溜まり場

随筆や写真付きで日記や趣味を書く。タイトルは、居酒屋で気楽にしゃべるような雰囲気のものになれば、考えました。

いい本を読みました。

2013年11月27日 | 日記

 

 神谷周孝さんによる、小説「若者に捧げる戦争教科書」(文芸社)を読みました。先の大戦で、大変なことが起きていたのに我々はほとんど知らなかった事実が赤裸々に描かれています。大学・社会学部の学生たち数人が、93歳、もう弱り切って、死期を覚える元陸軍兵士を病室に訪ね、聞き取り調査をするというもの。  私も、満州で生まれ育ち、目を覆いたくなる現場を見ているですが、それ以上の現場が再現されています。再現と言っても、老人の「語り」なのです。

 フィリピン戦線で元兵士自身も加わっていた残忍な行為は、事実として淡々と綴ってもよさそうですが、聞くのにも勇気と忍耐がいるないようで、学生も気分を悪くし、倒れそうになる。「小説」というスタイルを取って元兵士の経験を紹介するしかなかったと感じました。

著者は、元新聞記者の70歳。やはり今の日本の状況が非常に危ない方向にあると感じて、あの大戦の裏・恥部を残しておかないと、との義務感から著わされたようです。生き残りの元兵士がいなくなりつつあり、これは良心に基づく非常に貴重な証言だと感じました。