今日の志村どうぶつ園の中で紹介された、「ルルとララ」のお話。
捨て犬だったルルとララを、小学生の兄妹が必死に守っていくという内容でした。
親に「家では飼えない!」と怒られて、
空き地で内緒で飼っていた二人でしたが
近所の人が保健所に通報して、保健所に連れて行かれる話を耳にする。
雨の中、必死で二匹を探しだし
犬の里親を探す二人。
小学生なのに・・・なんて素晴らしい子供たちなんだろう。
それにくらべたら私は・・・・
彼らの行動力への感激と、自分の不甲斐なさに涙が止まりませんでした。
わたしが、まだ20歳ぐらいのころ
当時勤めていた鉄工所の食堂の入り口あたりに、人だかりができていました。
なんだろう・・・と、野次馬根性で近づいてみると
犬・・・子犬が牛乳を舐めています。
「どしたん?」
「捨て犬みたいよ、工場の裏手をうろついてたんやって」
生後1か月ぐらいの、柴犬のミックスでしょうか。
よほどお腹が減っていたのか、一心不乱にミルクを舐めています。
「おーい、パンもあるぞ」
どこからか食べ物が次々とあらわれて
子犬の前に並んでいきます。
「けど・・・、どうするん?このまま置いておけんやろ?」
「あぁ、Nが飼うってゆっとったから大丈夫や」
あぁ、そうなんや・・・、ようやくホッできました。
そっかぁ、お前よかったなぁ。
「ねぇ、抱っこさせてや」
抱き上げると、手を齧ってきます。
「あら、元気やがいね。そんなら大丈夫やね」
よかった、よかった。Nさんの家の子になるんやってさ、ほんと良かった
子犬は終業時まで、倉庫でお留守番することになりました。
その間、私やほかの犬好きの人たちが、水や食べ物を運んで様子をみてました。
すると様子を見に行っていた女子が、怒りながら帰ってきました。
「あの犬噛むし痛っいわ」
お腹が膨れて元気になったのか、安心して甘えが出たのか
唸りながら、人を甘噛みするようです・・だけど、捨てられていたんだから無理もありません。
それに、あと少しでNさんが家に連れて帰ってくれる。
もう少しの我慢やしね
なんだか、私も嬉しくなってました
が、次の日の朝。
倉庫の前を通ると、犬の激しい鳴き声
まさか・・・と、中へ入ると、
「え・・・?なんでおるん???」
Nさんのところへ飛んでいき事情を尋ねると・・・・
お母さんに反対された・・・・・そうです。
え?確認したんじゃないんか??
じゃあどうするが?あの子どうなるが?
「知らんわい!どっか裏山にでも離しといたらいいがい。
あそこは鳥小屋もあるし、食べる物には困らんやろ?」
・・・・・・・・・なんやソレ、鳥小屋襲ったら殺されるやろ!
第一、あんな子犬に狩りなんかできるわけがない!!
「何アホなこと言うとるん!あの子、どうするか考えてや!!!」
「そんなら、保健所電話すればいいやろ!!オレに言うなや!!!!!」
なんで・・・?なんで、そんな簡単に言うん?
頭が真っ白になって、パニクってたかもしれません。
仕事が手につかず、涙が止まらず、
上司にも怒られ、散々だった記憶があります。
仕事時間中に、近くのペットショップの「〇〇フィッシュランド」に電話を入れ
保護してもらえないかと頼みましたが
「捨て犬なら保健所へ電話してくれ」
と電話を切られました。
保健所へも相談の電話を入れましたが
「野良犬なんて何処にでもいるでしょ?処分してほしいんなら連れてきてくださいね」
と、保護の相談には乗ってもらえませんでした。
私の家には・・・知的障害者の妹がいます。
五体満足ですが、ひとりでは何もできない子です。
それに日中、誰一人いなくなる家では・・・子犬の世話は無理でしょう。
「裏の山に捨ててきたら?たぶんあのあたりから来たんやと思うし」
同僚も先輩も口裏を合わせたように、そういいました。
「あの山って野犬がけっこういるみたいやし、おいてきたって大丈夫よ」
なにが大丈夫なん?よけい危ないんじゃないんか?
こんな幼い子犬が、ひとりで生きていけるわけがないやん。
どうして皆な、そう思わんがやろ。
だんだんと、みんなの言葉に腹が立ってきます。
もちろん捨てた飼い主に対しても、です。
子犬を捨てたのか、母犬を捨てたのかは分かりませんが
いつも辛い目に合うのは、きまって弱い生き物と決まってます。
「一回引き取るって決めたくせに、最後の最後まで面倒みろや!!」
Nさんに対しても怒りが収まりませんでした。
周りの人たちからは、何に腹を立てているのかわからないと言われました。
「あほか、犬なんかに一生懸命になってどうするんや」
とも言われました。
あの時、腹を立てて怒りまくってるんではなく
頭を下げてでも、飼い主を探すべきだったんだと・・・今日、テレビを見て思いました。
鉄工所には100人ほどの就業者がいたのだから
一人ひとり聞いて回れば・・・ひょっとすると、あの子の運命が変わっていたかもしれません。
「保健所、連れて行けば?」
「あんたがそこまで心配せんなんがか?」
「仕事の支障になるのは困るんや」
終業時には、上司と同僚に怒られました。
「山に連れて行きなさい!」
この雨の中を?
今私たちの決断で、あの子の運命が決まるってわかってます?
どうして、そんなモノのように扱えるんですか?
なんでそんな簡単に殺せって言えるんですか?
「・・・・・ダムに落とします!!!!」
「は・・・?何言うとるん?山に連れていけって言うたんや」
「どっちにしたって死んでしまうんなら、私が殺してあげるわ!!!」
捨て台詞で会社を出ました。
なんでこうなったんやろう
・・・最後の最後まで、付き合うし・・・・・ごめん、ゴメンね、ゴメン。
子犬を抱き抱えて車に乗せ、家に向かいました。
ダメもとで、家族を説得できないかやってみようと・・・
だけど、無理でした。
でも、もっと真剣に、投げ出さずに頼んだら
母親の気持ちも変わったのかもしれません。
こんどは車で山の奥へ・・・、手取ダムに向かいます。
だけど、殺すなんて・・・できるわけない。
車を傍らにとめ、子犬を抱えてワンワンと泣きました。
どうして、救ってあげられない?
どうして、私に知恵と力がない?
どうして
どうして
結局、犬がいたのであろう・・・会社の近くの山に行き
子犬を抱いて車を降りました。
子犬を地面に降ろすと、トトトと歩いて行きます。
行くところがあるのだろうか・・・
だけど、クルッと振り返ると近くまで帰ってきました。
「行きたいところ行っていいよ、連れて帰ってあげられないんや」
するとまた、トトトと歩いて行きます。
かなり離れた場所まで歩いて行ったので
車に戻りエンジンをかけましたが
子犬が戻ってくる気配はありません。
「はぁ・・・」
安堵なのか後悔なのか、自分でもわからないため息が出ました。
車をゆっくりと発進させ、山の下りにかかったころ
バックミラーに小さな体が映っていることに気が付きました。
子犬が追いかけてきていたんです。
途端に視界がぼやけました・・・が
ブレーキは踏みませんでした。
私は身勝手な人間の一員です。
自分がやった事がどんなにヒドイ事か、よく分かってます。
ほんとは。犬の保護を訴える資格はないんです。
私は生涯あの子犬のことを、ずっと忘れず
どんなに辛くても心に背負っていかなきゃいけないんだと思ってます。
命は重い。どんな命でも重いんです。
私の手は、どれだけ伸ばしても・・・あの子犬まで届きませんでした。
だけど、今、来太を抱き寄せることができたことを
とても嬉しく思ってます。
これからも、少しでも何かできないか・・・考えて行きたいと思ってます。
長い告白にお付き合いくださいまして、ありがとうございました。
気分を害してしまった方、本当にすみません。