マンション管理士綾さんのブログ

マンション管理士は「正義の味方・月光仮面」?

脱法ハウス・貧困ビジネスがマンションに忍び寄る

2013-10-16 18:48:29 | ブログ

以下の一文はマンション管理士会、会報第121号への巻頭言として、寄稿したものです。

脱法ハウス・貧困ビジネスがマンションに忍び寄る

 社会福祉法第23項で定める無料低額宿泊所は、

生活困窮者のために無料または低額な料金で宿泊

所を利用させる事業を行う施設とされていますが、

中でも、県に届け出るだけで営業できる第2種社会

福祉事業の施設は、ひどい所では6畳を3部屋にベ

ニヤで区切る(1室=幅1m弱x2m強)等の劣悪な

環境で、過っての「タコ部屋」の暮しを強要、全国で

500箇所15000人が入所、その93%が生活保護受給

者で、法の趣旨とは間逆の対応が社会問題となり、

東京や大坂、埼玉でも一部実態が明らかになりま

した。
 そこは、生活保護費から割高な寮費(家賃

47,000円~)、食事代を徴収し、本人には数万円

しか渡さないなど、受給者や生活困窮者を食い物

にする貧困ビジネスの舞台となり、管理監督する

はずの役所も、対応する施設不足で必要悪とば

かり、半ば承知で住宅困窮者を紹介・斡旋、法の

趣旨である「一時的施設利用」とは裏腹に、56

年もの長期利用者からは、「あり地獄からの救出

の訴え」も出るほどの事例も表面化しました。
 あまりに劣悪な環境の改善を求める者や転居

を要望する者には、「文句を言うなら出て行け、

生活保護を打ち切るぞと脅す」などの人権侵害

が公然化するに及び、関係団体の支援活動が

進む中、今年6月になってやっと議員発議により、

貧困ビジネスを規制する(と言うより施設要件を

強化し改善を促す)埼玉県条例が成立、まだま

だ不十分な点もありますが、それでも福祉法の

規制に上乗せ・横だしを進め、より厳しく規制す

る内容の施設要件や運用ガイドラインの強化が

始まりました。

無料低額宿泊所を経営する大手会社社長の

年収は30億円との報道もある一方、その犠

牲者は、多くが生活保護受給者で、ホーム

レスやネットカフェやカプセルホテル暮しをし

ていて、生活保護受給時点で宿泊所を紹介

され入居した人々で、家賃は生活保護の住

宅扶助から払われます。

1時期、北京や上海で、田舎からの出稼ぎ

労働者の若者がビルの地下室に集結する

姿を、鼠族と呼称しマスコミが報じたことが

ありましたが、日本でも、ワーキング・プアと

言われる低所得者や、倒産や解雇で寮を

出された若者が、家賃45ヶ月分となる初

期費用が捻出できない、保証人がいないな

どの理由で、一般のアパートに入れない人々

(ハウジング・プア)が、初期費用無し、保

証人不要、都心でも35万の家賃(現実に

は1㎡1万円以上と異常に高家賃)に惹かれ

て、脱法ハウスの空間を利用するように

なった現実があります。

「儲けのためには何をしてもよい」とする悪

徳不動産業者が、鼠族や無届営業の無料

低額宿泊所のウマ味からヒントを得た(定

かでないが)のか、高利潤の不動産運用を

狙い、法の規制をすり抜ける形で、脱法ハ

ウスが静かに、戸建て住宅、事務所ビル、

はてはマンション居宅にまで静かに浸透し

てきました。

脱法ハウスは、居室を買い取って持主・区

分所有者として、また持主に儲けをそその

かして賃借形態で、個室を多人数が住め

るように改造、ハウジング・プアのニーズ

に応える形態をとりながら、彼らを搾取の

対象として巨額の儲けを上げようとするも

のです。

ハウジング・プアを餌食にする貧困ビジネ

スがはびこる原因は、住まいは人権との

理念に基づく住宅政策の欠如、低所得者

の入れる公共住宅の絶対的不足が直接

の原因と指摘され、根本的解決策として、

低所得者向けの公営住宅の早急な充実、

何より労働条件の改善で、ワーキングプ

アを早急になくする施策が求められてい

ます。

毎日新聞が脱法ハウス、シェア・ハウス

問題を大きく報道した628日の記事は、

「脱法ハウスに国勢調査、総務省」と題し

たものと、関連記事として社会面に、千代

田区のネットカフェ大手・マンボウが経営

するシェア・ハウス「中野レンタルオフィス」

が消防法違反と報道され、その翌日、閉

鎖を宣言。40人余の居住者に退去を通告。

居住者を守れとする「仮処分申請で和解

が成立」と報道。以来、毎日新聞が1面報

道を続けるなど、8月までの2ヶ月間で22

回も集中的に連続報道しました。

この間に、ハウジング・プアを支援する

民間団体が独自の実態調査と政府交

渉を行い、国交省も全国の自治体に調

査を指示、又、マンション管理会社の団

体に情報提供を求め、国交大臣が発表

した調査結果によれば、第3次調査結果

で、脱法ハウス(違法貸しルーム)は401

物件に及び、内マンションが30%、事務

所ビル16%、戸建て住宅54%となってお

り、ほとんどが東京で、大阪、埼玉(川口

市、所沢市)にも広がっています。

 

業者とのトラブル予防に、早めの規約改正を

脱法ハウスの3割を占めるマンションでは、

1住戸の多人数化改造が多く見られるが、

フロア全域にわたる改造、もしくはマンシ

ョン1棟全体の改造事例も見られたとの

こと。特に駅近の交通利便の良いところ、

マンション管理の不十分なところに浸透

る傾向が強いなどの問題が報じられて

います。

住戸の多人数化(細分化)改造を巡って、

無断改造や虚偽の改修申請などで、

規約違反を指摘する管理組合とのトラ

ブルが多発、港区麻布十番のマンション

では「使用禁止を求める仮処分」申請、

脱法ハウス問題が初めて司法の場に

上るとして注目されています。

毎日新聞の取材で、自分のマンション

に脱法ハウスがあることを初めて知った

理事長や関係理事長が口を揃えて述

べている不安は、①常識で考えて違和

感が有る。②脱法で違法建築となり、資

産価値も落ちる。③短期利用者等で不

者か居住者か見分けがつかなくなる。

④ゴミや騒音、自転車置き場など利用

者とのトラブルが増える。⑤安全面の

心配や住環境の悪化で退去者も増え

る等々である。⑥また、事前に規約改

正をしておけばよかったとの反省の弁

である。

自室を改造して高収益を上げようとし

た区分所有者とその代理人弁護士は、

専有部分で自分の建物をどのように

しようと自由だ、シェア・ハウスを禁止

する規約は無い、問題が発生してから

規約を改正するのは、特別関係者の

承諾なしの規約改正で無効だと主張

する。

転ばぬ先の杖、早く管理規約を改正

して、怪しい動きを事前に防止する

対策を講じることが求められます。

いくつかの管理組合に呼びかけたと

ころ、早急に規約改正を希望すると

の強い反応が、全ての理事長さん

から寄せられました。切実な問題です。

 

規約改正案を練るに当たり、1級

建築士でもあるマンション管理士の

仲間と、①専有部分の用途、②専

有部分の修善等、③専有部分の貸

与、④区分所有者の責務、等々いく

つかの観点で議論を重ね、簡潔にし

て要を得た、且つ、悪徳不動産業者

が「このマンションに手出しをするの

はよそう」と思えるような規約改正案

を作ろうと試行錯誤を重ねました。

会員諸氏のご意見等も頂いて、より

「要を得て且つ簡潔な」改正案を完

成させたいと願っています。

<記:理事 西地区ブロック長 綾 好文>

 


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