私は映画館で鑑賞していた時、感動したので、泣けてきたのだった。ハンカチを取ろうとした時、もの弾みで鞄に入れてあった花の種が、前に座っている人のパーカーのフードに入ってしまった。
すると、なにやらそのフードから草が生えてきて、なんと花が咲きだしたではないか!映画が終わる頃には、満開の花が溢れんばかり。
席を立つ前の人はその花に気付いている様子が無いので、「すいません、フードに花が…」と声をかけたところ、その人は答える。
「ああ…花だったら良いですよ。鼻紙だったら嫌だけど」
その人は、フードから溢れる花を溢しながら去っていく。私は映画館から出た。そして何気なく、空を見上げる。暗闇からの目には、やけに太陽が眩しい。
Fin