朝井まかてさんの小説を、デビュー作から順番に読んでいます。
四作目は、2012年発表のこれ。
朝井まかて 著作『先生のお庭番』徳間文庫
これは、史実を基にしたフィクションですね。
今までとは違った歴史小説となっています。
シーボルト事件。あまりよく知らなかった。
ドイツ人のシーボルトは、オランダ領、今のジャカルタで軍医として勤めていました。
1823年8月 、オランダ政府の命令で日本にやって来ました。来日の目的は、旺盛な知識欲のある日本人に医学や自然科学を教える事。今一つは、日本の動植物や地理を調べオランダへ送る事。
シーボルトは、長崎の鳴滝(なるたき)で「鳴滝塾」を開き、日本各地から集まってきた医者たちに医学などを教えました。ここで学んだ人々は、やがて医者や学者として活躍します。そして日本各地の花や植物を送ってくれます。
送られた植物は、出島内の薬草園に植えられます。それを管理したのがこの物語の主人公・熊吉(コマキ)です。
熊吉は、日本の植物の標本を作り、シーボルトはそれら植物の論文を書きヨーロッパに送ります。「らんまん」の万太郎に似ていますね。
1828年(文政11)、シーボルトが日本を離れる前に嵐に会って船が座礁し、そこから国外へ持ち出すことを禁じられていた日本地図などが発見された。シーボルトや、シーボルトと親交の深かった人たちは取り調べられます。熊吉も拷問を受けたようですね。
1829年、シーボルトは国外追放となります。西欧列強の船が覇権主義で日本各地に現れだした時代。詳細な日本地図が西欧に渡るなど、もっての外ですよね。
しかし、シーボルトは帰国後も日本の研究を続け、日本のことをヨーロッパに紹介します。結果として、シーボルトはヨーロッパと日本の友好の懸け橋になったのでしょう。
この小説では、熊吉の事、シーボルトの妻・お滝の事、娘のイネの事、そして従者の黒坊おるそんの事、それらの交流が描かれていました。お滝とシーボルトの愛憎、草木の事、紫陽花の事、朝井まかてさんらしいタッチで描かれていて、好ましい!!
この本のお気に入り度:★★★★☆
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