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肥満解消は「何を食べるか」に加え「どう食べるか」も大切

2022-02-15 12:00:00 | 日記
下記の記事はビヨンドヘルス様のホームページからお借りして紹介します。(コピー)です。

肥満解消というと、食事制限や運動を思い浮かべる人が多いだろう。しかし、食べ方とも密接な関係がある。「肥満」と「噛むこと」について研究を行ってきた早稲田大学スポーツ科学学術院教授の林直亨氏らは、昨年「噛む、味わうだけで食後のエネルギー消費量が増え、5分間食べ方を変えるとその効果は食後90分まで続く」ことを発表し、注目を集めている。「どう食べるかは、体重管理だけでなく、食のサステイナビリティにとっても重要な問題」と話す林氏に、研究の内容と目的について聞いた。
コロナ禍で増えている肥満、早食いは肥満のもと
新型コロナウイルス感染症の流行によって、外出を控え、オンライン中心で仕事をする生活が続いている。厚生労働省が行った「新型コロナウイルス感染症に対応した新しい生活様式による生活習慣の変化およびその健康影響の解明に向けた研究」(2021年3月、20~79歳までの男女8万3216人対象)によると、コロナ感染拡大後は、体重、BMI(肥満度)ともに有意に増加する傾向が見られる一方、身体活動量は有意に低下していた(図1)。この「国民の肥満傾向」は今後も継続する可能性がある。


厚生労働省の調査によると、コロナ感染拡大前(2020年1月)と拡大後(2021年3月)では、体重、BMI、身体活動量の全てで有意な変化が見られた(出所:厚生労働省「第14回健康日本21(第二次)推進専門委員会参考資料4」)
思うように人と会えず外出もしづらい日々の中、楽しみは食べること……という人も多いだろう。しかし、食欲に身を任せるままでは肥満となり、生活習慣病やがんのリスクにもつながっていく。
そんな中、昨年「噛むことによって食後のエネルギー消費量が増加する」ことを明らかにする論文を発表し、注目を集めているのが、早稲田大学スポーツ科学学術院教授の林直亨氏だ。
肥満予防のためには、「食事を減らしてエネルギー摂取量を減少させること、運動量を増やしてエネルギー消費量を増加させること」が基本とされる。摂取エネルギーを減らすためには、食べる量を減らしたり、カロリーの少ない食品を選んだりといった対策が有効だが、食べる楽しみを削られるがゆえ、実践と継続が難しいのが現実だ。
一方で、「よく噛む」「ゆっくり食べる」といった「どう食べるか」に着目する研究も行われてきた。
例えば、アメリカ人の実業家Horace Fletcher氏(1849~1919年)は、生命保険に加入できないほどの肥満だったが、よく噛んで食べることを実践した。健康な体を取り戻し、1口30~40回、よく噛んで食べる「フレッチャーイズム」を欧米で普及させ、食べる速さと体型の関係が世界でも研究されてきた。
林氏も長年、噛む回数や食事時間など「どう食べるか」をテーマに研究を行ってきた。
女子大学生84人におにぎり1個を食べてもらい、噛む回数や総食事時間と体重、BMIの関係を見たところ、食べる速さが速く、飲み込むまでの咀嚼回数が少ないほど、体重やBMIが増加する傾向にある、つまり「早食いは太りやすい」ことが分かった[1]。
「どう食べるか」には、岡山大学で2014年に発表されたこんな研究もある。大学生1314人を対象に3年間の追跡調査を行った結果、早食いの人は早食いでない人よりも4.4倍肥満になりやすく、男性は女性よりも2.8倍肥満になりやすいことが分かった。この研究において「早食い」は、「脂っこいものを好んで食べる」や「満腹まで食べる」よりも肥満との相関が強いという結果が得られた。


大学生1314人(男性676人、女性638人)を対象に食事の速さや生活習慣をアンケート調査し、肥満との関係を3年間にわたって観察。その結果、早食いの者は早食いでない者と比べ肥満リスクが4.4倍高いことが分かった(出所:Obesity (Silver Spring). 2014 Oct;22(10):2262-6.もとに日経BP作成)
「じっくり味わう」「よく噛む」はエネルギー消費量が上がる
「これまでの肥満研究で、早食いをすると体重が増える、ということが明らかになっています。その理由として、(1)早食いをすると多く食べ過ぎてしまう、(2)早食いが食事誘発性体熱産生量(DIT)を減らす、という2つの要因があると考えられています」と林氏は言う。
(2)のDITとは、食事によって体内に吸収された栄養素が分解され、その一部が体熱となって消費されるエネルギー量のこと。1日の総エネルギー消費量の1~1.5割程度を占める。食事をした後、体が暖かくなるのはこの熱量の発生のためだが、早食いにより体熱産出が低下する可能性が高いのだという。
そこで林氏らは、この「DIT」に着目して研究を行ってきた。
まず、300kcalのブロック状の試験食を早食いと遅食いで比較したところ、食後90分間のDITの累計は、早食いで0.4kcal、遅食いで10.4kcalと大きく違うことを証明した[2]。
また、パスタ、ヨーグルト、オレンジジュースの食事(合計621kcal)では、早食いよりも遅食いのほうが食後3時間のDITが15kcal高くなることが分かった[3]。
しかし、ここで問題が発生する。
「これまでの実験では、食べるものが塊の場合には噛まないほうが胃腸を働かせる必要がありエネルギー消費が増える可能性があったり、噛むからDITが高くなるのではなく噛むことで柔らかくなることがDIT増大に影響する(食べ物の形状が結果に関わる)のではないかという問題が出てきます。そこで、今回はこれらの問題を排除し、純粋に、噛むこととDITの関係を示したいと思いました」(林氏)。
新たな実験では、固形食でなく、液体のココア味の飲料を試験食とした。そして、飲むだけの「対照群」、30秒ずつ口に含む「味わう群」、1秒に1回噛んで飲み込む「噛む群」に分けた。その結果、食後90分間のDITの総計は、「味わう群」「噛む群」いずれも有意に高くなった(図3)。
この研究で、味わったり、噛んだりしたのは合計5分間。しかし、その影響は食事の90分後まで及んでいた。「食後かなり長い時間まで、熱産生が高い状態を維持していることが分かったのも、今回の実験の大きな成果でした」(林氏)。

11名(平均年齢23歳)が安静時のDITを測定後、日を変えて3回ずつ異なる方法で、同じ飲料(20 mlのコップに分けた10杯のココア味の飲料:合計200ml)を5分間で摂取した。対照群は、飲料20mlを30秒ごとに1回飲み込み、10回繰り返す。「味わう群」は飲料を30秒間口に含んで飲み込むことを10回繰り返す。「噛む群」は、1秒に1回噛んで飲み込むことを10回繰り返した。摂取後90分までのDITを求めた結果、味わう群、噛む群では対照群よりもDITが有意に増加した(出所:Sci Rep. 2021 Dec 23;11(1):24483. もとに日経BP作成)
注目される「噛む」と「交感神経」の働き
では、ダイエットしたいという人が、よく噛むことを実践すれば、実際に減量は可能なのだろうか。
「以前行った食事の研究[3]では、早食いより遅食いをすることで、1食あたり15kcalのDITが余分に増加しました。この効果が1日3食、1年間続いたと仮定すると、1万6425kcalとなります。脂肪1kgのエネルギー量は7000kcalですから、おおよそ脂肪2kgの減少に相当します」(林氏)。
なるほど、「しっかり噛もう」というモチベーションが湧いてくる。
「牛乳もよく噛んで飲みなさい、などと言われますが、ゆっくり味わうこと、噛むことが確かにDITを増加させることが明らかになりました。噛むことが肥満予防につながる、というこれまでの一連の研究がひとまず完成した、と考えています」(林氏)。
なぜ、噛むとDITが増加するのだろう。
「そのメカニズムはまだ分かっていません。推測しているのは、噛むという口腔への感覚刺激が、交感神経の活動を活発化させることによってDITを増加させているのでは、ということです。DITは、消化、吸収によって生じるエネルギー消費と、自律神経活動を介して生じるエネルギー消費から構成されています。ゆっくり噛んで食べると、早食いするよりも口腔への感覚刺激時間がより長くなり、交感神経活動も増大するのではないでしょうか。また、交感神経が刺激されることにより、脂肪を分解して熱を生み出す働きのある褐色脂肪細胞が活性化されることもDIT産生に関わっていると考えています」(林氏)。

「噛むことが肥満予防につながる、という一連の研究がひとまず完成したと考えています」と林教授(写真:福知 彰子、以下同)

私たちが目指すべきは「サステイナブルな食べ方」
林氏はかつて競泳の選手で、研究者となってから運動と循環器の関係について研究を行ってきたという。
「運動をしてエネルギーを消費すれば健康になれる。これは確かなことなのですが、運動が苦手な人も少なくありません。もっと運動を、と啓発しているはずの研究者が集まる学会でさえ、階段とエスカレーターがあれば全員がエスカレーターを選んでいる。これが現実です」(林氏)。
運動はなかなか実践や継続に結びつかない。ならば食べ方を、と咀嚼の研究を行い、気づいたのは「味わうこと」の大切さだという。そこで、今回の研究でも「ただ味わうだけ」という試験群を追加したのだと話す。
「私自身もつい早食いをしてしまいます。よく噛もう、と反省してもそのときだけで、結局日常では噛まずに飲み込んでしまう。しかし、あるとき、よく味わって食べよう、と思うと、パスタに小麦の味がすることに気づきました。味わおう、という意識で食べると自然と食事時間もゆっくりになり、DIT増加につながるはずです」(林氏)。
噛むことでエネルギーを消費することは「サステイナブルな食べ方」でもある、と林氏は言う。
「現代人は、飽食といわれるほど食べ過ぎる傾向にあります。しかし、エネルギーを取り過ぎたからといってガソリン車を運転してジムに行き運動する、というのは、冷静に考えるととんでもないエネルギーの無駄遣いですよね。これまでのそういった消費活動への反省のもと、少なくおいしく食べて、ある程度消費する、というスモールエネルギーの循環へと私たちは変わっていくべきではないか。その1つの方法が、“味わって、噛んで、いただく”ことだと思っています」(林氏)。
使い終わったらどこかに捨てられ、環境を汚す廃棄プラスティックと同様、時間になったから味わいもせず食べ、肥満する、という食べ方はエネルギーを無駄にし、循環を止める行為なのだろう。
ハードな運動でもなく、厳しい食事制限でもない、その真ん中にある“少なく大切に食べる”という方法は、私たちのこれからの食べ方の方向性として大きなヒントになっていきそうだ。

林 直亨氏
早稲田大学スポーツ科学学術院教授
はやし・なおゆき。早稲田大学人間科学部卒業。医学博士。大阪大学健康体育部助手、カリフォルニア大学デービス校客員研究員、九州大学健康科学センター助教授・准教授、東京工業大学大学院社会理工学研究科、同大学リベラルアーツ研究教育院教授などを経て2021年より現職。スポーツ科学、運動生理学、生体医工学などを専門に研究。おいしいと感じるときの顔面血流変化や運動と眼底血流の関係など多方面にわたる研究を行う



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