と乳酸菌の違い

認知機能に関連する臨床試験

ビフィズス菌に注目した清水さんらは、様々な菌株について認知機能を改善するものがないかをモデル動物で調べた。その結果、ビフィズス菌MCC1274株が有望と分かり、ヒトによる臨床試験を行った。

予備試験として、軽度認知機能障害(MCI)を疑われる高齢者にビフィズス菌MCC1274を含むカプセルを24週間摂取してもらった。すると、摂取8週後、16週後、24週後に認知機能のスコアが改善されたという。

そこで本試験では、プラセボ(偽薬)を対照とした二重盲検臨床試験を行った。

50歳以上、80歳未満のMCIと疑われる方80名に、MCC1274株またはプラセボを含むカプセルを16週間摂取してもらい、摂取前後の認知機能を評価した。

試験の結果、MCC1274株を摂取したグループでは、「アーバンス(RBANS)」(*2)という神経心理テストで、即時記憶(今聞いた電話番号や人の名前などの記憶)、視空間・構成(車の運転や物の整理など空間的な関係を把握する能力)、遅延記憶(一定時間経過後に思い出す能力)のスコアが、摂取前と比較して大幅に改善された。これらはプラセボ群と比較しても有意に改善されたといい、また、アーバンスの総合スコアも認知機能の改善が認められたそうだ。

ビフィズス菌MCC1274カプセルもしくはプラセボカプセルを16週間摂取し、摂取前から摂取後の変動値を比較した。対象者は50歳以上80歳未満。80名(ビフィズス菌群40名、プラセボ群40名)。神経心理テスト「アーバンス(RBANS)」で、即時記憶(今聞いた電話番号や人の名前などの記憶)、視空間・構成(車の運転や物の整理など空間的な関係を把握する能力)、遅延記憶(一定時間経過後に思い出す能力)のスコアが、摂取前と比較して改善されたという。アーバンスの総合点(左)も改善した。 **P<0.01, ***P<0.001, intergroup difference, Student's t-test (Xiao et al.,Journal of Alzheimer's Disease, 2020)

また、簡易認知機能スケールである「あたまの健康チェック(JMCIS)」においても同様に、プラセボと比較して有意な認知機能の改善が認められたという。

「プラセボと比較してこれほどはっきりと認知機能が改善されたことには、私も驚きました。結果は、アルツハイマー病の国際学術誌Journal of Alzheimer's Diseaseに論文として投稿し、2020年7月に公開されました(*3)。国際的なアルツハイマー病の情報サイトALZFORUMで紹介されるなど、大きな注目を集めています」(清水さん)

これまでのところ、MCIの疑いのある人に使用できる薬は存在せず、はっきりとした効果が証明されたサプリメントもないとのこと。

今回のセミナー記事では、脳と腸が互いに影響を及ぼし合う関係を中心に紹介してきたが、今後、さらに研究が進めば、食べる物によって認知機能改善やMCIに対処できるようになるかもしれない。そんな日が来ることを期待したい。

 

新井平伊(あらい へいい)さん

アルツクリニック東京院長、順天堂大学医学部名誉教授

1984年順天堂大学大学院修了。東京都精神医学総合研究所主任研究員、順天堂大学大学院精神・行動科学教授を経て、99年、「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2018年、東京丸の内に「アルツクリニック東京」をオープンし、院長に就任(現職)。アルツハイマー型認知症の基礎と臨床を中心とした老年精神医学が専門。



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