灯:(ああ。もう、お姉ちゃんたちは騙せない)
本当は受験の本じゃなくて、六法全書。
あのハイパー・メディア・クリエイターのおじさんに買ってもらったの!
茜:どういうことや?
買ってもらったって?
灯:あの日、本当に本屋さんに行って受験の参考書買おうと思ってたんだけど、
ちょっと法律書のところ通ったら前から欲しかった六法全書が置いてあって、それを見てたの。
そしたらあのおじさんが通りすがりにほしいのか聞いてきて、
怪しそうな人だから警戒してたんだけど、私、不覚にも「欲しい」て口に出しちゃった。
そしたら買ってくれた。
買う時に、「今日ここに双子がくるから来て」とは言われたけど。
それだけ。
葵:本を買ってもらったってこと?
そんな本くらい自分で買いなさいよ!
灯:だって有斐閣の六法全書だよ!
1万4千円くらいするんだよ!
私のお小遣いじゃ買えないよー。
あの2分冊になっている六法全書。
ポケット六法じゃないんだからねっ!
私ずっと欲しかった。
だからそれぐらいいいじゃん。
ねえ、聞いてる?お姉ちゃん!
葵:いやっ!。
なんで私が説教されてるの!
茜:まあ、二人とも落ち着いていきやっ!
要するに三人ともあの「P」にうまいこと買収されたってことやな。
みんな同罪や!だから喧嘩はせんといて!
葵:お姉ちゃん、ちょっと待って!
灯、いま1万4千円とか言わなかった?
灯:そう、1万4千円。
葵:ケーキバイキング、何回食べられるのよっ!
灯:もうお姉ちゃん。
大事なのは今そこじゃないでしょ!
将来の法曹界を背負って立つ私に対する投資だと思えば大したことないじゃん!
それより、アオネエ、最近なんかイライラしてるし、怒りっぽくない?
茜:せやな!
怒ってばかりやな!
葵:誰のせいだと思ってるのよっ!
お姉ちゃんはポンコツだし、灯は勉強ばかりしていて。
わたし、あんたたちの間に挟まれて、いつも大変なんだからねっ!
灯:アカネエ、ストレスため込むと体に良くないよ!
葵:もう、あんた達は!