70の瞳

笑いあり涙あり、36人の子どもたちが生活する児童養護施設「さんあい」の出来事や子どもと職員の声をお聞きください。

あなたの父母を敬え

2022-04-28 12:39:29 | 愛すべき子どもたち

旧約聖書には、人がこの世で争いなく幸せに暮らすための戒めとして十戒が記されています。これは紀元前1600年代当時のリーダーであるモーセを通して神がイスラエルの民に対して示したものです。特に5番目から10番目の戒めは現代に暮らす私たちの倫理規範となる内容でもあります。

1.あなたはわたしのほかに、なにものをも神としてはならない。

2.あなたは自分のために、刻んだ像を造ってはならない。

3.あなたは、あなたの神、主の名を、みだりに唱えてはならない。

4.安息日を覚えて、これを聖とせよ。

5.あなたの父と母を敬え。

6.あなたは殺してはならない。
7.あなたは姦淫してはならない。
8.あなたは盗んではならない。
9.あなたは隣人について、偽証してはならない。

10.あなたは隣人の家をむさぼってはならない。

1~4は、神と人との関係に於ける戒めと言われ、5~10は、人と人との関係に於ける戒めと言われています。

この戒の中で第5の戒めの「あなたの父と母を敬え。」が何故、「殺人、姦淫、盗み、偽証、むさぼり」という戒めの前におかれているのか、児童養護施設の現場の視点で考えてみました。

まず児童養護施設で暮らす多くの児童は、自己肯定感が低い傾向にあります。それは愛された経験が少ない子どもたちが、自分自身は愛されるに値しない存在であると心の奥で認識していることに起因していると思われます。人は、自分自身の存在を肯定できなければ、どんなに富、権力、名声を得たとしても心の渇きをいやすことはできません。自分自身を肯定することのできない人は、他人を肯定し愛することが困難です。他人を愛することができない延長上に究極に「殺人、姦淫、盗み、偽証、むさぼり」があるように思います。自分自身を肯定することの第1歩は、この世に送り出してくれた親の存在を肯定することです。ですので「あなたの父と母を敬え」は、人が他の人の中で幸せになるために真っ先に挙げなければならない戒めということに気づかされます。

キリスト教では、この十戒はイエス・キリストによってさらに簡潔に以下のように私たちに教えられました。

「あなたの主である神を愛しなさい。あなた自身を愛するようにあなたの隣人を愛しなさい。」

人と神の関係は、「あなたの主である神を愛しなさい」に集約され、「あなたの父母を敬え」は、「あなた自身を愛するように、」に重ねられ、「殺人、姦淫、盗み、偽証、むさぼり」をしてはならないは「あなたの隣人を愛しなさい」に集約されました。

しかし、親から虐待や不適切な養育を受けた子にとって簡単に肯定すること、愛することは簡単ではありません。ましてや、親を肯定し敬うことは困難な場合が多々あります。 この手助けをしてくれるのが「ライフストリーワーク」といわれる手法です。自分の生まれた時の状況を写真や手紙等を使って親や親戚、そして親の代りにお世話をしてくれた人々の存在を肯定的に伝え自身が大切に育てられたことを知らせ自己肯定につなげるのです。この手法を用いるのは職員との信頼関係をベースにして心の成長を見ながら行っていきます。子どもたちの親の存在、或いはその存在に代わる人々を肯定的にとらえることができるような支援をしてゆきたいと思います。

 

もうすぐツバメさんがさんあいの園舎で出産・子育てをする季節がやってきます。


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