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認知症予防に「ケトン体」活用食事術とは 「白米の大食」は短命リスクが

2022-01-14 15:30:00 | 日記
下記の記事はデイリー新潮オンライン様のホームページからお借りして紹介します。(コピー)です。

4年後に患者の数が700万人を超えるといわれる認知症。誰にとっても「ひとごと」とはいえない深刻な病だが、日々の食事内容を少し変えるだけで魔の手から逃れられる可能性があるという。東京工科大学の佐藤拓己教授が提唱する、「ケトン体」活用食事術とは。
認知症、特にアルツハイマー型認知症については、「病態が進行し始めたら、薬で進行を少しだけゆっくりにするしかできない」「ほとんどあきらめるしかない」と思っている人が多いかもしれません。果たして本当にそうでしょうか。
〈そう語るのは、東京工科大学教授で『脳の寿命を延ばす「脳エネルギー」革命』(光文社新書)の著者、佐藤拓己氏である。佐藤氏の主な研究対象は脳と体の「抗老化」、すなわちアンチエイジングだ。〉
多くの研究者は、認知症が脳の海馬にあるニューロン(錐体細胞)のエネルギー不足から始まると考えています。ニューロンとは、見たものや聞いたものを伝達したり、記憶したりする重要な役割を担っている神経細胞のことです。
ではなぜ海馬のニューロンがエネルギー不足になるのでしょうか?
人体でも特にエネルギーを必要とするニューロン

悲劇は脳細胞「ニューロン」のエネルギー不足から始まる(他の写真を見る)
手始めに、インスリンの作用から見ていきましょう。インスリンは血糖値(血液中のブドウ糖濃度)を下げるホルモンです。体細胞は、ブドウ糖の取り込み口としてGLUT4というタンパク質を持っています。このタンパク質には、インスリンがある時だけ、ブドウ糖の取り込み口をオープンにする(開く)という機能があります。インスリンが体細胞に到達して受容体に結合すると、GLUT4が開口し、細胞へのブドウ糖の取り込み量が増加します。そのため、体内のインスリン濃度が上がると、血中のブドウ糖が減少、つまり血糖値が急速に低下する、ということが起こるのです。このインスリンとGLUT4の間のどこかで情報が正常に伝わらなくなることなどが原因で発症するのが、2型糖尿病です。ただ、実際には、脳以外の体細胞では、少しくらいブドウ糖の取り込みがゆっくりになったところで、すぐには重大な問題を引き起こしません。
ところが脳において、特に海馬のニューロンでは、全く違うのです。なぜなら、必要になるエネルギー量がケタ違いに大きいからです。ちなみに、ヒトが消費するエネルギーのうち、脳だけで約23%を占めています。その脳の中でも、ニューロンは特にエネルギーが必要なのです。

エネルギー基質であるケトン体
ニューロンへのブドウ糖の取り込みに支障をきたすと当然、問題が起こります。具体的には、短期記憶に支障が出ます。例えば、「今日の朝、何を食べましたか?」と聞かれて答えられない、といった症状です。よく、認知症になると、昔のことは覚えているのに、「今日何をしていたか」が思い出せなかったりします。これは短期記憶をつかさどる海馬の機能が弱まっているからなのです。
では、その危機から抜け出す方法を探ってみましょう。エネルギー不足に陥ったニューロンでは以下のようなことが起こっていると考えられます。
(1) ニューロンはまだ死んだり傷ついたりしていない
(2) 記憶のデータが来るのを待っている状態
(3)インスリンとGLUT4の情報伝達がうまくいかなくなったため、ブドウ糖が取り込めなくなり、エネルギー不足になっている
(4)ブドウ糖の取り込みはインスリンに依存するので、ブドウ糖濃度を上げてもあまり効果がない
(5) ブドウ糖以外のエネルギー基質があれば、ニューロンの機能が復活する可能性が高いと考えられる
そこで、“もう一つのエネルギー基質”であるケトン体の出番、というわけです。重要なのは、問題が「ニューロンのエネルギー不足」に留まっているうちに手を打つことです。
認知症の約7割を占めるアルツハイマー型認知症では、アミロイドβというタンパク質がニューロンに沈着して変性を進行させるという「アミロイド仮説」が知られています。「アミロイドβの沈着」と「エネルギー基質の不足」は互いに病の進行を助長するので、この二つが重なった場合には、負のスパイラルに陥りやすい可能性があります。
ケトン体含有食のマウスは認知能力が増強
では、“もう一つのエネルギー基質”であるケトン体を補充することは、アルツハイマー型にも有効なのでしょうか? 実は、多くの論文が「有効である」と報告しています。例えば、メアリー・T・ニューポート医師が『アルツハイマー病が劇的に改善した!』(SBクリエイティブ)という本で報告している事例は、「ケトン体を少しだけ増やしてエネルギー不足を解消すれば、アルツハイマー型認知症であっても進行を遅らせることができる」可能性を示しています。また、ケトン体の効果はマウスの実験でも証明されています。アルツハイマー病モデルのマウスに、
A 通常食(炭水化物1:タンパク質1:脂肪1)
B 糖質過多食(炭水化物7:タンパク質2:脂肪1)
C ケトン体含有食(比率は通常食と同じで、ケトン体を0.5グラム/キログラム含有)
を与え、認知能力を比較したところ、通常食や糖質過多食のマウスでは認知能力が時間を経るにつれ低下したのに対し、ケトン体含有食のマウスでは認知能力が増強されたのです。
多くの日本人の血糖値は安定していない
〈こうした背景を踏まえた上で、佐藤氏は「ブドウ糖とケトン体のハイブリッド方式で脳にエネルギーを与えて認知症を防ごう」と提唱している。〉
現在でもしばしば、「脳が疲れたから甘いものを食べてブドウ糖を補給しよう」といった言説を耳にします。「脳のエネルギーはブドウ糖のみ」との考えに基づく言説ですが、これはある条件を満たした場合にのみ正しいといえます。その条件は、「血糖値が安定している」ということ。しかし、多くの日本人はその血糖値が安定していません。それは、糖質を過剰に摂取しているからです。
米やうどんなどの糖質をたくさん摂ると、体内でインスリンが分泌されます。インスリンは分泌量の微調整が難しいため、血糖値が一気に下がります。食後少し経つと眠くなったり、気分が悪くなったりする、ということがありますが、これは血糖値の低下が原因なのです。脳がエネルギー不足になっているのです。そんな時に必要になるのが、バックアップとしてのケトン体です。ケトン体とは生物の体内で脂肪酸をもとに作られる物質で、肝臓などで生成されます。
残念なことに、ケトン体については極端な見方が存在しています。糖質の摂取量を1日数十グラム以下にしないとケトン体が増加しないとして、極端な糖質制限を推奨する意見をよく耳にします。しかし、ブドウ糖が脳にとって主たるエネルギーである以上、その摂取を減らし過ぎることは当然ながら神経科学的に見ても推奨できません。
脳を「ハイブリッド」で稼働させるために
ケトン体はブドウ糖と同様の自然なエネルギー源です。例えば、ヒトの妊娠後期の胎児は70%のエネルギーを脳の形成につぎ込んでいます。その半分以上がケトン体、残りがブドウ糖によるものです。ケトン体は、全てのヒトが母親の胎内にいる時からたっぷりと体内に蓄え、成長する間も、成人してからもずっと、量の多少はあれど、自らの体内で作り続けているものなのです。
私が言いたいのは、体内のケトン体濃度を少しだけ上げて脳を稼働させることで、脳のエネルギー不足を解消しよう、ということです。ブドウ糖だけで動いている状態を「ガソリン車」に例えるなら、ケトン体も用いるのは「ハイブリッド車」のようなものです。
では、脳を「ハイブリッド」で稼働させるためにはどうすればいいのか? 答えは簡単です。糖質過剰な食生活を是正するだけでいいのです。白米がおいしいからと2杯も3杯も食べていたのを1杯にして、その分おかずを増やしてみてください。欲を言えば、食事と食事の間隔を無理のない範囲で空け、日々の中に多少、空腹の時間を作るのがいいと思います。
3食ともしっかりと主食を食べ、間食も摂る。こうした食生活をしている人の体内のケトン体の濃度は0.1ミリモル程度でしょう。私はケトン体の濃度を0.2~0.5ミリモルにすることをおすすめしています。
その数値にもっていくにはどうしたらいいか。それは、緩やかな糖質制限をイメージすると分かりやすいかもしれません。例えば、朝は無塩バターを溶かしたバターコーヒー。昼はゆで卵にバナナ。夜は茶碗1杯のごはんと、肉や野菜など多めのおかずを食べる。軽い運動を行うことも、「ハイブリッド」にしていくためにはおすすめです。
白米の大食をしない
前述したメアリー・T・ニューポート医師は、ココナッツ油などに含まれるMCT(中鎖脂肪酸)を摂取することによってアルツハイマーが改善した、という研究結果を発表しています。患者さんに1日に約30グラムのココナッツ油を摂取させたところ、時計の絵が正確に描けなかった人が2週間で描けるようになったというのです。しかし、恐らく日本人が毎日30グラムのココナッツ油を摂るのは消化の関係で難しく、下痢になってしまうでしょう。摂取するにしても、小さじ1杯程度を飲むか、サラダに少しかける程度から始めるべきかと思います。
長寿村の人の食事、穀物と野菜中心の食生活も参考になると思います。約50年も前に東北大学名誉教授の近藤正二氏が書かれた『日本の長寿村・短命村』という本をご存じの方もいると思います。アンチエイジングに関する本でこれを超えるものはない、と断言できます。その中で、近藤氏は長寿の秘訣について三つの要素を挙げています。それは、「白米の大食をしない」「動物性たんぱく質を大食しない」「野菜・海藻・大豆を少しずつ食べる」というものです。このような食生活では、体内のケトン体濃度はわずかしか増加しません。ただ、ケトン体濃度はこれで十分なのです。結局のところ健康長寿の秘訣は、ケトン体を排除するとかケトン体を5ミリモルまで大幅に増加させる、といったことではないのでしょう。
無理をせずに継続でき、肉食ばかり、菜食ばかりに偏らず、自分の好きなものを取り入れた食生活を実践するところから始めるのがいいのだと思います。
佐藤拓己(さとうたくみ)
東京工科大学応用生物学部教授。1961年岩手県生まれ。東京大学農学部畜産獣医学科卒業。京都大学大学院医学研究科修了。博士(医学)。専門は神経科学、抗老化学。著書に『脳の寿命を延ばす「脳エネルギー」革命』(光文社新書)など。
週刊新潮 2021年12月23日号掲載
特集「『認知症』を防ぐ『ケトン体』活用食事術」より

追記:ケトン体ってどういうもの?https://www.kanro.co.jp/sweeten/detail/id=1975より
体内に存在する「グルコース(ブドウ糖)」の量が減ると、肝臓に蓄えられている「グリコーゲン(グルコースが結合した高分子)」がグルコースに分解されて利用されるようになります。しかし、グリコーゲンは24時間ほどで枯渇してしまうため、その後は筋肉中のたんぱく質や脂肪細胞に蓄えられている脂肪酸がエネルギーとして使われる仕組みです。
ケトン体は、この脂肪酸から作られます。脂肪細胞に蓄えられている中性脂肪はそのままだとエネルギー源として利用できないためです。中性脂肪のケトン体への変換は肝臓で行われ、アセチルCoAという物質にまで分解されます。
アセチルCoAから作られるのがケトン体で、ケトン体にはアセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸といった種類があります。肝臓で作られたケトン体は、肝臓から放出されて血液の流れに乗り、エネルギーを作り出すための材料として使われます。※1
この働きが起こるのが糖質制限で、ケトン体を利用したダイエットを「ケトジェニックダイエット」と呼びます。糖質源を極端に減らすと体内のグルコースの量も減ってケトン体が作られることがあります。糖質制限ではケトン体が増加していることを「脂肪がよく燃えている状態」と肯定的に受け取られることが多々あります。


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